奇怪なる日本趣味2012年03月14日 22時51分32秒

あまりにも変なので買ってしまった、19世紀末のリービッヒ・カード(※)。
物見遊山に出かけた女性たちが、富士山を望遠鏡で覗いている光景…のようです。
シチュエーションもなんだか変だし、服装も変ですが、そもそもなぜ角隠し?

(※)リービッヒ・カードについては、下記を参照。
  http://mononoke.asablo.jp/blog/2009/08/15/4515029

紙の星2012年02月14日 21時56分51秒

今日は大事な2月14日ですから、生々しい剥製の話題は先送りして、「L’Astronomié天文学」と題された、可愛らしい19世紀のクロモカードを載せます。(詞書きを見ると、パリの「アンリ商店」という洗濯屋さんが作ったもののようです。)

とんがり帽子の少年天文家と青いドレスの少女。


この少年は心から女の子に星を見せてあげたかったのでしょう。それもとびきり素晴らしい星を。でも、結局彼は紙の星を見せることしかできなかった。

少女は感極まった様子で望遠鏡をじっと覗きこんでいます。でも、彼女だって本当はそれが紙の星に過ぎないことを知っているのだと思います。


男女の間に限らず、親子でも、きょうだいでも、友人同士でも、こういう切ない光景は、いろいろなところで見られます。

悲しい嘘、優しい嘘、尊い嘘、どうしようもない嘘。
嘘にもいろいろな色がありますね。
その色は見る角度によっても変わるかもしれません。

そして、嘘の中にもまことがある…
齢を重ねると、だんだんそうしたことも分かってくる気がします。

ひとひらの雪2012年02月03日 21時11分41秒

雪、雪、雪。
白く、音のない世界。
昨日の朝は辺りがしんとして、その静けさに驚いて目が覚めました。


写真は、国際雪氷学会創立50周年を記念して、1986年に発行された英領南極(→ http://mononoke.asablo.jp/blog/2011/08/17/6053317)の切手。

薄く小さな画面にかっちり収まった雪の結晶が、美しく、愛らしく感じられます。

寒い時節に南極の切手とは、またえらく寒々しいですが、考えてみれば南極は今、夏。
昭和基地の気温は、この時期マイナス5度~プラス2度ぐらいだそうです。
寒いといえばやっぱり寒いですが、それでもつかの間の夏を彩る苔や地衣類が、精いっぱい鮮やかな緑を見せていることでしょう。

2011 足穂忌2011年10月25日 07時17分11秒

今日は稲垣足穂(1900-1977)の命日。
京都ヴンダー散歩の連載は1回お休みして、故人を偲ぶ一日とします。

「天文古玩」では、この日、彼にちなむ品を仏前に供えるのが例ですが、今年はまた至極好適な品を見つけました。
↓は1870年代の古いシガーラベル、すなわち箱詰め葉巻に貼られた商標ラベルです。
アメリカ製のリトグラフで、サイズは約15×23cm。


タルホ氏も今年で111歳の川寿(せんじゅ)を迎えられます。
そろそろシガレットばかりでなく、三日月相手にシガーでも嗜んでいただいてはいかがかと、僭越ながら思いました。

(自らに焼香。あるいはシガーで乾杯。)

それにしても何とニクイ絵柄ではありませんか。

【おまけ/10月26日記】
上の絵から連想する足穂作品は、「月とシガレット」(『一千一秒物語』 所収)

ある晩 ムーヴィから帰りに石を投げた
その石が 煙突の上で唄をうたっていたお月様に当たった お月様の端がかけてしまった お月様は赤くなって怒った
「さあ元にかえせ!」
「どうもすみません」
「すまないよ」
「後生ですから」
「いや元にかえせ」
お月様は許しそうになかった けれどもとうとう巻タバコ一本でかんにんして貰った

上の絵ではご両人とも、妙に和気あいあいとしています。
まあ、折れた巻タバコよりは、「葉巻をどうぞ…」とやった方が、相手も悪い気はしないでしょう(たぶん)。

南氷洋に潜行せよ2011年08月17日 20時30分00秒

ことのほか暑いので、今日もふたたび南極に向かいます。


写真は、1984年に英領南極(BAT;British Antarctic Territory)が発行した、南氷洋の生物シリーズ。


寒冷な海の中にも、豊かな生物相と生態系が存在することを教えてくれる切手です。


細密な生物画と、クールな色合いが、涼やかなムードでいいですね。



奇怪な生物たちの協演。
氷の海で永く静かに続くハーモニー。

   ★

ところで、英領南極とはそもそも何ぞや?

