金色のちひさき月のかたちして ― 2018年02月15日 07時20分09秒
惑星X、迫る ― 2017年08月18日 22時51分25秒
空の旅(17)…『スミスの図解天文学』異聞 ― 2017年05月05日 10時10分50秒
9月の星座…グラスゴーの街から ― 2015年09月23日 09時56分56秒
中央から右手にかけてそびえるのは、グラスゴー大学と、それに隣接するケルヴィングローブ美術博物館の建物と尖塔群。
その左手にはみずがめ座が並び、みなみのうお座のフォーマルハウトを見下ろしています。
惑星格付けの謎…カテゴリー縦覧:その他の惑星・小惑星編 ― 2015年03月22日 10時23分13秒
1961年にフンボルト・プラネタリウム(この名は、かつてベネズエラを探査した、ドイツの博物学者、アレクサンダー・フォン・フンボルトに由来します)が、首都カラカスに開館し、10周年を迎えたことを記念して、1973年に発行されたものです。(本当の10周年と一寸ずれているのは、細かいことを気にしない国柄もあるのでしょう。)
地球(5センティモ)
火星(20センティモ)
土星(20センティモ)
小惑星(30センティモ)
海王星(40センティモ)
金星(50センティモ)
木星(60センティモ)
天王星(75センティモ)
月(90センティモ)
冥王星(90センティモ)
水星(100センティモ=1ボリバル)
ウラニアのおもかげを追って ― 2014年09月20日 11時57分20秒
その名はウラノスと同じく「天空」に由来し、その女性名詞化ですから、文字通り「天女さま」です。
では、ウラノスとウラニアはどんな関係にあるのか?
ウラノスの息子がクロノス(大地・農耕の神。なお、「時間の神」であるクロノスは、綴りが違う別の神様)、クロノスの息子がゼウス、そしてゼウスの娘がウラニア。
…というわけで、要するにウラノスとウラニアは、曾祖父と曾孫の関係なのでした(もっとも、神々の系譜については異伝も多く、これはそのうちの一説に過ぎないそうです)。
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ウラヌスが惑星の名前になったのに対し、ウラニアは直径100キロという小惑星の名になって、火星と木星の間でくるくる公転しています。
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もちろんウラヌスもいいのですが、天女さまにも魅かれるものがあって、ウラニアのおもかげをあちこちに追ってみます。
(この項つづく)
ウラヌスの転生 ― 2014年09月18日 20時28分09秒
(1958年に出た、ブルックボンドの紅茶カード。惑星探査機が飛ぶ前なので、この頃でも、天王星や海王星の素顔はボンヤリしていました。)
天の神、ウラヌス(Uranus)。
その名はラテン語で、ローマ神話に出てくる神様です。
ローマ神話とギリシア神話は本来別物ですが、時代とともに混交し、たとえばギリシア神話のゼウスはユピテルと、ヘラはユノーと、アテナはミネルヴァと、それぞれ同格ということになっています。
ウラヌスの場合は、名前ごとギリシア神話から移入されたので、ギリシア名も「ウラノス」とほとんど同じです。したがって、その本来の語源はラテン語ではなく、ギリシア語に求めねばなりません。で、ギリシア語のウラノス(Οὐρανός, Ouranos)が、「天空」を意味するのは当然として、さらにその大元をたどるとどうか?
