世は麻の如し2017年02月04日 09時33分01秒

前回の記事の末尾で書いたように、最近は戦争のような日々を送っていますが、報道に接すると、本当に戦争でも起きかねない世のありさまです。

世界は本当にどうなってしまうのか?
どなたかが、「森を育てるのは大変だが、壊すのは一瞬だ」と呟いてらっしゃるのを見て、本当にそうだなと、深く頷きました。

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ルービックキューブのふるさと、ハンガリー生まれの「地球儀ルービック」。
冷戦期、1980年代の品と聞きました。

面白半分でガチャガチャ回しているうちに、完全に復元できなくなってしまいましたが、今の世界も高所から見れば、こんな状況かもしれません。


この国も、果たしてどこに向かおうとしているのか。


ルービックキューブを解くコツは、各面の中央にある不動の「センターキューブ」に注目することだそうで、この地球儀キューブでは、北極や南極がそれに当たります。

「混迷せるときは、まず不動のものに目を向けよ」とか言うと、妙に説教臭くなりますが、まあ、ご高説を垂れるのはパズルを解いてからにしてくれ給え…と言われるのが、この場合オチでしょう。

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一国の宰相を、いやらしいほどアメリカにすり寄らせる。
国民の間に、微妙な空気が流れたところで、彼の最側近が、突如公然と叛旗をひるがえす。それに呼応して、クリーンなイメージの若手が弁舌爽やかに登場し、新たな御輿に担がれ、アメリカ従属脱却と日本再軍備を高らかに宣言し、大喝采を浴びる…。

最近の動きを見ていると、そんな裏シナリオもありはせぬかと、ちょっと疑念に駆られます。

(記事の方は引き続き間欠的に続きます)

小さな星図に思うこと2016年12月13日 21時20分01秒

昨日は吐く息が白かったです。
そして今日は一日冷たい雨。

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「星座早見盤」の意味で「planisphere」を使うのは、ごく一般的な用法ですが、この語で画像検索すると、普通の世界地図もたくさん出てきます。


この語の大元は、ラテン語の「planisphaerium」で、英語圏では「planisperie」の形で14世紀の文献に初登場…というようなことが、ネット辞書を見ると書いてあります。

いずれにしても、「planisphere」は、「plani=plane(平面)」と「sphere(球)」を組み合わせた語ですから、地球にしろ、天球にしろ、球体を平面に投影した図であれば、なんでもプラニスフィアと呼ばれる資格があるわけです。

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ときに、私が持っている中で最も他愛ない星図がこれ。


2×2サイズのレゴタイルです。
これもまあ「planisphere」と言って言えないことはないのでしょう。

(描かれているのは、こぐまとカシオペヤ、それにケフェウス?)

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レゴの世界に星図があることの意味を、さっきまで風呂の中で考えていました。
そして悟ったのは、星図があるからには、レゴの世界には星があり、夜があるに違いないということです。

レゴ人は、恐らく自分たちの宇宙が、レゴという基本単位からできていることを理解しているでしょう。そして、遠方の恒星もレゴの組合せから出来ていることや、そこから大量の光が生まれるメカニズムを、その進化の過程のどこかで解明しているはずです。そうしたメカニズムの存在は、我々の宇宙とレゴ宇宙との物理的な性質の違いを示唆するものです。

一方、レゴの世界にも夜があるという事実は、レゴ宇宙が我々の宇宙と同じく「膨張宇宙」であるに違いない…と、「オルバースのパラドックス」について見聞きした人なら想像するのではないでしょうか。

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忙中閑あり。
暇とは自ら能動的に作り出すものです。

月星合戦2016年11月19日 10時31分42秒

『武州治乱記』、文明十年(1478)八月の条は、古河公方配下の成田顕泰が、扇谷上杉家配下の忍胤継と、当時混乱を極めた関東の覇権をめぐって、大利根の原野で激突した「星川合戦」について記しています。(その覇者・成田氏は、この地に堅固な忍城を築き、その裔・成田長親をモデルにしたのが、あの小説『のぼうの城』。)

