月清らかに花は降るべし2019年12月22日 17時39分51秒

桜の話題に関連して、桜の本をいろいろ読んでいました。
その過程で桜の図譜を何冊か手にして、この辺のことは博物趣味的に書くべきことが少なくありません。


こう書くと、何となく心に余裕があるようでもありますが、世間の動きは急であり、何といっても師走ですから、身辺はなかなか落ち着きません。しかも、晩秋に自宅のリフォームが終わったと思ったら、今度は下水が壊れて汚水があふれ、それが直ったと思ったら、白蟻が出現し、床下に潜って調べたら、さらにコンクリートの基礎も大規模な補修が必要だ…という具合で、実際には心も財布もてんで余裕がないのです。

でも、最近、素敵な方たちから、企画展のお知らせをはじめ素敵な便りを頂戴し、余裕が無いなりに心は豊かです。

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今日、ふと思い立って記事を書こうと思ったのは、本来の記事を離れて、「これは…」と思うことがあったからです。例によって政治向きのことです。

朝日新聞の各編集委員が回り持ちで書く「日曜に想う」欄。
今日の筆者は曽我豪氏でした。曽我氏といえば、しょっちゅう安倍首相と会食していることで知られますが、この人の担当回はいつも興味深く読んでいます。


今日のタイトルは「深まる教育格差 40年放置の罪」というもので、これまた非常に興味深かったです。

そこで取り上げられているのは、例の「身の丈」発言と、その後に続く英語民間試験の導入延期と、国語・数学の記述試験の見送りです。

曽我氏によれば、これは昨日今日の問題ではなく、実に40年前からこういう「教育格差」は放置されてきたと言います。「40年前の1979年に共通1次試験が導入されたときもそうだった」…と、曽我氏は書きます。そこで何が問題になったかといえば、共通1次の結果生じる「足切り」であり、全国の大学が偏差値で序列化される「輪切り」現象でした。そして、

 「私、早大を受けようかしら」
 「あなた、やめておきなさいよ」
 「分相応にしておいたら?」
 「そうよ、うちの学校は三流校なのだから…」

といった、往時の高校生の会話を引用しつつ、その「分相応」という言葉と、萩生田大臣の「身の丈」発言を並置して、それを「教育格差」という言葉で曽我氏はくくって見せるのです。

しかし、一億総中流と呼ばれ、実態としても、人々の意識の上でも、格差縮小が進んだ時代における「偏差値偏重」の弊と、経済格差が教育格差を拡大再生産している現在の恐るべき状況を、同列に論じることは到底できないでしょう。この両者は言うまでもなく全然別物です。それを敢えて同じもののように語るのは、明らかに言葉の詐術であり、曽我氏は故意に目くらましをやっているのだ…と、私は思います。

その辺を意識してのことか、曽我氏は巧妙にアリバイ的言辞をちりばめて見せます、
曰く、「むろん、学校現場を覆う重苦しさは40年前の比ではなかろう。現代の輪切りは偏差値の前に家庭の所得という本人の努力とは無関係の数字で決まりかねない。」
そう、その通りです。でも、曽我氏はすぐに「ただ」…と、言葉を続けます。

「ただ、分相応や身の丈といった言葉が当たり前のように横行する状況に手をこまねき、深刻な教育格差がはびこるまで悪化させた文教行政の放置の罪を思う。」

家庭の経済格差が問題である…と、言ったそばから、曽我氏はそのことと全く無縁な文教行政を悪玉として指弾し、しかも、そこで名指されているのは、今の特異な政権下における文教行政ではなく、40年来のそれだと言うのです。

結局のところ、曽我氏の論法は、現政権に特異的な問題である教育改革の粗雑さや醜怪さを、「昔からの宿痾」みたいに言いつくろうことで、現政権を免罪しようとしているのです。これは明らかに為にする論で、実に悪質だと思います。

   ★

曽我氏の文章は、大抵いつもこの調子です。
批判しているように見せかけて、実際には擁護する。

もちろん、別に擁護したってかまわないのです。主義主張は様々ですから。でも、そうならそうで、堂々と擁護しなければだめです。私にとっての曽我氏の印象は、「ソフィスト的な巧言令色の徒」であり、誠の少ない人だと感じます。

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「いや疑ひは人間にあり、天に偽りなきものを」

――謡曲「羽衣」の主人公である天女のセリフです。
春霞たなびく三保の松原で、天の羽衣をまとった天女は美しい舞を舞い終えると、ふわりと虚空に浮かび、徐々に高度を上げて、遥かなる天上世界へと帰っていきます。

どうでしょう、来年の花の盛りには、塵埃多き下界を忘れて、澄み切った星の光を余念なく楽しめる世の中になっているでしょうか? 天文古玩本来の記事を、のんびり書き継げる世界が、早く復活しますように。

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