丑から寅へ ― 2022年01月01日 08時44分50秒
喪中のため新年の賀詞は控えさせていただきますが、本年も何卒よろしくお願いいたします。
さてここ数年、干支の交代を「骨」で確認するのを年初の例としてきましたが、トラの骨はさすがにないので、ネコに代わってもらいます。
写真はイエネコの全身骨格と、その足元に置かれたボス・プリミゲニウス(家畜牛の原種)の化石骨。ネコの方は本物ではなくて、プラスチック製模型です(狭い場所に置くとつっかえるので、尾椎を外してあります)。
去年の写真と比べるとなかなか感慨深いですね。
ネズミに比べればネコは巨大ですが、そのネコもトラにくらべればネズミのようなものです。牛も鼠も猫も虎も(そしてヒトも)、元をたどればすべて共通祖先に行きつくわけですが、有無を言わさぬ進化の圧は、100万年単位の時間を使って、これだけ多様な作品を生み出しました。でも、その目まぐるしい変化の向こうにも、やっぱり貫く棒のごときものはあるでしょう。
コメント
_ S.U ― 2022年01月02日 07時47分15秒
_ S.U ― 2022年01月02日 07時51分20秒
年初から駄言が過ぎてご挨拶を書くのを忘れておりました。
末尾になりましたが、今年も変わりませずよろしくお願いいたします。
末尾になりましたが、今年も変わりませずよろしくお願いいたします。
_ 玉青 ― 2022年01月02日 13時28分49秒
早速の清談ですね(笑)。
以前のやりとりの記憶が曖昧なのですが、現時点では個人的に朝鮮語推しです(素人談義をどうぞご容赦ください)。
古代の半島と日本の関係は、物を介してのやりとりに加え、数次にわたって直接「人」が多数流入しましたから、その影響は非常に大きかったと想像します。ひところブームになった万葉集を(現代の)朝鮮語で解釈するという試みは、その後きびしい学問的批判にさらされましたが、渡来人とその子孫が、文化面で古代の為政者に重用されたことは事実ですし、英語史におけるフランス語の影響のように、特に文化的な語彙に関して、日本語に及ぼした朝鮮語の影響は予想以上のものがあったことでしょう。(しかし、肝心の古代朝鮮語の実態が不明なので、両者の関係の解明ははなはだ困難なようです。)
トラは半島の信仰や説話で重視される存在であり(日本におけるオオカミ的立ち位置ですね)、さらに仏教や道教といった当時の「ハイカルチャー」とも結びついていましたから、「とら」という和語も、そうした新知識に付随して持ち込まれた、朝鮮語由来のものである可能性は非常に高いと想像します。
以前のやりとりの記憶が曖昧なのですが、現時点では個人的に朝鮮語推しです(素人談義をどうぞご容赦ください)。
古代の半島と日本の関係は、物を介してのやりとりに加え、数次にわたって直接「人」が多数流入しましたから、その影響は非常に大きかったと想像します。ひところブームになった万葉集を(現代の)朝鮮語で解釈するという試みは、その後きびしい学問的批判にさらされましたが、渡来人とその子孫が、文化面で古代の為政者に重用されたことは事実ですし、英語史におけるフランス語の影響のように、特に文化的な語彙に関して、日本語に及ぼした朝鮮語の影響は予想以上のものがあったことでしょう。(しかし、肝心の古代朝鮮語の実態が不明なので、両者の関係の解明ははなはだ困難なようです。)
トラは半島の信仰や説話で重視される存在であり(日本におけるオオカミ的立ち位置ですね)、さらに仏教や道教といった当時の「ハイカルチャー」とも結びついていましたから、「とら」という和語も、そうした新知識に付随して持ち込まれた、朝鮮語由来のものである可能性は非常に高いと想像します。
_ S.U ― 2022年01月03日 15時05分33秒
ご見解をいただきりがとうございます。
私の推定も、漢語になっていない限りは、起源はたぶん朝鮮語で、しかも、単純に「製品」と「伝票」が輸入品として(今日に喩えるならば)税関からの連絡で届いたわけではなく、もっと生々しい感動がある状況、つまり、生きたまま届いたとか、現地の技術者とともにやってきたということじゃないかということですから、だいたいご同様ということになるのではないかと思います。 昔のことはよくわかりませんので、問題は、類例を見つけることではないかと思います。寅年はまだ1年近く残っているので、またの折りに考えたいと思います。
