『ペーター坊や月への旅』(1) ― 2018年05月09日 07時05分07秒
さらに連想しりとりは続きます。
前回紹介したドイツの愛らしい壁飾りは、童話のキャラクターがモチーフになっていると書きました。例えば、「星の少女」ならば、グリム童話の『星の銀貨』が元ネタです。
では、「月の坊や」はどうかといえば、こちらはゲルト・フォン・バッセヴィッツ(Gerdt von Bassewitz、1878-1923)が著した創作童話、『ペーター坊や月への旅(Peterchens Mondfahrt)』というお話が元になっています。最初は芝居として上演され(1912年初演)、本として出版されたのは1915年のことです。
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日本には宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』という名作があって、題名だけなら誰でも知っているし、あのリリシズムは我が国の天文趣味の在り方にも、少なからず影響を及ぼしているように感じます。
では他の国ではどうか? あんな風に、不思議な星の世界へと人々をいざない、国民の共有財産といえるまでに広く親しまれている作品があるのだろうか?
…というのが、私の長年の疑問でしたが、少なくともドイツにおける『ペーター坊や月への旅』は、そう呼ばれる資格が十分あります。
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この作品で星の世界を旅するのは、ペーターとアンネリの兄妹です。
この本はたいそう売れたので、英訳本も出ています。昔は原題そのまま『Little Peter's Journey to the Moon』となっていましたが、お兄ちゃんだけ取り上げるのは差別的と思われたのか、最近出た版では、『Peter and Anneli's Journey to the Moon』と改題されています。
(Marianne H. Luedeking 訳、Bell Pond Books 刊、2007年。挿絵はHans Baluschek による原作初版のまま)
以下、この英訳本に基づいて、そのファンタジックな内容を見ていきます。
(この項つづく)
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