英語版ウィキペディア「Uranus」の項(http://en.wikipedia.org/wiki/Uranus_(mythology))を見ていて、次のような興味深い事実を知ったので、適当訳しておきます(〔 〕内は引用者註)。
「ウラノスの語源として最も蓋然性が高いのは、ギリシア祖語の基本形 *(Ϝ)ορσανός (worsanos)に由来するとするもので〔‘*’が付いている単語は、史料上確認できないものの、言語学的にその存在が推定される語〕、これは名詞*(Ϝ)ορσό-(worso-、サンスクリット語では
varsa 「雨」)の派生語である。
関係する印欧祖語の語根は *ṷers-であり(「潤す to moisten」、「滴る to drip」の意。サンスクリット語ではvarsati 「雨を降らせる to rain」)、関連語にギリシア語の「ουρόω」がある(ラテン語では「urina〔尿〕」、英語では「urine」。以下も参照。サンスクリット語「var(水)」、アヴェスター語「var(雨)」、リトアニア語・ラトヴィア語「jura(海)」、古英語「wær(海)」、古ノルド語「ver(海)」、同「ur(霧雨)」)。したがって、ウラノスの原義は「雨を降らす者(rainmaker)」または「地を肥やす者(fertilizer)」である。」
以下、ウィキでは「屹立する」「覆う」という意味の単語に語源を求める説も並記されていますが、ともかくここまで読んで、前から気になっていたウラノスと「urine」の類似が、単なる他人の空似ではなかったと知って、「おお!」と思いました。
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小学生のころ、学校から家の前まで帰ってくると、必ず玄関脇の金木犀のところで尿意を催し、そして尿は肥料になるという手前勝手な理屈で、毎日そこでおしっこをしたため、ついにその若木は枯れてしまいました。あの迷惑な少年こそ、雨を降らし、地を肥やすウラノスの化身だったのか…。彼が長ずるに及んで「天文古玩」という駄文を草しているのも、故なしとしません。
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ウラヌスは、1781年にウィリアム・ハーシェルが発見した新惑星(天王星)の名前となり、さらにこの偉業をたたえて、1789年に発見された新元素はウラン(ウラニウム)と名付けられ、その核燃料としての用途から、鉄腕アトムの妹はウランちゃんとネーミングされました。
言葉って本当に不思議だなあと思います。
金星、木星、火星のイメージを追う ― 2013年12月23日 09時06分55秒
以前、下のような絵葉書を載せました。
そのときは、女A 「あら、金星が見えるわ」、女B「 あたしの方は木星が見えるわ」、男 「おいらにゃ火星が見えるよ」 …という掛け合いの、結局何がオチになっているのか、なんで男が火星を持ち出したのかよく分からんなあ…というところで話が終わっていました。
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一昨日、その謎を解くヒントとなりそうな、こんな絵葉書を購入しました。
金星、木星、火星を擬人化して、海水浴客に見立てています。
これを見ると、当時は「金星=美女」、「火星=太った猛女タイプ」という見立てが一般的で、前の絵葉書もそれを踏まえたものか…と推測がつきます。また、そこに貧相な男(=木星)を配して、三者をセットにして何か言うというパターンも、一部で流行っていた気配があります。
このうち「金星=美女」は、Venus が美の女神であることを考えれば、ごく自然です。また、火星が猛々しいのも、Mars が軍神であり、古来凶星とされたので分かる気がします。しかし、それが「太った女性」であるのはなぜか(本来のマルスは、りりしい男神)、また天空を支配するJupiter が、なぜかくも貧相な男となってしまったのか? 実際の火星は、直径でいうと木星の約20分の1、並べばハムスターと相撲取りほど違うはずなので、両者の立場の逆転も気になります。
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謎を解くべく、こうしたマンガ的表現の類例をさらに求めて、「venus jupiter mars comic」で検索したら、こんな画像↓が出てきて、虚を突かれました。
http://www.flickr.com/photos/dtjaaaam/11098118194/
「うむ、結局どの惑星も、大なり小なり火星的であるということか…」と、つまらないところで話を落としてしまいますが、上の謎は謎として真面目に(そんなに真面目でもないですが)考えてみたいと思います。
ローエル、日本、フランス ― 2013年12月21日 10時58分18秒
パーシヴァル・ローエル(Percival Lowell、1855-1916)の名は、火星、冥王星と分かちがたく結びついています。前者は筋金入りの運河論者として、また後者はその発見プロジェクトを強力に推進した者として。
彼の死後(1930年)に発見された新天体が「Pluto」と命名され、PとLを組み合わせた惑星記号を与えられたのも、彼のイニシャルにちなむ…というのは有名な話です。
彼は良くも悪くも夢と信念に生きた天文家だったと思います。
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さらにローエルは知日家として知られ、前後5回にわたって明治の日本に滞在しました。その縁から日本には「日本ローエル協会」という団体があり、ローエルの顕彰や研究が続けられています。
