コロナの今(その2) ― 2020年03月14日 11時23分54秒
今の日本の検査体制は、おおむね以下のようになっています。
(出典:東京都福祉保健局のサイトより )
一般の人が、「熱と咳が続くなあ…コロナじゃあるまいか?」と心配になったとき、どうすれば検査を受けられるのか。東京都の例で言うと、検査に至るまでには、以下の3つの「関門」があります。
①新型コロナコールセンターに電話
②新型コロナ受診相談窓口(保健所)に電話
③新型コロナ外来を受診
①~③のどこかではねられると、検査すら受けることができません。
で、件の心配した人はどうするかといえば、とりあえず普通の風邪か、インフルエンザか、それとも他の感染症か、それを診てもらうために、一般の医療機関を受診することになります。潜在的にはコロナの可能性があるにも関わらず…です。
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3月11日付けの厚労省通知、「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について」(LINK)を読むと、そうした患者さんを受け入れる、一般の医療機関の「心構え」が説かれています(太字は引用者)。
「基本的に誰もがこの新型コロナウイルスを保有している可能性があることを考慮して、全ての患者の診療において、標準予防策であるサージカルマスクの着用と手指衛生の励行を徹底すること。」
「原則として、診察した患者が新型コロナウイルス感染症患者であることが後に判明した場合であっても、〔上記〕に基づいた感染予防策を適切に講じていれば、濃厚接触者には該当しないこと。」
要するに、新型コロナの患者が来るかもしれんが、医療関係者はマスクと手洗いだけしてればよろしい、仮に後からコロナと判明しても、それさえしていれば、濃厚接触には当たらない…というのですが、こんなにユルユルで本当に大丈夫かなあと思います。
そして、「患者が発熱や上気道症状を有しているということのみを理由に、当該患者の診療を拒否することは、応招義務を定めた医師法〔…〕及び歯科医師法〔…〕における診療を拒否する「正当な事由」に該当しない」から、しっかり診ないとアカンぞ…と命じられて、お医者さんも大変だなあと思うし、待合室で相席になる他の患者さんのことも、大いに心配です。
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ところで、3月6日に、新型コロナの検査に保険が適用されることになった…というニュースがありました。そして、お医者さんが検査の必要を認めれば、保健所を通さずに検査ができるようになった…とも聞きました。
これだけだと、かかりつけのお医者さんに行って、「先生、心配だから検査してくださいよ」と言えば、すぐにも検査が受けられるような感じですが、実際は全然違います。
国の通知(LINK)によれば、保健所を通さずに検査ができるのは、「当面の間…帰国者・接触者外来及び帰国者・接触者外来と同様の機能を有する医療機関として都道府県が認めた医療機関」だけです。
そして、それ以外の一般の医療機関に、新型コロナが疑われる人が来た場合は、「原則として…帰国者・接触者相談センターへ一度電話で連絡の上、同外来を受診していただきたいが、帰国者・接触者外来に患者が殺到することのないよう留意しつつ、直接、帰国者・接触者外来を紹介することとしても差し支えない」と述べています。
結局、基本的な流れは従前と変わりがなく、帰国者・接触者外来等のお医者さんが、「よし検査だ!」と言わない限り、検査を受けられない仕組みはそのままです。
(注)ここで言葉を整理しておくと、「帰国者・接触者相談センター」というのは、そういう独立したセンターがあるわけではなくて、要するに保健所のことです。現在、各地の保健所が「相談センター」という看板を急きょ掲げて、相談に応じています。また、「帰国者・接触者外来」というのは、各都道府県が指定した、新型コロナに対応する医療機関のことで、どこがそうかは原則非公開で、秘密にされています(「直接紹介してもいい」というのですから、各医療機関には通知が行ってるのでしょう)。
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以下は、2月26日に「コロナ雑感」として書いたことの一部。
「そもそも論で言うと、現在は検査機関イコール医療機関になっているから、医療機関に人が押し寄せる結果を招いているのであって、両者を分離しても支障はないし、むしろ分離した方が効率的なことは多々あると思います。そこで適切な(必要なら多段階の)スクリーニングを実施して、必要な人だけ医療機関につなぐ体制が望ましいことは言うまでもなく、そのことに反対する人は少ないでしょう。(ここでいう「検査機関」とは、衛研のような検体処理機関ではなくて、被検者から検体を採取する機関という意味です。)」
「独立した検査機関というと、何か巨大な箱モノを想像されるかもしれませんが、要は人の動きと空気の流れを制御し、清潔区域と不潔区域を明確にするだけのことですから、別にささやかな建物でも、既存の施設でも構わないのです。そこは一般の病院のように、いろいろな目的で、人がランダムに移動する空間ではありませんから、はるかに単純な構造で済むはずです(健診や人間ドックの場面を想像してください)。」
「独立した検査機関というと、何か巨大な箱モノを想像されるかもしれませんが、要は人の動きと空気の流れを制御し、清潔区域と不潔区域を明確にするだけのことですから、別にささやかな建物でも、既存の施設でも構わないのです。そこは一般の病院のように、いろいろな目的で、人がランダムに移動する空間ではありませんから、はるかに単純な構造で済むはずです(健診や人間ドックの場面を想像してください)。」
この記事を書いた後で、韓国の、さらにドイツの、「ドライブスルー式検査場」のニュースに接して、わが意を得たりと思わず膝を叩きました。
しかし、日本ではそうした方向に舵を切る動きは、今に至るまで全くありません。
依然として、検査は病院で行うものであり、潜在的感染者が医療機関に集中する構造的問題には、まったく手が付けられていません。
(その3につづく)
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