星時計(1)2020年01月03日 19時58分56秒

先日、「子の星(北極星)」のことを話題にしました。
不動の北極星を中心に、24時間でぐるっと空を一周する星たち―。

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まあ、大ざっぱに言えばそうなのですが、厳密に言うとちょっと違います。
北極星は決して不動ではなく、ほんのちょっと動いているし、星たちもきっちり24時間周期で回っているわけではありません。

真夜中に頭上にあった星が、次の日も、次の日も、そのまた次の日も、ずーっと真夜中に頭上に来るのだったら、その星に限らず、真夜中に見える星景色は、毎日そっくり同じはずです。そこには、星座の季節変化の生じる余地がありません。
 
実際には、真夜中に頭上に輝いている星は、23時間56分で再び頭上に戻ります。
ちょっきり24時間後の位置で比べると、次の日には4分だけ先に(西寄りに)進んだ場所に位置することになります。

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これはもちろん、地球が公転しているからです。
地球は自転しながら、同時に同じ向きに公転もしているので、両者の「合成回転速度」は、自転速度(や公転速度)単独よりも、ちょっぴり早くなります(エスカレーターを駆け上がっている人を想像してください)。

こうして、1日に4分、1か月で120分、半年経つ頃には12時間もずれて、かつて頭上にあった星は、今度は地面の真下となり、空を彩る星座はすっかり入れ替わってしまいます。そして1年たつと、ちょうど24時間ずれて、再び懐かしい星が頭上に輝く…というわけです。

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以上のことは小中学校の理科のおさらいです。

上の説明は、太陽や月と同じく、星が「東から昇って西に沈む」イメージで語っています。その方が何となく分かりやすいからですが、これは南向きに空を見上げたとき限定の話です。

北極星周辺の「こぐま座」や「カシオペヤ座」なんかは、そもそも地面に沈まないし、方角で言うと西から東に動いて見える時もあって、上の説明は一寸そぐなわいところがあります。

でも、「星が天を一周する時間は23時間56分」で、「1日4分ずつ天球上の位置がずれていく」という事実は、北の星にも完全に当てはまります。

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これを利用したのが、こぐま座やカシオペヤ座、あるいは北斗七星の位置から時刻を知るための「星時計」です。古くは「ノクタラーベ」「ノクターナル」と呼ばれました。

ある日、ある時刻における、星座の位置は既知ですから、逆に日付と星座の位置が分かれば、そのときの時刻を知ることができます。(原理的には南の星座でもいいのですが、北の星座は、北極星との位置関係から、天球上の位置を見定めやすいので、いっそう便利です)。


上はニューヨークのヘイデン・プラネタリウムが1950年に発行した星時計(ずばり「スター・クロック」とネーミングされています)。

(全体は3層構造)

使い方は至極簡単。まず最外周の日付目盛りに、黄色い回転盤の「12」の位置を合わせます(これは時刻目盛りの基準となる「深夜12時」を表します)。

(1月3日に盤を合わせたところ)

この状態で、東西の水平・南北の垂直を保ちながら、中心孔に北極星を入れ、次に紺色の回転盤を回して、実際の星座の位置に合わせればOK。この星時計では、北斗のマスの先端の2星(ドゥーベとメラク)を結ぶ線が時針になっており、その指し示す数字が現在の時刻です(目盛りは午後6時から午前6時まで、反時計回りに振られています)。

(画像は1月3日、午後8時半の星座位置。北極星からこぐま座がぶら下がり、カシオペヤ座は北極星の左上、北斗は右下に位置します。)

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よくよく考えると、この星時計は、普通の星座早見の北極星付近を拡大しただけのもので、普通の星座早見盤を星時計に使うこともできるわけですが、関係部分を拡大した分、こちらの方が使い勝手が良いのが味噌です。

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ボーイスカウトのキャンプとかを除けば、これを実用にする現代人はいないでしょう。でも、持ち運びのできる時計がなかった頃は、昼間の日時計と併せて、なかなか重宝されたものだそうです。

(この項つづく)