七夕の雅を求めて(5)…琵琶の空音2023年07月05日 06時06分01秒

乞巧奠とは、読んで字のごとく「技芸のなることを星に(まつり)」という意味で、もとは織物や針仕事の上達を願ったものでしょうが、時代と共に意味が広がって、後には書道や歌道の上達のほうがメインになった感があります。

また、古式の七夕の絵を見ると、乞巧奠の卓には、琵琶や琴が付き物で、たびたび話題にした冷泉家の例や、『七夕草露集』の挿絵にもそれが登場しています。これも星に音楽を捧げるというよりは、音楽のスキル向上を願うための工夫でしょう。

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ここで梶の葉に続いて、雅な楽器を用意することにしました。


いろいろ探した末に見つけたのは、琵琶をかたどった染付の水滴(水注)です。


琵琶の器形もさることながら、これは硯に水を入れるための道具ですから、音楽と書道のダブルで乞巧奠に関係があるし、染付というのも夏向きで、これは我ながら風流な趣向だと思いました。(自画自賛に眉をひそめる方もおられましょうが、今回の企画は私なりに相当力が入っているので、つまらない自慢も、どうかお目こぼしいただきたいです。)


だいぶ時代が付いており、文人趣味の殊に盛んだった天明前後、ないし文化文政期のものと想像するんですが、いずれにしても江戸時代の品であることは間違いないでしょう。

  琵琶鳴りをしつつ七夕竹さやぐ  鈴木しどみ

(この連載もあと2回、ちょうど七夕当日に終了の予定です)