私の推定も、漢語になっていない限りは、起源はたぶん朝鮮語で、しかも、単純に「製品」と「伝票」が輸入品として(今日に喩えるならば)税関からの連絡で届いたわけではなく、もっと生々しい感動がある状況、つまり、生きたまま届いたとか、現地の技術者とともにやってきたということじゃないかということですから、だいたいご同様ということになるのではないかと思います。 昔のことはよくわかりませんので、問題は、類例を見つけることではないかと思います。寅年はまだ1年近く残っているので、またの折りに考えたいと思います。
_ 玉青 ― 2022年01月03日 16時29分53秒
これも正月向きの話題ですから、少し調べてみたところ、皆川雅樹氏が「文献資料から見た舶来動物の古代・中世史」という論考を書かれているのを見つけました。私には初耳のことが多く、実に興味深い内容でした。
https://www.city.fukuoka.lg.jp/maibun/html/preservation/pdf/kako_2018/02.pdf
時代的に古い6~7世紀の状況に目を向けると、当時半島からもたらされたのは、百済から「駱駝、驢、羊、白雉、鸚鵡」、高句麗から「駱駝」、新羅から「孔雀、鸚鵡、鵲、水牛、山鶏、馬、狗、騾、駱駝、犬、鳥」だそうで、特に6世紀の斉明天皇の時代には、珍しい動物を積極的に収集・飼養するための苑池まで設けられた形跡がある由。残念ながら肝心のトラ(生体)の記録はありませんでしたが、虎皮献上の記録はあって、古代の都人士がトラに好奇の目を向けていたことは確かなようです。
また、『日本書紀』欽明天皇6年(545)の条には、百済に派遣された豪族、膳巴提便(かしわでのはすひ)が、現地で息子を虎に殺された敵を討ち、その虎の皮をはいで日本に持ち帰ったエピソードがあって(https://ja.wikipedia.org/wiki/膳巴提便)、日本人として生身のトラとじかに接触した人がいるのも歴史的事実のようです。
正月から大トラなんていうのは感心しませんが、トラは一種の縁起ものですから、寅年の宿題として、引き続き事態の究明に努めることといたしましょう。
https://www.city.fukuoka.lg.jp/maibun/html/preservation/pdf/kako_2018/02.pdf
時代的に古い6~7世紀の状況に目を向けると、当時半島からもたらされたのは、百済から「駱駝、驢、羊、白雉、鸚鵡」、高句麗から「駱駝」、新羅から「孔雀、鸚鵡、鵲、水牛、山鶏、馬、狗、騾、駱駝、犬、鳥」だそうで、特に6世紀の斉明天皇の時代には、珍しい動物を積極的に収集・飼養するための苑池まで設けられた形跡がある由。残念ながら肝心のトラ(生体)の記録はありませんでしたが、虎皮献上の記録はあって、古代の都人士がトラに好奇の目を向けていたことは確かなようです。
また、『日本書紀』欽明天皇6年(545)の条には、百済に派遣された豪族、膳巴提便(かしわでのはすひ)が、現地で息子を虎に殺された敵を討ち、その虎の皮をはいで日本に持ち帰ったエピソードがあって(https://ja.wikipedia.org/wiki/膳巴提便)、日本人として生身のトラとじかに接触した人がいるのも歴史的事実のようです。
正月から大トラなんていうのは感心しませんが、トラは一種の縁起ものですから、寅年の宿題として、引き続き事態の究明に努めることといたしましょう。
_ S.U ― 2022年01月05日 17時21分33秒
これは、いろいろな「交流」があったようで、トラの生体が来たのではなく、日本人が出かけて遭ったことによる可能性もありますね。そんな機会は決して多くはなかったとしても、印象深く語り継がれたことはあったのでしょう。
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それで、虎も牛と同様、古代に生体で日本に入ってきていて(たとえば、子どもの虎を輸入して)人工で育てたとかあったとすると、日本人の心への訴えた方はまったく違ったもので和語がついたと思います。正月に有意義な妄想としてこういうことを今年は考えてみました。