アンティーク天球儀の似姿を求める2018年03月24日 20時52分20秒

さて、エミルトン氏の部屋を後にして、自分自身の部屋に戻ります。
この「驚異の小部屋」で、最近少なからず存在感を発揮している(小部屋を圧迫している)のが、この天球儀です。


どうです、なかなか立派でしょう。


ニス塗りの加減も、古風な淡彩も、真に迫っています。


もちろん、これは本物のアンティークではなしに現代の複製品で、イギリスの作り手から買いました(彼はこういう品を一人でコツコツ作っているようでした)。印刷も精細で、これぐらい間近で見ても、破たんがありません。廉価なわりには、よくできています。


この天球儀で特徴的なのは、うしかい座がよく見るギリシャ風の半裸ではなくて、やけにあったかそうな北方衣装を着込んでいることです。その辺を手掛かりに調べてみると、大元はオランダのヨドクス・ホンディウス父子(父子ともに同名のJodocus Hondius。父は1563-1612、息子は1594/5-1629)が、1601年に制作した天球儀で、それをさらにイタリアのジュゼッペ・デ・ロッシ(Giuseppe de Rossi、生没年未詳。17世紀前半の人)がコピーした製品を複製したもののようです。

ロッシは商才にたけた人で、ホンディウスのオリジナルが、今やきわめて稀なのに対して、ロッシのコピー版は大量に売れたおかげで、アンティーク市場にも定期的に現れる…ということが、E. Dekker & P. van der Krogt の『Globes:From the Western World』(1993)に書かれていました。


天球儀本体はそういう次第として、ちょっと気になったのは、この架台です。一応それらしく時代付けしてありますが、どうもデザインが19世紀っぽくて、17世紀の天球儀には合わないような気がしました。でも、これもデッカーとクロフトの上掲書を見たら、下のような写真が載っていて、当時、既にこういう一本足(というか、台輪を1本のピラーで支える方式)の架台があったようです。

(ロッシが1610年代に売り出した地球儀・天球儀。中央のものが、ちょうど手元の品と同じ図像を貼り込んだ天球儀です)

   ★

博物館のガラス越しにホンモノを眺めて溜息をつくよりは、よくできたリプロを手元に置いてクルクル回す方がまさる…かどうかは、個人の価値観によるでしょう。ただ、いかにロッシの天球儀の現存数が多くても、17世紀の本物となれば、やっぱり百万円単位の世界になってしまうので、実際にクルクルしようと思えば、こうしてリプロに頼る他ありません。残念といえば残念ですが、ここぞ人間のイマジネーションの使いどころかもしれませんね。

コメント

_ みやこ ― 2018年03月27日 12時35分49秒

初めまして、みやこと申します。こちらのブログは一年ほど前から拝見しています。とても素敵な天球儀ですね。

_ 玉青 ― 2018年03月28日 07時15分11秒

はじめまして。お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
この天球儀、なかなか悪くない風情でしょう。ホンモノだったらもっといいのになあ…と思わなくもありませんが、ホンモノだったら、こんな風に気楽にクルクルできませんから、これはこれでいいのだ、と思うようにしています。(^J^)

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログのタイトルを平仮名で書くと、「○○○○こがん」です。○○○○に入る4文字は?

コメント:

トラックバック