ときに、この「星川合戦」の「星川」というのは、すなわち今の「忍川」のことで、「忍(おし)」という姓も、元来は「星」から転じたものです。星氏は千葉氏の流れを汲む氏族ですから、千葉氏一門の習いとして、その紋所は「星紋」でした(星氏ならびに忍氏が用いたのは、主に七曜紋)。

対する成田氏は、「月紋」(月に三つ引両)を用い、月と星の旗指物が一面に入り乱れた「星川合戦」は、別名「月星合戦」とも称され、血なまぐさい中にも、美々しい合戦の状景を今に彷彿とさせます(その様は、行田市郷土博物館が所蔵する「星川合戦図絵巻」に生きいきと描かれています)。

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…というのは、たった今思いつきで書いた、純然たるフィクションです。
そもそも『武州治乱記』などという本は存在しません。

なぜそんな埒もないことをしたかといえば、ひとえに「月星合戦」という言葉を使いたかったからです。実際にそういう合戦があればよかったのですが、なかったので、今作りました。

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さて、これが今日の主役。本当の「月星合戦」の主戦場です。

(ボードの大きさは約20cm角)

「ティク・タク・トゥ」、日本でいう「まるばつゲーム」。
この盤上で、黄色い月と青い星が死力を尽くした大一番(と言うほどでもありませんが)を演じるのです。

売ってくれたのは、アンティークショップというよりも、単なるリサイクルショップで、これもわりと新しい品のように見えますが、でも、これで遊んだ子供たちも、今ではいい大人でしょう。


メーカー名の記載は特にありません。おそらくは売り手の住む、米バーモント州の地元で作られた木工品じゃないでしょうか。ボードは合板ではなく一枚板なので、結構重いです。


戦国絵巻もいいですが、月と星の合戦に流血は似合いません。
ときどき涼しい火花がパチッと飛ぶぐらいが、ちょうど良いです。


【閑語】

安倍晋三氏は、ひょっとして先祖の長州人の血が騒ぎ、かの人物と刺し違える覚悟でニューヨークに向かったのかな…と思ったら、どうもそんなことはなくて、ゴルフクラブをプレゼントして、ニコニコ握手するだけで終わったようでした。
「ふたりはゴルフが好きなんだな」ということは得心できましたが、他のことは皆目わからず、煙に巻かれた思いです。

天文トランプ初期の佳品: ハルスデルファーの星座トランプ(補遺)2016年11月04日 06時46分01秒

今日はオマケの話題。
ハルスデルファーの星座トランプが売られているのを見つけました。
といっても、それは4年前のサザビーズのオークションに登場したもので、現物はすでにどこかの誰かの元に旅立っています。


サザビーズの説明では刊年が1674年となっており、マクリーン氏の本では1656年でしたから、両方正しいとすれば、このトランプは、少なくとも20年近く版を重ねたことになります。(以下、それぞれ「マクリーン本」、「サザビーズ本」と呼ぶことにします。)

サザビーズ本は無彩色なので、パッと見の印象はずいぶん違いますが、画像をズームして仔細に比べると、マクリーン本と寸分たがわぬことが分かります。(サザビーズ本には、星名を表すギリシャ文字がありますが、これは後からペンで書き足したものでしょう。)

サザビーズ本が、マクリーン本と明らかに違うのは、星座絵の上部のスート部分を欠くことですが、サザビーズ本のふたご座のカードの上部には、木の葉のスートの葉柄や、髭文字の痕跡が見られるので、もともとスート絵は確かに存在し、それを誰かが切り取ったことが明らかです。

(マクリーン本(部分))

(サザビーズ本(同)。矢印がスートの痕跡)

その真意は不明ですが、その誰かは、これを遊び道具のトランプではない、純粋な「星座カード」として手元に置きたかったのではないでしょうか。そして、詳細に星名を書き加えたのも彼の仕業であり、彼は高価なバイエルの星図帖は買えないけれど、星座トランプなら何とか買える…という、昔の貧しい星好きだったと空想すると、心に温かいものが通います。

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しかし、この星座トランプ。
販売当時は安かったかもしれませんが、今では相当なことになっていて、サザビーズによる評価額は1万~1万5千ポンド。ポンド安の今でも126万~190万円に相当します。実際の落札額は不明ですが、価格だけ見れば、今や本家・バイエルの星図帖に迫る勢いです。

