閑語2021年11月02日 22時01分01秒

選挙は蓋を開けてみないと分からないと書きました。
で、開けてみてどうだったか?
結果はすでにご承知のとおりで、個人的にはあたかも地獄の釜の蓋が開いたかのような気分です。

私の予想では、積極的な野党支持票は伸びないまでも、与党への批判票はもっと多いだろうと思っていました。でも結果はずいぶん違っていて、この点では事前の世論調査の方が正しかったわけです。

   ★

うーむ…と腕組みをしつつ、どういうことかなあと思案しています。
なかなか理解しづらいことですが、世の中に私の理解できないことは無数にあるので、これもその一つに過ぎないといえばそれまでです。

ただ、分からないなりに、後知恵で考えると、今回野党がふるわなかった第一の原因は、野党共闘のロジックないし前提が、そもそも間違っていたことでしょう。

   ★

これまで、旧民主党系の候補と、共産党系の候補(さらに社民党やれいわ)の得票数を足し合わせると、自公の候補を上回る選挙区はたくさんありました。「だから、野党が共闘して候補者を一本化すれば勝てるはず」と思ったのが、そもそも間違いだったのです。たぶん人々の投票行動は、それほど単純ではないのでしょう。

たとえば労働運動の文脈で見ても、連合系の組織が共産党に対して抱く不信感は想像以上のものがあって(逆もまた真なり)、結果として「候補者を一本化しても、得票数は両者の合計にはならない」という事実が、今回明らかになりました。(労組の組織票ばかりでなく、浮動票の投票行動にも、一本化は複雑な影を落としたことでしょう。)

今回の結果――すなわち共闘効果の不発は、それこそ蓋を開けてみるまで分からない、いわば実験的な性格を帯びたものですから、「やっぱり野党はだらしない」とか、執行部の責任問題とか、そういう論にすぐ結びつけなくてもいいのでは?と、私は思います。でも、今後の野党各党のストラテジーに大きな影響を及ぼすことは必定でしょう。

私自身は素朴な大同団結派で、共闘大いに結構と思っていたので、いかにも残念ですが、これが政治というものであり、人間社会の実相なのです。これはひとつ勉強になりました。

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でもひょっとして、投票日がもう一日遅く、神様たちが出雲から帰ってきた後なら、結果も違ったのかなあ…と思ったりもします。

コメント

_ S.U ― 2021年11月03日 09時03分03秒

>後知恵
 まいどのことですが、選挙の後で考えると、事前の国会議員の思惑より、国民の投票行動のほうがよほど的確と感じることが多いです。この的確というのは、将来への正しい選択という意味ではまったくなく、その時の世論というか心理をより深いところから直に反映させているという意味です。おっしゃるように、野党連合でも単純な和にはならないのでしょう。

 私は、特徴的な点として、浮動票が、自民、立民、共産から維新やれいわに移った票が多かったのではないかと思います。第1党、2党ともに議席を減らしたわけですから、浮動層が暗に求めているのは、二大政党体制でなく、また、それを前提にしないと機能しない小選挙区制ではなく、まず、中選挙区制への復帰ではないかと思います。国民の望む政治のためには、決まった支持政党を持たない人の主導によって選挙制度を変えていく、という頭から矛盾したような課題が突きつけられているように思います。

_ 玉青 ― 2021年11月03日 09時35分09秒

金権選挙の反省から生まれた、中選挙区制から小選挙区制への移行でしたが、これまた一つの「実験」であり、その実験結果(民意を十分反映できない)は既に出ましたから、今一度選挙制度の改革は真剣に論じられなければなりませんね。政治への無関心や低投票率も、その根本に「死に票」を恐れる心理があるのかもしれず、まずはそこから手をつけないと、政治の立て直しは難しいかもしれません。

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