星めぐりの青い夜 ― 2020年08月18日 05時45分02秒
天文アンティークの世界に分け入って、美しいモノや、変わったモノをずいぶん見てきましたが、その中でも、これはちょっと<別格>という品があります。
“これさえあれば、生きながらえることができる―。”
何だか大げさですが、確かにそう思えるような品がいくつかあるのです。
たとえば、この古い幻燈スライド。
木枠に取り付けたハンドルを回すと、ガラスに描かれた絵柄がくるくる回る「メカニカル・ランタン」の一種で、19世紀後半にイギリスで売り出されたものです。
メーカーはロンドンの John Browning 社。
これを光にかざせば、青く輝く夜空に一面の星が広がります。
その主役は大熊と小熊。
北斗七星を基準に、小熊のしっぽの先に光る北極星を探すという、星座学習の基礎を説くものですが、その絵柄の何と繊細なことか。森の上に悠然と浮かぶ熊もいいし、木立ちの描写も美しいです。そして、空の青と星の白の爽やかなコントラスト。いかにも星ごころに満ちています。
そして、ハンドルを回せば星がゆっくりと回転し、熊たちも空の散歩を始めるのです。微笑ましくもあり、なんだか切ないような気もします。
★
下界に暮らすことは辛いことです。でも、こういう品に心を慰め、頭上を振り仰げば、もうしばらくは頑張れそうです。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。