星の少女、月の坊や2018年05月07日 06時29分45秒

連休も終わり、今日は雨。
さらに連想しりとりで話を続けます。

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「星の銀貨」のモチーフは、ドイツでは至極ポピュラーらしく、いろいろなところに顔を出します。そして、下の品を見ると「星の銀貨もいいけれど、星が星のまま降ってきたら、いっそう素敵じゃない?」…と考える人もいたのでしょう。

(高さは約22cm)

この可愛い板絵、元の商品ページではドイツ語と英語を併記して、「Holz-Wandfigur」、「German Wall Figure」と表現されていました。要は、子ども部屋を飾る「壁飾り」です。

童話の主人公をモチーフにした、こうした壁飾りがドイツで流行ったのは、1930~70年代のことだそうです。――いや、「流行った」と言えるのかどうか、売り手からのメッセージには、こんな風に書かれていました。

 「ドイツの古い壁飾りに対する私の愛情を、世界中の人が共有してくれたら、どんなに素晴らしいことでしょう。それはドイツ国内でさえ、ほとんど知られていません。私自身、2、3年前まで知らずにいました。でも、それはもっと知られて良い宝です。」

いずれにしても、コレクターズアイテムとなったのは、ごく最近でしょう。


その面貌は、全て手描きされていて、実に繊細な作り。
ひょっとしたら、絵心のある人が我が子のために手作りしたんじゃないか…とも思いましたが、裏面にはメーカーの焼き印があって、やっぱり商品として流通していたことが分かります。


これは1930年代のヘラークンスト(Hellerkunst)社の製品で、この手の品としては、古い時期に属するもののようです。

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この星の銀貨の少女は、月の坊やの壁飾りとセットで購入しました。

(高さは約21cm)

こちらはメルテンスクンスト(Mertenskunst)社製で、売り手によれば1950年代のものだそうです。


メーカーの違いなのか、時代差によるのか、こちらはステンシルを用いたらしい、均一な描写・彩色になっています(これはこれで可愛いです)。


裏面を見ると、少女の方はすでに痕跡だけになっていますが、坊やの方にはまだ引っ掛け金具が残っていて、これで子ども部屋の壁にぶら下げたようです。

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前回のミニゲームもそうですが、これらの品は、もちろん理科趣味ではないし、まっとうな天文趣味とも言えないと思います。でも、星の世界に対する人々の憧れが、そこに表現されているという意味で、「天文趣味史」の素材ではあると思って購入しました。

…というのは少なからず後付けで、やっぱり可愛いから買ったというのが、いちばんの理由でしょう。心がささくれ立つような出来事がやたらと多いので、その反動もあります。

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現実は常に過酷です。
でも、一方には美しいものを愛し、それを子どもに与えたいと願う心があります。どうか、そうした<良き心>が、すべての子供たちに行きわたる世界でありますように―。

人間が人間である以上、その悪心をなくすことはできないでしょうが、カウンターバランスは常に必要です。

コメント

_ S.U ― 2018年05月08日 07時56分14秒

 子どもの時に家の部屋(子ども部屋でなくても居間でも台所でもどこでも可)に何が掛けてあったかを思い出してみると、覚えているようで覚えておらず、とんでもないものを覚えていたりして楽しいです。
 (親もめったな物を掛けておくと、子どもが一生覚えていたりします)

_ 玉青 ― 2018年05月11日 07時09分35秒

ああ、何だかそういうのってありますね。
どうでもいいようなカレンダーとか、名も知れぬ人が揮毫した扁額とか、黒電話の脇にぶら下がってた電話番号簿とか、頭の中で昔の家を歩き回ると、ぼんやりとしたイメージが次々に浮かんできます。

_ S.U ― 2018年05月11日 20時51分39秒

子どもの時の家は、藁葺き屋でしたが、天井から、味噌汁に入れる麩の徳用袋みたいなのが常時ぶら下がっていたのを思い出しました。

 それから、昔は、土産物としてもらった、こけしとか木彫りの類がやたらとありましたね。私は、そんな古くさい物に興味はなく、「ペナント」を壁に貼っていました。

_ 玉青 ― 2018年05月13日 08時14分08秒

藁ぶき屋根で生い育った少年が、今や巨大な加速器を操って宇宙の究極の姿を覗きこんでいる――。改めて振り返ると、ものすごいことですね。その変遷のスピードに頭がぼんやりします。19世紀以降、世の中の変化が加速して、こういうのはそれぞれの世代が、それぞれに抱く感慨なのかもしれませんが、それにしても…と思います。と同時に、人間の「負の側面」があまりにも変化していないことにも驚きます(笑…えないですね)。

