名古屋星めぐり(その1)2020年11月23日 08時31分28秒

昨日の今日ですが、忙しいと逃避したくなるもので、やっぱり記事を書いてしまいます。
天文和骨董から連想して、以下、身近な場所で日本における星の文化史を考えようという試みです。

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名古屋の東部、昭和区に「浄昇寺」というお寺があります。


名古屋の地理に通じている方は少ないでしょうが、ランドマークでいうと、名古屋大学や東山動物園の南にあたります。

(浄昇寺公式サイト http://joushouji.web.fc2.com/
 同寺インスタグラム https://www.instagram.com/josho_ji/?hl=ja

ここはお寺なんですが、なぜか参道に鳥居が立っていて…


そこに「妙見宮」という額がかかっています。


お寺の正式名称は「妙見山浄昇寺」。妙見町という地名の由来にもなっています。

(一つ上の写真は裏参道で、こちらが表参道。ここにも鳥居と「妙見宮」の扁額)

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宗派でいえば日蓮宗のお寺ですが、より端的には「妙見信仰」の寺で、こういう神仏習合的な寺のあり様は、妙見信仰そのものの複雑な性格を物語っています。

(ウィキペディアの「妙見菩薩」の項に載った、その多様な姿)

本尊である妙見菩薩は、北極星を神格化したもので、仏教や神道というよりも、本来は道教や陰陽道の星神信仰の色彩が濃い尊格です。日本では、中世に武神としての性格を強め、さらに北斗信仰と融合し、坂東平氏の一族である千葉氏が深く帰依したことでも知られます。

近世に入ると、「妙見」の文字から、眼病平癒を祈願する庶民信仰の場として、各地で繁盛しました。浄昇寺の場合も、元は神仏に祈って眼疾が治った村人が、妙見像を勧請したのが始まりだそうです。


しかし、本堂に「北辰殿」の額がかかり、星祭りの祈祷会を毎年行っているのは、星辰信仰の場たるその本分を今に伝えています。

名古屋における妙見信仰の場は、ごく希少です。まずはここを起点に話を進めます。

(この項つづく)