「天文学と印刷」展…モノの力ということ2019年01月09日 07時22分29秒

ブログを休止している間も、世間にはいろいろなことが生起し、永田町や霞が関方面でも、噴飯ものの事態が日々出来(しゅったい)していますが、今しばらくは政談を控え、清談に終始することにします。

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そんな出来事のうちでも特筆すべきは、昨年10月に始まり、もうじき閉幕する「天文学と印刷」展です(会期は1月20日まで)。

(同展図録。左はスリップケース、右が本体。この図録の仕上がりに感動した人が多かったようです)

凸版印刷(株)が設立した、文京区の「印刷博物館」で開かれた同展は、天文学をはじめ、ルネサンス科学の精華たる初期活版印刷の名品をずらりと並べた、たいそう見ごたえのある展覧会で…と言っても、私は見に行くことができなかったので、これはネット上の紹介と、送ってもらった図録を眺めての想像です。(東京行きをいろいろ算段したのですが、タイミングが合いませんでした。)

(同・部分)

ザックリ言うと、この展覧会は「活版印刷術の発明」と、「コペルニクス革命」(に代表される天文学の急速な進歩)を並置し、両者が1500年前後にきびすを接して生じたのは、決して偶然ではなく、「メディアの革命」が「科学の革命」を促したという意味で、前者は後者の母であった…というテーゼをもとに、企画されたもののようです。

まあ、これ自体はごく穏当な科学史理解でしょうが、同展はそれを説くのに、当時の学者や技術者を結ぶ知のネットワークを丹念に追いつつ、それを形あるモノ(=書籍)として提示したことで、有無を言わさぬ迫力を帯びたと思います。やっぱり形あるモノは強いです。

(同。この後に続く、出版都市ニュルンベルクの人物相関図は圧巻)

残念ながら脳内見学で終わったとはいえ、古雅な展示品の数々に(脳内で)触れ、そしてモノの力について改めて考えるきっかけになったことで、私にとって、これは実に面白くてためになる」展覧会でした。

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豪華な展覧会とは比ぶべくもありませんが、私も手元にあるささやかなモノたちの力を借りて、さらに天文古玩趣味の妙を味わっていきたいと思います。