石は物語を聴く ― 2019年06月02日 07時45分18秒
人が石の物語に耳を澄ます一方、石の方も人の物語に耳を澄ませています。
そして石はそっと聞き取った物語を、再び人に語って聞かせてくれるのです。
これは比喩的な意味ではありません。実際、そうやって人と石が盛んにやりとりをしていた時期があります。
鉱石ラジオで用いられた、検波用鉱石各種(1920年代、アメリカ)。
空中をゆく電波は、アンテナによって微弱な高周波電流となりますが、それを物語として聞き取るには、さらに検波器を通してやる必要があります(それによって、高周波電流の中に埋もれている、音声に対応した低周波成分を取り出すのです)。
缶のデザインがなかなかいいですね。
この3~4cmの小さなブリキ缶の中に、さらに小さな鉱石が入っていて、当時の人はその表面を熱心にさぐり針で探りながら、検波に励んでいたわけです。
これは紙箱入り。中の鉱石は本当に小さくて、小指の爪の半分ほどです。
こちらのマイティ・アトム印のワイヤレスクリスタルは、ピンセット付き。
扱いに便利なのと、手の脂がつくのを嫌ったのでしょう。
商用販売された検波用鉱石の正体は、たいてい方鉛鉱で、上のもそうですが、小林健二氏の『ぼくらの鉱石ラジオ』(筑摩書房)によれば、検波に使える(整流作用を持つ)鉱物はほかにもいろいろあって、黄鉄鉱、紅亜鉛鉱、斑銅鉱、黄銅鉱、輝水鉛鉱、磁硫鉄鉱…etc.さまざまな名前が挙がっています。
どうやらこの惑星では、いろんな鉱物が、あちこちで聞き耳を立てているみたいです。中には宇宙からの声に気付いた石もあるでしょう。
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