本の旅路2020年07月13日 08時43分20秒

このブログも、最近は内容のないメモ書きになっていますが、他人はともかく、自分にとってメモは役に立つので、今日も書きつけておきます。

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昨日の記事に登場した、ギユマン『Le Ciel』は、1870年に出た第4版です。
『Le Ciel』自体は、天文古書の名著ですから、このブログがスタートした2006年に早々と登場しています【LINK】。でも、手元にある「この1冊」のことは、あまり気にしたことがありませんでした。


昨日、書棚から取り出して、この三方金の立派な本をしげしげと眺め、改めてその来歴に思いをはせました。


表紙に捺されたこの金文字。
これまでは見れども見えずで、昨日ようやくその意味を認識したのです。

この本は、1870年に出版されると同時に、ある人物によって買い上げられ、手土産として別の人に渡されました。ある人物とは、ジュネーブ天文台長のエミール・プランタムール(Emile Plantamour 1815-1882)で、受け取ったのは、スピス・デュ・サンプロン(Hospice du Simplon)という、スイスアルプスの山間にある宿泊施設です。(「ホスピス」というぐらいですから、昔は文字通り療護施設だったのかもしれませんが、今はふつうの保養施設のようです。)

1870年、スイス連邦測地委員会の命を受けて、観測のため当地を訪れたプランタムール教授が、記念としてオスピス・デュ・サンプロンに贈った品…ということが、上の金文字から読み取れます。


タイトルページにも、同館のスタンプがペタリ。そこに書かれた「標高2000m」というのが、同館の売りだったみたいですね。

その後、本は「サンプロン愛徳図書館(Bibliotheque Caritas du Simplon、地元のカトリック系施設でしょう)」に所蔵替えとなり、さらに古書店に払い下げられて市場に出て、私が買ったときは、スイスのフリブールという小さな町の古書店にありました。

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この本が日本に来てから、早くも18年が経ちました(2002年の購入です)。
彼はその150歳の年齢のうち、1割以上を我が家で過ごしたことになるので、思えば結構な日本通です。

この後、彼は果たしてどんな旅をするのでしょう?
「この本は、昔『てんもんこがん』っていう、えーと何てったっけ…そう“ブログ”っていうのを書いてた人の家にあったんだって」とか、22世紀の人が言ってくれたら嬉しいですが、その頃も古書趣味があるのかどうか…。でも、モノにまつわる歴史性は唯一無二のものですから、やっぱり100年後にも好事な人がいて、大事にページを開いてほしいと願います。

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プランタムールの名を私は知りませんでしたが、wikipediaを参照すると、地元ジュネーヴでゴーティエに師事し、パリではアラゴーと、ベルリンではアレクサンダー・フォン・フンボルトやエンケと、ケーニヒスベルクではベッセルと、ゲッティンゲンではガウスと一緒に仕事をしたという人で、まさに天文界の偉人たちがそびえるアルプス山脈を仰ぎ見る思いがします。

このギユマンの本は、別に専門書ではない、一般向けの本ですけれど、その表紙に捺されたプランタムールの金文字を見れば、やっぱりちょっと只ならぬものを感じます。

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