元素のクロスワードの150年2019年01月11日 19時31分38秒

この前新聞を見ていたら、今年は「国際周期表年」だという記事が載っていました。ドミトリ・メンデレーエフ(1834~1907)が周期表を発表したのが1869年で、今年は「周期表誕生150周年」に当たるのを記念して、ユネスコが決めたのだそうです。

ここで、手っ取り早くウィキペディアの周期表の説明を見てみます。

一読して、これを理解できる人は幸せです。
残念ながら、私は三読しても十分に理解できませんでした。

これはいったいどうしたわけか? 文系出身であるにしても、私だって高校で「化学Ⅰ」を習ったし、理科趣味を標榜するぐらいには、科学に親しんでいるのです。それなのに、生まれてから150年も経つ周期表のことが、さっぱり分からないというのは、人類の知の進化に、いささか疑念を抱かせる事態ではありますまいか?

(ウィキペディア掲載の周期表)

…と、手前勝手な愚痴が出かかりましたが、そんなことはありません。

こんな愚昧な私の目にも、周期表は十分に美しく映ります。何せ、このシンプルな表の中に、物質のふるまいの法則性――いわば化学のエッセンス――が凝縮されているのですから。これは「E=mc2」なんかと並んで、少数のことばで宇宙の成り立ちを表現することに成功した、人類にとって記念碑的業績であり、やっぱり人類の知の進化は偉大です。

そして、周期表の面白さは、それがアインシュタインのような異能者の卓越した才ではなく、どちらかといえば、日曜クロスワードパズル的な頓智の才によって導かれたということです(こう言ったからといって、メンデレーエフの才覚を貶めることにはならないでしょう)。「ひょっとしてオレにも…」と、人を前向きな気持ちにさせるところが、周期表の良さでもあります。

   ★


上は1969年、周期表の誕生100周年を記念して、メンデレーエフの故国ロシア(旧ソ連)で発行された初日カバー(…というのは、記念切手の発行を祝して、記念切手と記念封筒、それに発行初日の記念消印をセットにした郵趣アイテムです)。


パズルを解こうと呻吟するメンデレーエフ。


こちらはメンデレーエフによるオリジナルの周期表手稿を取り入れた渋いデザイン。

   ★

それにしても150年というのは、長いような短いような。
上の切手が出た当時、私は幼いながらも、世の中のことを記憶に残せる年齢になっていました。あれからあっという間に50年が経ったのですね。実に感無量です。

この先、さらに200周年を迎えることも、可能性として無くもないですが、まあ元素に還って、天地を自在に往還している可能性の方が高いでしょう。これ以上、個人的な知の進化も望めませんから(むしろ退化ですね)、それもまた良し、です。