他愛ない宇宙 ― 2024年11月04日 11時36分44秒
他愛ないといえば、こんな本も届きました。
■Child Life 編集部、『The Busy Bee SPACE BOOK』
Garden City Books (NY)、1953
Garden City Books (NY)、1953
版元の Garden City Books も含めて、「Child Life」という雑誌は、今一つ素性がはっきりしません(同名誌が他社からも出ていたようです)。
裏表紙には、この「Busy Bee Books(働きばちの本)」シリーズの宣伝があって、いずれも幼児~小学生を対象としたもの。中でもこの「宇宙の本」は、いろいろな工作を伴うせいか、年齢層は相対的に高めで、小学校の中学年~高学年向けの本です。
★
その内容はといえば、
この「プラネット・トス」は、切り抜いて壁に貼り、粘土玉をぶつけて点数を競うゲーム。
あとは迷路遊びとか、数字の順に丸を線で結ぶと浮かび上がる絵とか、
色塗りしてパズルを作ろうとか、火星人と金星人の追いかけっこゲームとか、
「宇宙暗号を解読せよ」等々、中身は本当に他愛ないです。
工作ものとしては、この「スペース・ポート」がいちばん大掛かりな部類ですから、あとは推して知るべし。
日本の学習雑誌の付録にも、同工異曲のものがあったなあ…と懐かしく思うと同時に、当時の日本の雑誌に比べて紙質は格段に良くて、そこに彼我の国力の違いを感じます。
★
1953年といえば、日本では昭和28年。
エリザベス女王の即位や、朝鮮戦争の休戦、テレビ本放送の開始、映画では「ローマの休日」や小津の「東京物語」が公開…そんなことのあった年でした。
目を宇宙に向ければ、ソ連のスプートニク打ち上げ(1957)に始まる宇宙開発競争の前夜で、宇宙への進出は、徐々に現実味を帯びつつあったとはいえ、まだ空想科学の世界に属していた時期です。その頃、子供たちは宇宙にどんな夢を描いていたのか?…という興味から手にした本ですが、これが予想以上に他愛なくて、それ自体一つの発見でもありました。
でも、今となってはその他愛なさが貴くも感じられます。
「他愛ない」とは、けなし言葉である以上に褒め言葉でもあり、強いて英語に置き換えれば「イノセント」でしょう。
最近のコメント