青空のかけら2020年07月05日 16時46分40秒

空から降り注ぐ雨。
それを集めて流れる川。

その自然の営みが、ある一点を超えると、大地の形状を変えるほどの巨大な力を発揮します。それもまた自然の営みだと言えば、そうかもしれませんが、でもその自然は、いつも目にする穏やかな自然とは別人という意味で、やっぱり異常で恐ろしいものと感じられます。

犠牲となった方を悼み、被災地の方々が早く日常を取り戻されることを祈ります。

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陶片趣味といえば、比喩でなしに、本物の陶片が手元にあります。

(タイルの最も長い辺は約11.5cm)

鉱物標本のように、箱の中に鎮座しているのは、ニューヨークの業者から購入した古タイルのかけらです。13世紀セルジューク朝のものというのが業者の言い分。

彼の言葉が本当なら、イスラム世界を広く支配した「大セルジューク朝」は、12世紀半ばに自壊し、13世紀には、その地方政権だった「ルーム・セルジューク朝」が細々と続くのみでしたから、出土地は、その版図だったトルコ地方ということになりますが、詳細は不明。


この三角形は、当初から人為的に成形されたもので、イスラム独特の幾何文様の一部を構成していたはずです。頂角40度というのが、元の模様を解くヒントだと思いますが、これまた不勉強で詳細は不明。でも、何か星型文様の一部だったら素敵ですね。

(イランのシャー・ネマトラ・ヴァリ霊廟(15世紀)。Wikipediaより)

そして、こんな風に空の青と競い合って立つ壮麗な建物の一部だったら…。


美しく澄んだ青。その貫入に沿って生じた金色が、人為的なものなのか、それとも釉薬成分の自然な変化によるものかは不明ですが、この青金は、まさに天然のターコイズ(トルコ石)を切り出して作ったかのようです。

遠い中世イスラム世界―。
この場所こそ、古代世界に続く、天文学の第二のゆりかごであり、そして黄漠の地に白い宮殿がそびえ、透明な新月が浮かぶ、タルホの王国でもあるのです。

(釉薬の質感↑と裏面の表情↓)

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とはいえ、この小さな島国の水と緑こそ、個人的にはいっそう慕わしく感じられます。
願わくは、そこに青空と入道雲が、早く戻ってきますように。