マッチ箱の友(前編)2022年08月25日 06時11分42秒

今年の夏はどこにも出かけませんでした。その分、先日から机まわりの旅をしています。ここで「マッチ箱」の話をしようと思うのですが、まずは前置きです。

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「マッチ箱」と聞いて、どんなものを思い浮かべるでしょうか?
世代によっては、「そもそも何も思い浮かばない」という方もいらっしゃるでしょう。

今もコレクターが多いのは、「広告用マッチ」です。
昔、客商売の店で、宣伝として薄べったい小箱入りのマッチをよく配っていました。キャバレーのマッチが、旦那さんの背広の内ポケットから出てきて、奥さんが角を生やす…なんていうシーンが、昔の漫画にはよくあったものです。

また同じ用途のものとして、「ブックマッチ」というのもありました。
これは「箱」ではなくて、二つ折りの厚紙の間に、同じく厚紙の軸をもったマッチ棒がはさまっていて、それを1本ずつちぎり取って使うというものです。

(三好一(著)『マッチラベル 明治 大正』(紫紅社、2010)口絵より)

それとは別に、店頭で日用品として売られていたマッチがあって、台所で使う大箱の「徳用マッチ」とか、ポケットサイズの「並型マッチ」とかがありました。並型マッチのラベルにも無数のデザインがあって、コレクターは多いです。(ちなみに、冒頭で述べた広告用マッチは「平型」とも呼ばれ、厚さが「並型」の半分になっています。)

(三好一上掲書・表紙)

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…というふうに、マッチ箱の話をするにも、いろいろ前置きが必要なこと自体、マッチが現代生活からいかに遠くなったかを示すものです。

でも考えてみれば、マッチというのは、「摩擦熱を利用して人工的に燃焼反応を引き起こす」という、旧石器時代時代にまでさかのぼる人類のお家芸の正しい後継者ですから、仇(あだ)やおろそかにはできません。

(今日は前置きだけで、本題は次回)