星座絵の系譜(2)…ボーデ、フォルタン、フラムスティード2020年07月20日 07時01分16秒

星図というのはもちろん恒星のプロッティングが主で、そこに重ねる星座絵は従です。
したがって、星図の歴史を語る上では、元となった恒星の位置データの素性とか、星図化に際して何等級の星まで図示してあるかとか、さらに天球を平面化するのに、どんな投影法が用いられているか、etc.を論じるのが本筋です。しかし、ここではパッと目に付く「星座絵」に限定して話を進めます。

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ジェミーソンの星図帳について、ニック・カナスの『Star Maps』(上掲)は、以下のように述べています(太字引用者)。

 「全体のデザインは、フラムスティード/フォルタンや、ボーデの『星座紹介(Vorstellung der Gestirne)』のそれと似ていたが、それに加えてジェミーソンは、ボーデが育み、自著『ウラノグラフィア』に載せた多くの星座も含めていたし(例えば、ねこ座、フリードリヒの栄誉座、軽気球座、電気機械座、印刷室座、等)、さらに「ふくろう座」のような全くの新星座も含んでいた(ジェミーソンは、それをうみへび座の尻尾の先に配置した)。」(p.207)

上の引用でいう「全体のデザイン」というのは、星図帳の構成のことを言っていると思いますが、それらを参照したということは、星座絵も当然影響を受けていると見てよいでしょう。

ここに名前が挙がっているのは、イギリスのフラムスティード(John Flamsteed、1646-1719)、フラムスティード星図の改訂版を出したフランスのフォルタン(Jean Nicolas Fortin、1750–1831)、そしてドイツのボーデ(Johann Elert Bode、1747-1826)の3人です。

中でもより直接的な影響を受けたのはボーデで、星図史の基本文献である『The Sky Explored』(1979)の著者、D. Warnerも、同書の中でジェミーソンをボーデの「模倣者(imitator)」と呼んでいます(p.39)。

ボーデは何種類か星図帳を編んでいますが、その中で『星座紹介(Vorstellung der Gestirne)』(1782)というコンパクト星図と、大著『ウラノグラフィア(Uranographia)』(1801)が、ジェミーソン星図を導いた「仏」に当ります

そして、ボーデの『星座紹介』について言えば、これは通称「フォルタン版」、すなわちフラムスティードのオリジナル、『天球図譜(Atlas Coelestis)』(1729)を、フォルタンが後に縮刷・再版した、『フラムスティード天球図譜(Atlas Céleste de Flamsteed)』(1776)のドイツ語版という位置づけなので、結局、「フラムスティード → フォルタン → ボーデ → ジェミーソン」という影響関係を想定することができます。

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さっそく、先日のジェミーソン星図のはくちょう座と、ボーデの『星座紹介』、さらにその元になったフォルタン版、フラムスティードのオリジナル版とを比べてみます。

(ジェミーソン星図と『ウラニアの鏡』のはくちょう座。サイズを変えて画像再掲)

(同じくボーデ『星座紹介』。ハイデルベルク大学所蔵本より。※比較のため原画像の明度を調整)

(同じくフォルタン版。恒星社『フラムスチード天球図譜』より)

(同じくフラムスティードのオリジナル『天球図譜』。オーストラリア国立図書館所蔵本より。※同上)

基本的に、いずれも全く同じ構図です。
星座絵については、竪琴の形が違うし、何よりもとかげ座が、フラムスティード星図と、そこから派生したフォルタン版、ボーデ版では、なぜか子狐のような形をしていますが、そこに目をつぶればよく似ています。完全コピーではなく、「写しながらも、一寸ずつ変えていく」ところが、コピー文化の文化たるゆえんでしょう。

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これでジェミーソンから、その約100年前のフラムスティードまで、「仏」の連鎖をたどることができました。ここから先が、なかなか難物ですが、その前にボーデ畢生の大作『ウラノグラフィア』について触れておきます。

(この項つづく)

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