真の天文アンティークとは2018年12月30日 15時25分38秒

ロンドンとニューヨークに堂々たる店を構えているDaniel Crouch Rare Books(以下、クラウチ古書店)というお店があります(注)。ここは金満的なファインアートも扱っていますが、天文関係の品にことのほか力を入れていて、その取扱い品目も古書に限らず、天球儀をはじめとする天文関係のいろいろな優品に及んでいます。

オンラインの商品案内だと、「Instruments」というカテゴリーにそれは出てきます。


さらに「Show SOLD items」というボックスにチェックを入れると、過去の取り扱い品目も見られるし、別のページに飛ぶと、過去のカタログ(例えばこちら)をじっくり眺めることもできます。

うーむ、見れば見るほどすごいです。
こういうのを真の天文アンティークと呼ぶのではありますまいか。そして、すごいと言えばお値段の方もすごくて、数千ポンドはおろか数万ポンドという値札まで平然とぶら下がっています。きっとこのお店は、100万円単位のお金を気楽にポンポン出せる富裕層や、資金力のある大学や博物館を主な顧客にしているのでしょう。

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私も自分の手元にある品を「天文アンティーク」と呼ぶことがあります。
でも言葉は同じでも、その意味するところはまるで違います。その主体は、大量に刷られた一般向けの古書であったり、星座カードであったり、星にちなんだ玩具とか雑物類なんかですから、本当は「天文アンティーク」というよりも、「天文ブロカント」と呼んだ方がぴったりくる感じです。

まあ、クラウチ古書店のような世界と無縁であることは、返す返す残念ですが、今さら貧を嘆いても仕方ないし、逆にいうとクラウチ古書店のカスタマーの視界には、天文ブロカントの愛らしい小世界は見えてないでしょうから、そこはお互い様です。(それに、優品であれ、些細な品であれ、そこに込められた「星ごころ」に本来優劣はないし、我々はモノを通して「星ごころ」をこそ賞美しているのだ…というのが、私の負け惜しみというか、公式見解です。)

とはいえ、星ごころさえあれば、モノは不要だというわけでは決してありません。
モノにはモノの価値がやっぱりあります。そうでなければアンティークにしろ、ブロカントにしろ、そもそもモノを集める意味がありません。そして、時には眼福を得ることや、見て学ぶことも大切ですから、ブロカント派の人も、クラウチ古書店の商品ラインナップをしばし呆然と眺めたり、せめて複製や復刻なりとも手にして、優品の雰囲気を味わうことが大切になってくるわけです。

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というわけで、自分のやっていることを自己肯定しつつ、やっぱりスゴイものはスゴイと、素直にビックリしています。対象を天文アンティークに限っても、世界は実に広いです。

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(注)同店のことは、以前もロシアで最初に出た美しい星図集について触れたときにチラッと書きました。

金の星図