彼の日本への興味は、もっぱら文化や民俗に対する関心に基づくもので、その方面の著書は、『極東の魂』、『能登 ― 人に知られぬ日本の秘境』のタイトルで邦訳が出ています。さらに、これまで邦訳がなかった主著 『Occult Japan or the Way of the Gods』(1894)も、ついに『神々への道―米国人天文学者の見た神秘の国・日本』(国書刊行会)として、今年の10月に出版され、さらに本書に宗教民俗学的解説を加えた『オカルト・ジャパン―外国人の見た明治の御嶽行者と憑依文化』(岩田書院)も時期を同じうして出るなど、没後100年を控えて、今ちょっとしたローエル・ブームの様相を呈しています。
『神々への道』を翻訳された日本ローエル協会の平岡厚氏から、同書をお送りいただき(私個人あてではなく、日本ハーシェル協会にご恵贈いただいたものです)、私もさっそく拝読しました。
この本は、神道系教団(神習教)や日蓮宗の儀式における憑依現象(神がかり状態)や変成意識状態を、参与観察をまじえて調査研究したもので、その分析の道具立ては、当時の心理学や生理学的知見ですから、いわゆる「オカルトもの」ではありません。
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ローエルのこの本を持ち出したのは、このところ記事の流れがフランスづいていたからです。…というと、いかにも唐突ですが、この『神々への道』には、フランスに対する言及がいくつかあって、そのことをふと思い出したからです。
フランスといえばドイツと並ぶヨーロッパの大国であり、海峡をはさんでイギリスと対峙する国。歴史を顧みればフランク王国の一角として、まあ「西洋そのもの」と言ってもいい国だろうと思います。
ところがローエルは、フランスを西洋世界における異端児と見なしている節があります。たとえば、彼は「日本人は極東のフランス人である」という警句を引用していますが(邦訳192頁)、これは裏返せば「フランス人は西洋の日本人である」ことを意味しており、その精神構造の特殊性をほのめかす言い方です。
その特殊性とは、(ローエルに言わせれば)被暗示性の高さであり、憑依や催眠現象への顕著な親和性です。
フランス人も似たような利他的憑依の傾向を示す。彼等が比較的容易に影響されないのであったならば、メスマー〔…〕は、ウィーンで生計を立てられないこともなく、パリで流行児となることもなかったであろう。シャルコー〔…〕とナンシー〔…〕も現代催眠術の先駆的な名前になることもなかったであろう。(同203頁)
ローエルは、このように18~19世紀のフランスで名を成した催眠術の大家の名前を挙げつつ、「極東民族と女性とフランス人の精神」は「三種の同じ精神」であるとまで言い切っています(同)。さらに彼の筆は、以下のような驚くほど強い言葉でフランスをなじる方向に滑っていきます。
如何なる集団であれ、〔…〕集団全体もまた互いに相異なっている。フランス人とアングロサクソン人とは極めて身近な例を我々に提供してくれる。〔…〕あの偉大なる独創の人イギリス人は、あの猿真似フランス人を心から軽蔑しており、彼等の制度の恐るべき過激共和主義と、彼等が初めて会う人に胸襟を開く際の、あの驚く程不快な態度の、そのいずれの方に、より唖然として立ち辣むかには、自ら知る所がない。(同189-90頁)
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ローエルがこれほどフランス人を嫌った理由は、近親憎悪的なメカニズムによるのかもしれず、実はローエルこそ「アメリカのフランス人」であったのでは…と思わなくもありません。うがった言い方をすれば、彼が火星に運河を見つづけたことは、その被暗示性の高さを示唆するものでしょうし、また一生かけて火星人の存在を追いかけた頼もしい相棒こそ、ほかならぬフランス人のカミーユ・フラマリオン(1842-1925)だったことも、単に偶然とは言い切れないような気がします。
ハーシェルの天体を見よう2012、<第2期>がはじまります ― 2012年07月01日 12時14分45秒
そのうち、今年の後半に見ごろを迎える3つの天体について、改めて特設ページが開設されました。
1. 天王星― うお座44番星との接近―(9月中旬~10月上旬 )
2. ハーシェルのガーネットスター(ケフェウス座μ星)(8 月~11月)
3. ハーシェル天体H V-1(ちょうこくしつ座 銀河 NGC253) (10月~11月)
第2期のラインナップは、地球のよき隣人・天王星と、ハーシェルが深紅のガーネットにたとえた、3500光年かなたの美しい恒星、そして750万光年という遠方に悠然と横たわる系外銀河という顔ぶれです。
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3番目のNGC253は、偉大なウィリアム・ハーシェル(1738-1822)の妹、カロライン・ハーシェル(1750-1848)が発見した天体です。
カロラインは兄ウィリアムの忠実な助手として、その研究を助けるかたわら、彼女自身も優秀な天文家として活躍し、女性に固く門戸を閉ざしていた英国王立天文学会も、さすがに彼女の功績を無視することはできず、彼女が85歳のときに「名誉会員」の称号を与えています。
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梅雨が明ければ夏も盛り。山や海で、暗い空を見上げる機会も増えることでしょう。そして涼しい風が吹いてくれば、空はいよいよ澄みわたり、星の光も静かにささやき始めます。
そうした折々に、遠近さまざまな宇宙の住人の姿を眺め、宇宙の大きさや、天文学の歩みを、改めて実感されてはいかがでしょうか。そして、その成果や感想を、日本ハーシェル協会の掲示板にお書き込みいただければ、協会員として嬉しく思います。
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