南極大陸は、南極条約(1959)の締結によって、いかなる国の領土でもないと決まったのではなかったっけ…と思って、改めて聞いてみると、イギリスやフランス、オーストラリアなど、以前から領有権を主張していた国々は、南極条約によって自国の主張を「放棄」したわけではなく、その主張を「凍結」しているに過ぎないのだそうです。

■南極における領有権主張の一覧:ウィキペディア
  http://tinyurl.com/yfj2cyk (URLが長いので短縮しました)

何だか分かったような、分からないような話ですが、そんなわけで、今でもせっせと独自の切手を発行したりして、自国の領土たることアピールしているのでしょう。

そんなことを考えると、この切手もあまり涼しげとは思えなくなってきますが、彼ら生物の営みは、その姿かたちの不思議な美しさとともに、人間の都合などお構いなく、これからも続くことでしょう。いや、ぜひ続いてほしいです。

暑い!!!2011年08月10日 22時14分00秒


白クマもイラついています。

本気で怒ってますよ。

フランスのポピュラーサイエンス誌『フランスの科学 La Science Française』(1892年11月24日号)より。

― 残暑お見舞い申し上げます。―

幻想天文台2011年05月18日 20時12分50秒

世界の果てには門があり、その門は常に閉ざされている。
その先には不思議な塔がそびえ立ち、人々は「天文台」と呼び習わしていた。
その役割は誰も知らない。
しかし、かつてその頂きから雲に乗り、天界に向う異形の姿を見た者がいるという。

  ★

版面サイズ14.5×8cmの小さな版画(たぶん本の挿絵)。1830年制作。
なんとなくシュールな空気をまとった絵です。

描かれているのは、コペンハーゲン天文台。
望遠鏡とドームを備えた施設としては世界最古の天文台で、1637年に建設されました。

星からの手紙2011年05月03日 16時09分05秒

黄砂が飛び、はっきりしない空を見ながら、家でくすぶっています。
今日は「天文古玩・再考」はお休みです。

   ★

ドヨンとした心を破る、星心を同じくする人から届いた、星尽くしの便り。
消印は「有人宇宙飛行50年記念★宇宙切手展」とな!
うーん、心にくいですね。。。

   ★

考えてみれば、星を見上げる人はプロもアマチュアも、みんな星からの手紙を毎日熱心に読み解いているようなものですね。

とりあえず“Letters from Stars”で検索したら出てきた動画を、勢いで埋め込んでみます。(内容は関係があるような、ないような…。)

■ LETTERS FROM STARS ■

"Letters From Stars" Slideshow: Roman’s trip from キエフ, ウクライナ to was created by TripAdvisor. See another ウクライナ slideshow. Create your own stunning slideshow with our free photo slideshow maker.

かつて人々は肉眼と脳髄だけを武器に宇宙の構造に挑んだ2011年04月18日 21時13分27秒

桜も散りはて、今日は雨。
柔らかい雨だれの音がずっと聞こえています。

   ★

前の記事で、「コペルニクスの太陽中心モデル」と「ティコ・ブラーエの地球中心モデル」というのが出てきました。単純に「地動説」と「天動説」と言っても同じことですが、天動説には、いろいろなヴァリエーションがあるので、こういう細かい言い分けが必要になるわけです。

↓は1719年にパリで出た地図帳(Jacques Chiquet, Le Nouveau et Curieux Atlas Geographique et Historique)から取った一葉。アーミラリー・スフィアを中心に、宇宙体系をめぐる諸説が図示されています。

まずは、おなじみのコペルニクスの体系。

そして、ティコ・ブラーエの体系。

こちらは天動説の「本家」、プトレマイオスの体系です。

ゴチャゴチャして分かりにくいので、さらにアップ。

中心には土と水からなる地球があり、周囲を空気と火が取り巻いています。その上には月天(月の巡る世界)、水星天、金星天…が重なり、最後は恒星天、原動天を経て、至高天にいたります。『神曲・天国篇』で、主人公が辿るのはこの道です(と言っても、読んだことはありませんが)。

さらにもう1つ、「複合体系(System Composé)」というのが出てきます。

5世紀の学者、Martianus Capella によるモデルで、これも天動説のヴァリエーションの1つ。「プトレマイオスとティコの折衷」という意味で「複合体系」と呼ぶのでしょうが、もちろん歴史的には、ティコよりもはるかに先行するものです。
太陽を中心に水星と金星が回る、このカペラの説を、コペルニクスも大いに賞賛したとか。

望遠鏡が発明される以前、天文学者たちは知性と想像力の翼に乗って、「神のみが眺めうる世界」に近づこうとしました。これらの体系図は、その紙碑と言えるかもしれません。

   ★

この銅版画が刷られたのは1719年。
このブログに登場するのは、19世紀以降のものが多く、18世紀の品はややアウェイ気味ですが、でもこういうのを本来の天文骨董というのかもしれません。
そんなことを踏まえながら、「天文古玩・再考編」に入る予定。。。

星の煙をくゆらせる晩 (前編)2011年01月15日 12時29分31秒

各地で雪ですね。がんばれ受験生!

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いつものL’s Bar(エルズバー)のカウンターで、私はクシー君の前にカラフルな箱を並べて見せました。 「キミだったら、イギリスのSTARもお気に召すかと思って。」

クシー君は、奇妙なダブルクロスの星印に目をやると、「へえ、どれどれ」と言いながら、早速ぷかぷかやり始めました。

「うん、なかなかいいよ。特にこのネイビーパケットがね。ふーん、同じSTARでもこっちはインド製か。どうりで魔法の味がすると思った。」

クシー君は急にいたずらっぽい表情になってこちらを見ました。
「でも、この煙草。どうも初めてのような気がしないな。だって…」
クシー君はカウンターの向こうに置かれた赤い箱を取り上げて、私の前に置きました。