参考として、サザビーズによる解説を一部引用。

 「極めてまれな17世紀の天文トランプの完全セット。〔…〕他にセットで存在するのは、1991年に、ドイツ・トランプ博物館(Deutsches Spielkarten-Museum)で展示された、シルヴィア・マン・コレクション中のセットが唯一(ただし表題カードを欠く)。ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館には、1枚だけ所蔵されている。」

トランプは、豪華な星図帖のように恭しくしまい込まれるものでもないので、後代に伝わりにくく、後になってみればすこぶる貴重な存在です。(我が家のエフェメラだって、いつかは…と、ひそかに思わなくもないですが、まあ価値が出るのは、さらに300年ぐらい後のことでしょう。)


天文トランプ初期の佳品: ハルスデルファーの星座トランプ(3)2016年11月03日 06時08分03秒

昨日の記事を読み返したら、「ハルスデルファー」という人名を、自分は途中から「ハデルスファー」と書いているのに気づき、修正しました。こういうことが最近多くて、話し言葉だけでなく、書き言葉でも「ロレツが回らない」状態というのはあるのだなあ…と、身の衰えを感じます。最近は「てにをは」も一寸おかしいです。

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さて、ぼやきはこれぐらいにして、昨日のつづき。

(左:へびつかい座、右:オリオン座)

これもバイエルの図そのままです。

余談ですが、これを見てバイエル星図の不思議さを悟りました。
バイエル星図は地球視点――いわゆる geocentric orientation ――で、星の配列は地上から空を見上げたとおりの形に描かれています(つまり、天球儀上の星座のように、左右が反転していません)。

それなのに、星座絵の方は、天球儀と同じく背中向きに描かれています。結果として、天界の住人は左利きが優勢になって、オリオンもヘルクレスも左手に棍棒を持ち、ペルセウスは左手で剣を構えるという、ちょっと不自然な絵柄になっています。

天球儀を見慣れた目には、背中向きの方が星座絵らしい…と感じたせいかもしれませんが、常にお尻を向けられている地上の人間にとっては、微妙な絵柄。(でも、ふたご座、おとめ座、カシオペヤ、アンドロメダは、ちゃんと正面向きです。一方、むくつけき男性陣は後ろ向き。そこには或る意図が働いているようです。)

(左:ぎょしゃ座、右:くじら座)

昨日も述べたとおり、この美しい彩色は、オリジナルのトランプにはなく、復刻版の著者であるマクリーン氏が、自ら施したものです。ただし、版画に手彩色することは、昔から広く行われたので、オリジナル出版当時も、彩色した例はきっとあるでしょう。


本の最後に登場するのは「ドングリの10」。
羽の生えた奇怪な魚が描かれていますが、これは「とびうお座(Volans)」です。
その脇を泳ぐ、これまた変な魚は「かじき座(Dorado)」。

トビウオの方は、変は変なりに言いたいことは分かります。
むしろ「かじき座」の方が、昔から今に至るまで正体のはっきりしない星座で、文字通りカジキを指すとも、本当は全然別のシイラを指すとも言われます(mahi-mahiはハワイの現地語でシイラのこと)。南海に住む巨魚は、ほとんど区別のつけようがなかった時代ですから、それも止むを得ません。むしろ、この星座絵に漂う奇怪さこそ、南の空と海に対する、当時のヨーロッパ人の<異界感>そのものなのでしょう。

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一組の星座トランプも、仔細に見れば、そこにはいろいろな発見があり、大げさに言えば「時代相」を読み取れる気がします。

天文トランプ初期の佳品: ハルスデルファーの星座トランプ(2)2016年11月02日 07時03分53秒

昨日の文章はちょっと舌足らずだったので補足しておきます。
マクリーン氏の『The Astronomical Card Game』という本は、書名からすると、何となく天文トランプ総説のような感じですが、実際には1656年に出たハルスデルファーの星座トランプを、その絵柄とともにひたすら紹介している本です。


