臆面のはなし ― 2022年08月14日 12時15分05秒
今朝の朝日新聞の朝刊を見ていて、ひどく驚いたので記事を書きます。
驚いたのは本紙の内容ではなく、1面の下に載っている書籍広告欄で、そこに載った著者の名前を見て、大いに驚いたのです。
そこには、『アルコール症―病院精神医学の四十年―』(メディカル・ジャーナル社)の著者として、石川文之進の名前がありました。しかも、その隣の隣には、『精神医学と俳句』(幻冬舎ルネッサンス新社)と題して、そこにも「石川文之進・著」とあります。
石川という人は、あの酸鼻をきわめた「宇都宮病院事件」の舞台となった報徳会宇都宮病院の当時の院長です。宇都宮病院事件は、日本の精神医療行政の曲がり角となった事件として記憶に刻まれ、今も関係書籍には必ず記載されていますが、その人の著書がなぜ今こうして広告欄に登場するのか? しかも、『アルコール症』は2003年、『精神医学と俳句』は2008年に出た本で、新刊書でも何でもありません。その辺のからくりが謎といえば謎です。
石川氏は、自身の文章【LINK】で、「昭和59年のいわゆる宇都宮病院事件の折には、諸先生方、医学会及び精神科学会各位に大変御迷惑をおかけいたしましたこと、心からお詫び申し上げます。」と述べており、「諸先生方」、「医学会及び精神科学会各位」には頭を下げていますが、患者さんには一言も反省の弁がないことに、その姿勢がよく現れています。そして、事件によって病院の経営から身を引くでもなく、驚くべきことに96歳の現在も「社主」として病院のトップにいます。
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世間には「臆面もなく」という言葉があります。
「臆面」というのは「気おくれした顔つき」のことで、人間あんまりおどおどしても良くないのかもしれませんが、多少は臆面があったほうが人間らしいし、好感が持てます。
ポスト安倍の政局において、いろいろな人間模様を見るにつけ、「よくもまあ臆面もなく」と思うことがしばしばですが、この新聞広告にも似た感慨を覚えました。
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