ボーデの『星座入門』を眺める ― 2023年02月23日 18時18分44秒
仕事が突沸するときはどうしようもないものです。
でも、今日は久しぶりに休日らしい休日を過ごしました。
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ノンビリついでに本棚を見回し、ふと昨年12月に書いた記事を思い出しました。
■アルビレオ出版からの贈り物:ボーデの『星座入門』
1805年に出た星図集の複製本を注文した…という内容です。
「そういえば、あれはどうなったかな?」と思いましたが、別にどうなったもこうなったもなくて、現物はその後まもなく届いたんですが、私自身が文字にするのをサボっていたので、ブログの表面からは消えた話題になっていました。せっかくなので、その内容をここで見ておきます。
表紙サイズは21×29.5cmの横長の判型で、背と角をレザーで補強した、凝った四分三装丁(Three Quarter Binding)です。
表紙中央にタイトルが貼り込まれていますが、そこが空押しで凹んでいるのが、芸の細かいところ。神は細部に宿るというか、玄関を見ればその家が分かるというか、こういう点にアルビレオ出版のこだわりが出ています。
可愛らしいタイトル口絵。
全34図のうちの第1図、北天星座図。
細部を拡大してみます。この画像で左右約38mm。近くでじっくり見るとドットの存在がわかりますが、パッと見では気にならないレベルです。
アルビレオ社の製品は押し並べてそうなのですが、この本も一般にカラー印刷にふさわしいとされるツルツルの紙は使わずに、ニュアンスのある無光沢紙を使っています。これも私にとっては嬉しい点。
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以前も書きましたが、このボーデの『星座入門』の元となったのは、イギリスのフラムスティード(John Flamsteed、1646-1719)が手掛け、その死後に刊行された『天球図譜(Atlas Coelestis)』(1729)です。
もっと正確にいうと、『天球図譜』の約半世紀後(1776)に、フランスのフォルタン(Jean Nicolas Fortin)が、原書を約3分の1サイズに縮小して再刊した、いわゆる「フォルタン版・天球図譜」が元になっています。
まあ、フォルタン版は幾度か版を重ねているし、ボーデの本も途中で版を改めているので、その書誌は入り組んでいてよく分からないのですが、ここでは単純に1776年に出たフォルタン版の初版と比べてみます(といっても、こちらも本物ではなくて、1943年に日本で出た複製本です。→参考LINK)。
ぎょしゃ座付近。星座絵は基本的に同じですが、目を凝らすと違いが目立ちます。
たとえば、ボーデの本には、ウィリアム・ハーシェルによる天王星の発見(1781)を記念する「ハーシェルのぼうえんきょう座」が描かれていますが、フォルタン版には当然ありません。また描かれている恒星の数もずいぶん違います。この間の観測の進展によって、より詳しいデータが利用できるようになったせいでしょう。
こちらはうお座をアップして比較。恒星の数の違いはもちろん、星座絵そのものや星座境界も、ドイツで新たに版を起こした関係で、いろいろ違いが生じているのが分かります。
こちらはみずがめ座・やぎ座付近ですが、注目してほしいのは左のブランクページです。
お分かりのように、そこにある「染み」は印刷によるものです。
空白ページの表情も、きっちり写真に撮って再現しようというのは、高価なファクシミリ版なら普通ですが、リーズナブルな複製本でここまでやるのは、趣味的経営の(ように見える)アルビレオ出版ならではです。
北天を載せたので、おまけに南天星座図も載せておきます。
本書の奥付。本書は全部で399部作られ、手元の1冊はNo.165でした。
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我ながら何だか提灯記事っぽいですが、私は当然アルビレオ出版からお金をもらっているわけではありません。でも、勝手連的に同社を応援しているのは確かで、ここは大いに提灯を掲げ、鳴り物入りで触れ歩こうと思います。
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