飛び出るクレーター2017年11月27日 21時14分50秒

ルナ・オービターにちなむ品として、印刷ではない「生写真」が手元にあるので、この機会に載せておきます。

「生写真」と言っても、昨日述べたような理由で、ルナ・オービターが撮影した本当の生写真は地球上に存在しないのですが、NASAが配布した紙焼き写真には、何となくルナ・オービターの体温や肉声に近いものが感じられます。


この2枚組は、ステレオ写真を狙って撮影されたもの。写真が顔を覗かせている枠の大きさは約13×11cmですから、そんなに大きなものではありません。撮影したのは、月面地図作りに活躍したルナ・オービター4号機、5号機ではなく、アポロの着陸候補地の調査を担当していた3号機。


額縁から出すと、こんな感じです。


欄外の「NASA-LRC」というのは、NASAの一部門である「ラングレー研究センター(Langley Research Center)」を指します。LRCは1965年、センター内に月着陸研究施設(Lunar Landing Research Facility )を開設し、月面着陸に備えて、実物大モジュールを使った模擬着陸に取り組んでいました(…と、知ったかぶりして書いていますが、もちろんネットで知ったことの受け売りです)。


写真裏側の印字情報。
この写真が月で撮影されたのは、1967年2月19日で、プレスリリースされたのは、1969年2月13日です。

アポロ11号の月着陸は1969年7月20日のことですから、それを目前にして、全米が熱狂ムードにある中、2年前の業績を振り返りつつ、報道陣に提供された1枚なのでしょう。


中央に写っているのは、直径は約3.8kmの「メスティングC」クレーター。(“MOSTING”と印字されていますが、正確には“MÖSTING”です。)

月の経緯表示は、地球から見た時、ちょうど月の真ん中にくる位置が原点で、メスティングCはその中心近く、南緯1.8度、西経8.1度の位置にあります(月のウサギのおへその辺りと言ったほうが早いかも)。月を眺めれば、嫌でも目に入る位置ですから、アピール性があったのかもしれません。

   ★

あれから半世紀―。
月探査の話題は、アポロ以後もたびたびニュースになりますけれど、かつての熱気に比べれば、随分おとなしいものです。人類史における「一大事件」も、人間の生来の飽きっぽさの前には顔色なし…といったところで、そこに人類の頼もしさと同時に限界を感じます。

コメント

_ S.U ― 2017年11月28日 07時45分55秒

>かつての熱気
 あの熱気は、歴史上のあの時しかなく、その時代を体験した者にしかわからないのでしょう。体験者すら、過去のことはあやふやな記憶を思い出し、どうにかこうにかそれを言葉にするしかそのすべはありません。稲垣足穂が一生をかけて少年時代の飛行機の記憶を綴り続けたこともやむを得ないことと思います。

 そして、21世紀の世になっても、もっともインパクトのある歴史教育は「語り部」であるようです。体験者が絶えてしまうと終わりです。歴史に学ぶといっても、学べるのはほんの一部だけだと感じます。

_ 玉青 ― 2017年11月29日 07時25分56秒

経験とはすべからく一回性のものですよね。そして、近頃の歴史修正主義者の跳梁跋扈を見るにつけ、歴史を語り伝えることの難しさを痛感します。それでも、今生きている人間同士、少なくとも一定レベルで相互理解は可能なわけですから(そう信じたいです)、過去の人との間でも、なにがしか経験は共有できると、これまたそう信じたいです。歴史とは、そんなか細い糸が絡み合って出来ているものかもしれませんね。

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