ルネサンス期の天文学者の部屋を覗く2023年01月14日 10時55分40秒

前回、空想の天文学者の書斎を眺めました。
じゃあ、現実のルネサンス期の天文学者の部屋はどうだったのか?
それを窺わせるのが、かつて(2012年)オックスフォードの科学史博物館で開かれた「天文学のルネサンス」展です。


 
そのトップページに、以下の画像が貼られています。

(上のサイトから入ってもらうと、もっと大きな画像を開くことができます)

窓辺に置かれたアーミラリー、天球儀、日時計、アストロラーベ…。
演出写真とはいえ、当時の天文学者の身辺日常を彷彿とさせます。いずれの品も、現在の評価額は唸るような価格でしょうが、ただこれが絵面として豪華かといわれると、やっぱり地味は地味です。ひとつの島を領有し、立派な城に住んだティコ・ブラーエのような例外を除き、当時の(今も?)天文学者はおしなべて富貴とは縁遠かったと思います。

余談ながら、このインスタレーションを行った人は、たぶんフェルメールの有名な『天文学者』(1668年頃)を意識したんじゃないでしょうか。


17世紀後半、オランダ黄金時代の天文学者でも「きらびやか」とは程遠い、地味なイメージで描かれているわけですから、その100年前の天文学者が地味でも、ちっとも不思議ではありません。

   ★

ついでなので、上の画像に写っているモノたちの素性を確認しておきます(それぞれ個別の説明ページにリンクを張りました)。


④~⑤ ※不明
⑥ カミーロ・グアリーノ・グアリーニ(著)『天界数学論・第一部』
 (Camillo Guarino Guarini、Caelestis mathematicae pars prima、1683)
  ※出品リストになし
⑨ 『ユークリッドの光学(Euclidis Optica)』 ※出品リストになし

   ★

地味かもしれませんが、こういうのはいいなあと思います。
眺めるだけでなく、雰囲気だけでも真似してみるか…と思ったりもします。

コメント

_ S.U ― 2023年01月15日 07時36分11秒

>インスタレーションを行った人は、たぶんフェルメールの有名な『天文学者』

 ここで、10年前の記憶がよみがえりました。

1)映画『天地明察』の宮崎あおいさんの望遠鏡のコマの背後の壁の図
2)フェルメールの『天文学者』の壁の謎の図

https://youpouch.com/2012/09/14/81282/
http://mononoke.asablo.jp/blog/2012/11/16/6635438
http://mononoke.asablo.jp/blog/2012/11/17/6636370

に加えて、
3)このインスタレーションの⑧

も似通っていると思います。やはり、かすてんさんのがご慧眼ですべて「日時計」でしょうか?
だとすると、History of Science Museumの真ん中の物の特徴で、これらの図も説明可能でしょうか。

_ S.U ― 2023年01月15日 07時47分07秒

追加です。
1)は、私の注目の発端になったので言及しましたが、これだけは、その後の議論で、「描きかけの天球図(星図)」ということでいちおう落着したようです。依然、不明である2)と3)の関係でお願いします。

_ 玉青 ― 2023年01月15日 12時48分52秒

10年もこの界隈をウロウロしていれば、いい加減分かりそうなものですが、いまだに例の絵の正体は不明です。いかんせん情報量が少なすぎるのがネックですね。

フェルメールの絵は、中心の大きな円形図と、それに付属する小さな2つの円形図から成りますが、このミッキーマウスのような3者は一体不可分のものなのか、それとも付属図はあくまでも付属図で、中心の大円図だけでもダイアグラムとして十分成り立つのか、その辺がモヤッとします。たぶん、前者より後者の例のほうが多い気がするので、あまりこの「ミッキーシルエット」にこだわらなくもていいのでは…と個人的には感じています。

記事中の日時計にもミッキーシルエットが見られますが、これは日時計そのものではなくて、一種の万年暦のようです(日時計機能の方は、ミッキーの裏面にあります)。暦というのは、現代でも机辺に置かれがちですから、これは大いに脈ありだと思います。実際、フェルメールの絵に描かれたのと同じぐらい大判で、放射状に塗り分けた下のような万年暦を見つけました(1710年のものだそうです)。こんなのも候補になりそうですね。
https://www.forumauctions.co.uk/index.php?option=com_timed_auction&view=lot_detail&lot_id=62568&auction_no=2138&Itemid=

あと私が気になっているのは、何と言っても、大円図における放射線の描写です。
極端な省筆画の中で、フェルメールがこれを強調しているということは、この放射線こそ本図で最も重要な要素のはずですが、これに似た図として見つけたのが以下です。

https://www.alamy.com/circular-diagram-of-an-armillary-sphere-renaissance-and-medieval-manuscripts-collection-calendar-tables-for-art-of-computus-computus-quadrans-de-image248535554.html

アーミラリースフィアを側面から描いた図で、放射線の角度がフェルメールのものとよく似ています。これまた候補に挙げておきます。

まあ、答は永遠に分からないかもですが、それだけ謎解きの楽しみは続きそうですね。

_ S.U ― 2023年01月15日 16時55分19秒

日時計ではなくて万年暦ですか。万年暦は、ダイヤル式のものが多いと思いますが、この3つの円形は、ダイヤル式の設計図、すなわち切り抜いて重ねる3層構造を示したものということも考えられると思います。寝室に飾るという意味では、なんらかの暦、または暦計算用のダイヤグラムの可能性は魅力的ですね。
 ご紹介の万年暦、あるいはダイヤグラムの例によると、フェルメールの絵の太い線は、実は文字列であるということになりますでしょうか。私は、この謎のために件の絵を見に東京の美術館まで行きましたが遠目にも近めにも太線にしか見えず、文字列を模したものには見えませんでした。本当が文字列なら、フェルメールはそれと知らずに単純な線と思って表現してしまったということになるでしょう。
 17世紀の絵ですから、解明にあと数十年や100年くらいかかってもやむを得ないと思います。また、今後の楽しみとしましょうか。

_ 玉青 ― 2023年01月17日 20時13分27秒

それにしても350年後の極東で、これほどまでに首をひねる者たちがいることに対して、フェルメールは多少なりとも責任を感じてほしいですね(笑)。
まあ謎の方は慌てず、のんびりと探っていくことにいたしましょう。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック