貴婦人との別れ ― 2019年04月16日 07時10分11秒
「ドナティ彗星、パリからの眺め、1858年10月4日」
アメデ・ギユマンの『Le Ciel』(第5版、1877)の巻頭を飾る、美しい口絵です。
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1858年10月に接近した、巨大なドナティ彗星(C/1858 L1)。
その公転周期は千数百年に及び、次の回帰は西暦3000年代と推定されています(正確な値は未確定)。
優美な地上の貴婦人と、壮麗な天上の貴婦人の邂逅は、結局1858年に、ただ一度きりのものでした。――いや、ノートルダムは今後修復されるでしょうし、2回目、3回目があるのかもしれません。でも、その姿は昔日の彼女とは違っているでしょう。それは彗星の側も同じです。
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出会いはすべて一期一会だ…などと、こんな際にしたり顔で教訓めいたことを言うのは、かえって不謹慎かもしれませんが、焼け落ちる前の姿に接する機会を永遠に失った私としては、やっぱり一枚の絵を前に、いろいろな思いにとらわれます。
(昨日の話の続きは次回に)
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