南の空を想う ― 2019年02月27日 09時56分47秒
時代が平成に替わった1989年、沖縄の地元出版社である「むぎ社」から、沖縄用の星座早見盤が発行されています。
(狩野哲郎(著)『沖縄県版学習星座早見セット』)
これは、私が持っている星座早見盤の中でも、その夜空の範域が非常にローカルで、ピンポイントであるという点で、かなり特徴的なものです。著者の狩野氏は、当時、本島北部にある国頭(くにがみ)村立辺士名(へんとな)小学校の先生をされていた方だそうで、その辺もローカルな香りに満ちています。
那覇の緯度は北緯26度。
東京の北緯35度から遠いのはもちろん、鹿児島の北緯31度と比べても、さらに5度南に寄った土地ですから、本土の早見盤はそのままでは通用しがたく、こうした教育目的の早見盤が必要となるわけです。(ちなみに、この本は「定価800円」となっていますが、奥付には「学納価500円」とあって、学校で共同購入することを念頭に置いた出版物のようでもあります。)
肝心の早見盤は、この本文12ページの薄い冊子体の本の裏表紙に付属しています。
使い方は当然ふつうの早見盤と同じですが、違うのはそこを彩る星空です。
(10月1日午前0時、11月15日午後9時頃の空)
南国沖縄の海辺に立って、さらに南に目をやれば、北辺に住むヨーロッパ人の視界には入らなかった、「つる座」や「ほうおう座」が悠然と羽ばたいているのが見えます(いずれも星座として設定されたのは16世紀末)。その脇には、海と空を結ぶようにエリダヌスが悠然と流れ、さらにその先端には、アラビア語で「河の果て」を意味するアケルナルがぼうっと輝いています。
そして、7月の宵ともなれば、北十字(はくちょう座)から南十字までを一望に収め、銀河鉄道の旅を追体験することができるのです。
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アームチェアー・アストロノマーよろしく安楽椅子に腰かけて、こんな風に想像するのは、実に甘美なひとときです。しかし、その美しい空の下で現に行われていることは、甘美さとはおよそ程遠い醜悪なものです。
訳知り顔に日米と東アジアの政治力学を振り回す人もいますが、仄聞するところ、辺野古の工事に関しては、政治力学の問題だけでなしに、大きな利権が渦巻き、例によってその渦中には安倍氏とその取り巻きが蟠踞しているんだ…などと聞くと、人間の業の深さを嘆くほかありません。
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こうしている間にも、空の上でジョバンニは「たったひとりのほんとうの神さま」について思いを凝らし、「ほんとうのさいわいは一体何だろう」と親友に問いかけています。もちろん、ここに唯一絶対の正解はないでしょう。問われたカムパネルラにしても、「僕わからない。」とぼんやり答えるのみです。
そして、分からないことにかけては、私もカムパネルラと同様ですが、でも、こんな地上の醜状は、「ほんとうの神さま」とも、「ほんとうのさいわい」とも、はなはだ遠いものであることだけは確かに分かります。
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