七夕の雅を求めて(3)…七夕香2023年07月03日 06時00分31秒

『七夕草露集』には、昨日の一文に続けて、

「香家米川流に星合香 七夕香の組香あり。其作前(さくまい)誠に高雅にて。二星(ふたほし)も感応(かんをう)あるべき弄(もてあそ)び也」

とあります。米川流は志野流から分かれた香道の一派で、今は廃絶の由ですが、ここにいう七夕香は「組香」とあるので、複数の香木の香りを順々に聞くことで七夕をイメージさせるもののようです。

あるいはそれとは別に、足利義政の時代に定められた六十一種名香(有名な蘭奢待もそのひとつ)のうちにも「七夕香」があると、『貞丈雑記』に書かれていました。こちらは単独の香木でしょう。

まことに雅なものですが、いずれも容易に経験し難いので、ここは別の「七夕香」の力を借ります。


用意したのは、仙台香房・露香LINK】が製した「仙台四季香 七夕」。
香立て用のトンボ玉が付属しています。


商品の紹介ページには「仙台の夏の風物詩、仙台七夕祭りにちなんだ爽やかな香りです」とあります。仙台は学生時代を過ごした懐かしい街なので、一筋の香煙の向こうにいろいろな想念が次々と湧いてきます。そして、香煙の微粒子はそのまま時間も空間も超えて、私の思いを星まで届けてくれそうな気がします。


線香立てに使った皿は、無数の気泡が満天の星のように入ったガラスの豆皿。
和雑貨を扱っている中川政七商店LINK】のリアル店舗で見つけました。

大正時代から東京でガラス器を作っている岩澤硝子LINK】とのコラボ商品で、ガラスの種を回転する金型に落とし、高速で回転させることによって成形する「スピン成形」という方法で作られたそうです。回転によってできた水紋のような同心円が特徴で…と聞くと、まさに回転する銀河のようで、星まつりにふさわしい気がします。

(この項つづく)