続・インド占星術の世界2019年01月30日 20時17分34秒



昨日も載せたインドの占星スクロールは、1844年のものだと売り手は述べていました。
文字がまったく読めないので、この辺は額面通り受け取るしかありませんが、でも紙質を見る限り、相応に古いモノでしょう。

これが時代を下ると、下のようにツルツルの現代的な製紙になってきます。

(全長約5メートルの大作。ちなみに1844年のスクロールの方は約2メートル)

これまた年代不詳ですが、たぶん20世紀半ばぐらいでしょう。でも、書かれているのは、やっぱり昔ながらのホロスコープ図で、このスクロールは、とりわけその図像表現がグラフィカルで、むしろサイエンティフィックな感じすらしたので、面白いと思って購入しました。
 
 

どうです、なんだか分からないけれどもスゴイでしょう。

   ★

まあ、これだけ見ている分には、「ふーん、面白いね」で終わってしまい、特にインド占星術の体温を感じるには至りません。でも、次の品を見たとき、私は一瞬でその体温を ―― 占星術師の節くれだった指や、長いひげを蓄えた哲人めいた風貌を、想起しました。

 (「Old Antique Original Iron Astrological Horoscope Geometrical Tool」と称して、北インドのジョードプルのアンティーク業者が売りに出していたもの)

上のような幾何学的なホロスコープを描くには、当然それ用の道具が要るわけで、私はこれを見て再び「ああ、そういうことだったのか…」と思ったのでした。
 

鉄製の粗削りなコンパスと…


直線を引くための烏口(からすぐち)。

この品は戦前にさかのぼるものだそうですが、おそらくもっと遠い昔の占星術師たちが手にしていたのも、これと大差なかったでしょう。あるいは貴人に仕えた占星術師なら、もっと贅沢な道具を使ったのかもしれませんが、民間で門戸を張った術師は、やっぱりこういう無骨な道具で、せっせと円を描いたり、線を引いたりしてたんじゃないでしょうか。


   ★

前回も引用した、矢野氏の『占星術師のインド』には、「500年前から代々続く占星術師の家」とか、「16世紀以来、さる藩王の宮廷占星術師を務めた一家の末裔」とか、歴史を誇る占星術師がいろいろ登場します。あるいは、これはインドではなくネパールですが、古い四分儀や暦書を家に持ち伝え、父と子は常にインドの古典語たるサンスクリット語で会話する一家とか。
 
やっぱり、インドでは占星術が文字通り「生きて」いるのです。
そして、それは「神秘の国・インド」として矮小化されるべき事柄ではなくて、古代から連綿と続く文化の豊かさの証であり、その鮮烈な具体例なのだと思います。

…そんなことを考えながら、この製図道具を手に取り、その重みを感じていると、だんだん心が膨らんでくるのを感じます。