魅惑のアーミラリー・スフィア(後編)2019年01月05日 10時54分02秒

ノーマン・グリーン氏が制作した「真面目な」アーミラリー。
でも、そこにはちょっと真面目さとは異質の要素が混じり込んでいます。と言って、それはグリーン氏の罪ではありません。実はこのアーミラリー、グリーン氏が産み落としたオリジナルの姿から少しく改変されていて、オリジナルはこんな姿をしていました。

(購入時の商品写真)

改変したのは他ならぬ私です。オリジナルの黒大理石の台座が、どうも天文用具っぽくないように感じたのと、床に直置きすると丈が低すぎるので、思い切って台座部分を取り換えることにしました。

脚部は、以前登場したコペルニカン・アーミラリーの流用です。勢いに任せて購入したものの、その後ちょっと持て余し気味だったので、この機会に思い切って後進に道を譲ってもらいました。


問題は脚部と本体をつなぐ接合部分。ここは双方の支柱を、尋常ならざる努力の末に継いであります。


パーツの接合部はいずれもネジ式なので、最初はどちらか一方の支柱をそのまま生かして、異径ネジをつなぐ変換アダプターを噛ませれば楽勝と思いました。でも、どうもネジ山の規格が特殊らしくて、アメリカンサイズも含め、既存のサンプル中に適合するものが見つからず、この案は廃案に。

途方に暮れましたけれど、ここまで来たら後には退けません。手元にある小っちゃなヤスリと金ノコだけで、果敢にこの難仕事に挑みましたが、その辛苦たるや。火縄銃の国産化に挑んだ戦国時代の鉄砲鍛冶もかくやと思わしむるものでした。

…と、多少話を膨らませていますが、何せ接続部の最要所を切削する荒業なので、作業をいったん始めたら最後、二度と両者を元の姿に戻すことはできません。その緊張感に耐え、すべてが首尾よく行ったときは本当に嬉しかったです。

私の死後、このアーミラリーを手された方は、過去にそんな愚かしい苦労をした人間がいたことを思い起こして、できれば大切にしてほしいと祈るばかりです。