上は冒頭に登場する、おひつじ座を描いた、「木の葉のキング」。

ドイツでも、今や英米式のトランプが一般的だと思いますが、本来は「ダイヤ・ハート・クラブ・スペード」の代りに、「鈴・ハート・木の葉・ドングリ」のスートを用いるのがドイツ式。数字の方は、英米式と同じく各スート13枚から成り、このハルスデルファーのトランプも、都合52枚のカードから構成されています。

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ハルスデルファーのトランプの絵柄は、ドイツのヨハン・バイエル『ウラノメトリア』(1603年)の図を踏襲し、それを簡略化したものです。
サンプルとして、「はくちょう座」の図で比較してみます(参考としてモクソンの図も挙げておきます)。

(バイエルの『ウラノメトリア』)

(ハルスデルファーの星座トランプ)

(モクソンの星座トランプ)

並べてみると、モクソンのトランプは、20年前のハルスデルファーのそれよりも、むしろ古拙な感じを受けます。

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17世紀は、銅版による挿絵印刷技術の進歩を受けて、それまで「星表」という、単なる数字の羅列として記録されてきた恒星の位置データが、正確な星図として表現されるようになった時代です。

中でも、バイエルの『ウラノメトリア』は、後続のヘヴェリウス『ソビエスキの蒼穹―ウラノグラフィア』(1687)や、フラムスティード『天球図譜』(1729)、そしてボーデの『ウラノグラフィア』(1801)と並ぶ、<四大星図>の一角を占め、その嚆矢となった金字塔(※)。

(※)四大星図については、以下を参照。
  ■四天王の共通点 http://mononoke.asablo.jp/blog/2014/11/09/

こうした精緻な星図隆盛の余波が、17世紀中葉以降トランプ界にも及び、星座トランプという新趣向を生み出した…ということなのでしょう。

ついでなので、他にもいくつか内容をサンプルとして挙げておきます。

(この項つづく)

天文トランプ初期の佳品: ハルスデルファーの星座トランプ(1)2016年11月01日 07時15分07秒

一昨日の記事で引用した Darin Hayton 氏によれば、17世紀後半、モクソン以外に天文学・地理学に関するトランプを作った人として、地理学者のJohn Adler と数学者のThomas Tuttelの名が挙がっていました。

イギリスで、モクソンが星座トランプを出したのは1676年前後のことですが、その20年前、ドイツでも星座をデザインしたトランプが出ていたことは、わりとマイナーな事柄と思いますので、書いておきます。

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原著者は、ニュルンベルグの法律家・文筆家である、ゲオルグ・フィリップ・ハルスデルファー(Georg Philipp Harsdörfer、1607-1658。そのトランプの表題は、当時の常で以下のように長いものです。

 『Das Astronomische Kartenspiel: Das ist Kunstrichtige Abbidung aller Gestirne am Himmel / oder und unter der Erden: Zu Behuf der lehrgierigen Jugend / Gleich dem Geographischen und Historischen Spielkarten verfasset.』 (天文カードゲーム。即ち天上ならびに地平線下のすべての星に関する芸術的かつ正確な描写。地理学・歴史学のトランプと同様、これを好学の若者に捧ぐ。)

最後の一句は、トランプの教具化に関しては、地理学や歴史学が先行しており、天文学関係のものは、当時新機軸だったことをうかがわせます。

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ハルスデルファーの星座トランプのことは、以下の本で知りました。


Adam McLean(編・彩色)、Paul Ferguson(訳)
 The Astronomical Card Game
 私家版、2011

これは、イギリスのアダム・マクリーンという人が私家版で出した、ちょっと変わった本です。マクリーン氏は、天文学の専門家でも、トランプの専門家でもなくて、錬金術やヘルメス学の研究者であり、これまであまり知られていない古い文献を「アートブックシリーズ」と銘打って、小部数(各50部)出す試みを続けており、上の本はその6冊目に当たります。

出版にあたって、氏は自らの美意識で彩色も手掛け、上に「編・彩色」と記したのは、そういうわけです。(なお、ファーガソン氏による「訳」というのは、オリジナルのトランプ1枚1枚に書かれたドイツ語の説明文を、英訳したものを指し、本書各ページ下部に書かれたテキストがそれに当たります。)

