不滅のデロール ― 2025年02月06日 18時23分22秒
この3週間はプレッシャーの連続で、非常に厳しいものがありました。
でも、明日大きな会議が終わると、一つの山を越えてホッとできます。
あの山を越えた先に幸いが待っていると信じて進むのみです。
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さて、このブログも長くなって、すでに満19年を超え、20年目に入っています。
いたずらに苔の生えた甲羅をさらすばかりでは見苦しいので、このへんで初心に帰ることも必要ではないか…そんなことを折々考えます。
もちろん、今さら20年前の自分に戻ることはできませんが、「いつかぜひ」と、かつて心に抱いた夢を思い出すことも悪くはないと思うのです。まあ、「初心に帰る」というか、「初志貫徹」ですね。
たとえば「Beautiful Books on Astronomy」とか、「天体モチーフのゲームの世界」とか、掘り下げたい個別のテーマもたくさんあるし、以前は天文と理科室趣味が二枚看板だったので、久方ぶりに博物趣味や「驚異の部屋」について熱く語ってもいいんじゃないか…と、こんなことを考えたのは、「あの」デロールに関する本を最近目にしたからです。
■Louis Albert de Broglie
A Parisian Cabinet of Curiosities: Deyrolle.
Flammarion (Paris), 2017.
A Parisian Cabinet of Curiosities: Deyrolle.
Flammarion (Paris), 2017.
(デロール公式サイト https://deyrolle.com/)
1831年以来連綿と続く、パリの老舗博物商であるデロールのことは、これまで何度か取り上げましたが、先日、その美しい写真文集を開いて、以前の気持ちがよみがえるのを感じました。
といって、この本も出てから既に8年になるので、いささか古くはあるのですが、あの2008年2月の「デロールの大火」【過去記事にLINK】を乗り越えて見事に復活し、さらなる発展を遂げたデロールの姿を見ると、博物趣味の年輪ということを、つくづく考えさせられます。
(火事で焼けただれたライオンの剥製)
(焼け残った品を元にしたアート作品。台湾出身の Charwei Tsai 作、「Massacre」。鹿の頭骨に色即是空の理を説く般若心経が書かれています)
(復興後の店舗風景。以下も同じ)
その陣頭指揮をとったのが、2000年にデロールの経営を引き継いだ“庭師殿下”ことルイ・アルベール・ド・ブロイ(1963-)で、上の本の著者は他ならぬ彼自身です。
(意気軒高な庭師殿下。彼については、こちらの過去記事を参照)
自然への愛と好奇心。それが新たな美の感覚を呼び覚まし、標本とアートの融合を生み、さらに次代の子供たちの心に素敵な種を蒔くことになったら、素晴らしいことじゃないか!と、庭師殿下は熱く語るのです。
もちろん環境意識の高揚によって、博物趣味のあり方に大きな変化が生じているのは事実ですが、そもそも環境意識は、自然を愛する博物趣味から生まれた正嫡です。自然への敬意さえ欠かさなければ、今後も博物趣味は佳い香りのする存在として在り続けるのではないかと思います。
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ちなみに上の本の版元のフラマリオン社は、天文学者のカミーユ・フラマリオン(1842-1925)の弟、エルネスト・フラマリオン(1846-1936)が起こした会社です。
コメント
_ S.U ― 2025年02月07日 14時58分28秒
_ 玉青 ― 2025年02月08日 11時39分39秒
まさに「縁」と「運」ですね。
まあ、偶然に支配されて逃したチャンスも多い代わりに、それによって同量の別のチャンスをものにしていた可能性は高いので、結局どういう選択をしても、人間、幸運な出会いの総量は常に等しいのだ…と思う方が、精神衛生には良いかもですね(笑)。
まあ、偶然に支配されて逃したチャンスも多い代わりに、それによって同量の別のチャンスをものにしていた可能性は高いので、結局どういう選択をしても、人間、幸運な出会いの総量は常に等しいのだ…と思う方が、精神衛生には良いかもですね(笑)。
コメントをどうぞ
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この通りは、かつてお話ししたことがあったと思いますが、火事の前年に、私がモンパルナスのホテルからオルセー美術館まで歩いて行った時に、美術館の西側を通ってセーヌ川に出たために通ることのなかった道ですが、もう行くことはないと思います。そう思うとさみしいですが、そういうところは今やたくさんあり、それはそれでいいのではないかと思います。