>こけしとか木彫りの類

ありました、ありました。鮭をくわえた熊やニポポ人形。それに安っぽい日本人形とか土鈴とか。
ペナントも懐かしいですねえ。あれは私は貼った記憶がないんですが、兄はべたべた貼っていました。そして友達の家に行っても、どこに行っても貼ってありました。あれはいったい何だったのか?壁に貼ってどういう意味があったのか?…と不思議に思いますが、当時の気分を思い起こすと、旅行は今でも楽しい経験には違いないでしょうが、昔は今よりも一層晴れがましく、特別な経験であり、旅というのは、ああいう「錦の御旗」でにぎにぎしく顕彰するだけの価値があったことは確かですね。

_ S.U ― 2018年05月13日 20時51分42秒

>あれはいったい何だったのか?
 お土産としてのペナントの発祥が急に気になってしらべてみたのですが、簡単にはわかりません。日本で、1950~60年代に発生したもののようですが、私がもの心つく前から存在するような古い物は見たことがないし、私より有意に年かさの人が集めているのも見たことないので、おおむね私の世代、1960年代以降の流行(おそらくバブル期くらいまで)だと思います。

 ペナントは軍旗のようなものなので、もとは幟(のぼり)、たとえば甲府に行けば風林火山、大阪に行けば千生り瓢箪のようなものから転化したのではないかと想像します。だとすると、土産を壁に貼るのは、武田信玄ないし羽柴秀吉が領地を広げていくような意味があったのかもしれません。かといって、先だって戦国武将の幟が流行った時代があったとも思えませんのでこれはあやしいです。あるいは、観光地ではなく、もとは、船舶、飛行機、特急列車などの識別標に起因し、乗船(乗車)記念として出た可能性も考えられます。これだと、そこに向かって旅をしたという記念乗車券のような意味になるのでしょう。

 こんなに有名なものの意味や起源がすぐに調べられないというのはちょっと驚きですが、ご存じの方いらっしゃらないでしょうか。お土産物に意味はないのかもしれませんが、起源はあるはずですよね。

_ 玉青 ― 2018年05月15日 07時14分23秒

英語いうところのペナント(pennant)には、日本式のお土産の意味は全くなくて、海事分野や海軍において、さらにそこから転じてスポーツの世界で、限定的に用いられているようですね。

ペナントの原義がまとっている、そういうマッチョな感じやスポーツマインドと、日本のいわゆるペナントを結びつけて考えるとき、私にはパッと思い浮かぶものがあります。それは「上高地」とかの山のペナントです。

登山ブームは戦前にもありましたが、戦後はそれがさらに大衆化して、1961年にはスキー客が100万人、登山客が240万人を記録したと報じられています、さらに、1966年には独身女性のレジャーの4位に「登山ハイキング」が入り、山のロマンを求めて、若い女性も高地に赴くことが常態化しました(出典はいずれも『昭和・平成家庭史年表1926-1995』)。

高山の頂上を極めた自分へのご褒美として、最初はスポーツ登山の世界で、次いでレジャー登山の世界でも、ペナントというものが人気を博し、やがてそれが日光や京都のペナントに転じたのではないか…と想像しました。

そこで、ペナントと登山にしぼって検索したら、実際にそういう説は確かにあって、大いに意を強くしました(2006年の知恵袋です)。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q139086223

以下、ベストアンサーをそのままコピペします。
「観光ペナントが広まったのは50年代後半だといわれています。
当時、各大学に設立された山岳部が登頂の証しとして山頂にペナントを立てました。
それを目にした山小屋の関係者が登山の記念品としてペナントを作り、お土産として全国に広まっていったとの説が有力です
観光ペナントは少年少女を中心にまたたく間に人気を博し、土産物の定番になりましたが80年代後半になると“ダサいお土産”などという汚名を着せられて衰退の一途をたどり、いまや絶滅寸前です。」

_ S.U ― 2018年05月15日 07時48分16秒

>山小屋の関係者が登山の記念品

 大学スポーツの登山隊なら、乗り物は使いませんが、「軍旗」、「旅行ツアー」、「観光」のすべての条件に絡みますね。また、アメリカでは大学運動部のペナントが日本で流行する以前からあってもおかしくないと思います(プロ野球の優勝旗のペナントもそういう起源があるのではないでしょうか)。それをお土産品にしたのは、山小屋関係者の瞠目すべきアイデアだったと思います。ご推理ご解明ありがとうございました。

 私から見ると、他の種類のお土産、木刀、盾、教訓額、観光名所のれんなどと比べると、特別”ダサい”ことはなくかえってしゃれているほうだと思うんですがね。手ぬぐいにプリントすれば100円以下でできるし、西陣織やゴブラン織にして金銀宝石をちりばめれば高級なほうも天井知らずです。

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