星座絵のトランプ2017年09月30日 12時25分00秒

昨日は気象趣味のカードゲームを眺めましたが、今日は「天文トランプ」です。

ウィーンに、ピアトニク(Piatnik)というトランプ・玩具メーカーがあります。
1824年創業の老舗で、今は海外にも支社を展開して手広くやっていますが、ここはオリジナル製品の他に、天文モチーフを含む過去のトランプの復刻も盛んに行なっています。


上の品は純粋な復刻品ではありませんが、「ZODIAC」と題して、古今東西の星座絵を集めた愉しいトランプ(2003年刊)。


カードの裏面デザインは、有名な『ベリー公のいとも豪華なる時禱書』(15世紀)に描かれた、「獣帯人間(Zodiacal Man)」を採り入れた美しい仕上がり。これは、人体各部を司る十二星座を示し、ひいてはマクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(すなわち人間)が照応関係にあるという、古くからの観念を表現しています。


カードの一部。ご覧のように、カードの絵柄は全て異なり、図の余白にはそれぞれ「ふたご座 17世紀 ヴェネチア」とか、「いて座 14世紀 フランス」とかキャプションが入っています。


上の写真はさそり座(上段)とかに座(下段)を取り出して並べたところ。マーク(スート)や数字と、絵柄との間に規則性はなくて、完全にランダムです(そもそも各星座の枚数もばらばらです)。


ときどき話題になる、「変なさそり座」の例。
サソリというのは、世界中どこにでもいる存在ではありませんから、実物を知らない人が伝聞で描くと、どうしても妙なことになります。星座絵のエキゾチシズムや幻想性は、そういう即物的な理由で生まれた部分も少なからずあるのでしょう。


かに座を見ると、14世紀(左)と16世紀(右)のいずれもトルコで制作された絵に、月が画き込まれています。何かイスラム世界では、蟹と月に深い結びつきがあるのかな…と思いましたが、これはイスラムに限らず、占星術の世界では、かに座と月の結びつきを古くから説くのだそうです。すなわち、黄道十二宮にはそれぞれ「支配星(Ruling Planet)」というのがあって、白羊宮(牡羊座)は火星、金牛宮(牡牛座)は金星、双児宮(双子座)は水星…ときて、巨蟹宮(蟹座)は月が支配星なのだとか。

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古い星座絵を眺めて、強いて落ち着こうとしたのですが、なかなか落ち着いた気分にはなれません。

マクロコスモスとミクロコスモスの照応、そして天地照応の説に従えば、ここ数日の天空には、必ずや何か異変が生じているはずですが、何かそんな象は出ているでしょうか?それとも、こんなコップの中の嵐ぐらいで、天に影響が出ることはないのでしょうか?