天文ゲームの世界を眺める…赤い天文カード(後編)2023年01月29日 07時26分48秒

(久しぶりに青い人赤い人が登場)

なるほどな。だけどお前さんの推理には、大事な点が抜け落ちているよ。

ああ、ビックリした。君、一体いつからそこにいるんだい?

いつからも何も、さっきからずっと声をかけているのに、大声で何かブツブツ言って、お前さんのほうが気づかなかっただけだろ。

ごめん、ごめん。ちょっとゲームの謎解きに熱中しすぎた。…で、何だい?その大事な点っていうのは?

お前さんがいうように、このゲームをトランプ代わりにするんだったら、こんなカードは最初から要らないってことさ。ふつうにトランプを使って遊んだらいいじゃないか。

ああ、そうか。まあ、確かにそうだね。

ここは作り手の立場に立って考えてみろよ。

うん、マサチューセッツのランクトン氏だね。

このカードの背後には、たしかに或る種の教育的意図がある。だとしたら、ゲームのプレーヤーは、ただカードを与えられて、数合わせや数並べをするんじゃなくて、その前に「知識を獲得した褒賞としてカードを手に入れる」というプロセスがないと、どうもうまくない。

どういうことだい?

俺の考えはこうだ。そもそも空には88もの星座がある。太陽系にだって、小惑星や彗星が無数にぐるぐる回っている。だったら、ハーフサイズなんてケチなことを言わずに、フルサイズのトランプだってできるし、そうしようと思えば、もっと大掛かりなカードセットだって作れるはずだ。

ああ、そうだね。

それをしなかったのは、ランクトンは子供でも気軽にゲームに参加できるよう、あえて枚数を26枚に抑えたのさ。先回りして言うと、ランクトンは子どもたちに、この26枚のカード情報を、そっくり記憶させたかったんだ。

で、それがどう遊びと結びつくんだい?

俺だって別に正解を知ってるわけじゃないよ。でもたとえばだ、場の中央にカードを裏返して山札を作る。

ふむふむ。

で、「親」がそこから1枚引いて、何かヒントを言うんだ。そうして、そのカードが何かを当てたプレーヤーが、それをもらえる…というふうにすれば、あとは数合わせでも数並べでも、あるいは単純にいちばんたくさんカードを取ったプレーヤーが勝ちでも、お好きなように遊べるってわけさ。

へえ、なるほど。でもさ、ヒントを出すにしても、カードにびっしり説明が書いてあるオリオンとかヴァルカンならいいけど、北極星とか北斗七星には、ほとんど何も書いてないよ?「スペース」カードなんて、これ、ヒントの出しようがあるの?


忘れちゃいけない。この手のゲームには、ルールブックが付き物だろ? この場合は、たぶん天文学の初歩を解いたテキストブック的小冊子だろう。おそらくそこに、難しいヒントから簡単なヒントまで、各カードごとにヒントの出し方が書かれてたんだと思う。

うーん、何だか都合のいい仮定のような気もするけど、でも当時ゲームって確かにそういうのが多いよね。じゃあついでに聞くけど、彗星とか日食とかの番外カードはどう使うんだい?

そりゃ単純にワイルドカードでいいさ。

   ★

…とかなんとか、上の二人は何となく謎を解いた気分になっていますが、まあ当たるも八卦当たらぬも八卦。それよりも、このカードがたたえている古風な天文趣味の佳趣を我々としてはまず味わうべきで、それにくらべれば、謎解き自体はオマケみたいなものかもしれません。