さて、前置きはこれぐらいにして、その中身を見にいきます。

(この項つづく)

天文トランプ事始め2016年10月30日 11時13分58秒

先日のデ・ラ・ルーの話題から、天文モチーフのトランプのことに意識が向き、「そういえば、アレはどうなったかな」と思い出したことがあります。

それは2007年の記事↓で、その時の自分は、天文学史のメーリングリストで小耳にはさんだ情報を引用して、次のように書いています。


 「イギリスの天文学者、ジョセフ・モクソン(Joseph Moxon、1627-1691)が、1676年に星座をテーマにしたトランプを出版しており、その解説用ブックレットがオンラインで読めますよ…という話。〔…〕一瞬、そのトランプ自体を見られるのだと早とちりして、「お!」と思ったのですが、よく見たら、載っているのは字ばかりの解説書だけということで、一寸がっかり。投稿者も、トランプ本体に関する情報をぜひ、と呼びかけていましたが、これは何としても見たいですね。」

この17世紀のモクソンの星座トランプ。
さて、その後どうなったろう?と思って探したら、既に上記の願望はネット上で実現していることを発見。すなわち、アメリカのボストン大学バーンズ図書館が flickr に問題のトランプの現物をアップしていました。

紹介されているのは、全52枚中44枚の不完全なセットですが、イギリスの詩人、アルフレッド・ノイズ(Alfred Noyes、1880-1958)旧蔵の由来を持ち、没後に他の手紙や手稿類とともに、一括して同図書館が入手したものらしいです。


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さらに、モクソンのトランプについて検索すると、ハーバードのDarin Hayton という人が書いた「科学を面白くする―ジョセフ・モクソンの天文トランプ」という記事が上位に表示されます。

■Making Science Fun: Joseph Moxon’s Astronomical Playing Cards

モクソンのトランプの時代背景が分かると思うので、その冒頭部分を適当訳してみます。

 「科学を学ぶよう学生たちを仕向けることは、幾世紀にもわたって、教育者たちの関心の的だった。15~6世紀における英国の大学教授たちは、『Ludus astronomorum(天文ゲーム)』というボードゲームによって、占星術の基本原理を教えた。このゲームは少なくとも1571年、William Fulkeが『Ouranomachia』を出版した時点においても版を重ねていた。

17世紀後半においても、啓蒙家や教育者たちは、なおも天文学を教えるためのより効果的な方法を編み出そうとしていた。

ジョセフ・モクソンもそんな啓蒙家の一人だった。彼がそれまで手掛けた仕事は、通俗的な科学書を著すこと、地球儀・天球儀やその他の紙製機器を製作すること、それに科学の教科書を印刷することなどだった。

1661年(ないし62年)の1月10日、彼は王室水路図作成官(ロイヤル・ハイドログラファー)として採用してもらうよう、国王チャールズ2世に請願する機会を得た。彼の請願は、グレシャムカレッジや、誕生間もない王立協会に関わる多くの人々、例えばL. Rooke、Walter Pope、Elias Ashmoreなどによって支持された。1678年、彼は王立協会員に選出され、これは商人が同協会員に選ばれた最初の例となった。

モクソンは、トランプが天文学と地理学を教えるのに有用だと考えた。もっとも、彼がその種のトランプを発行した唯一の人間というわけではない。地理学者のJohn Adler と数学者のThomas Tuttel の二人も同様にトランプを作っている。
モクソンは3種類の異なるトランプセットを作った。

○天文トランプ(Astronomical Playing Cards)…価格6ペンス
○天文カード(Astronomical Cards)…線画版1シリング、彩色金彩版5シリング
○地理学トランプ(Geographical Playing Cards)…価格同上

 〔以下略〕」

当時の通貨価値はよく分かりませんが、いちばん安い6ペンスの「天文トランプ」が仮に2000円とすれば、「天文カード」の線画版は4000円、その豪華彩色版は2万円になります。(こういうのは物価ベースで比較するのと、労働者の賃金ベースで比較するのとで、ずいぶん結果が違ってきますが、上の計算は当たらずといえど、遠からずでしょう。なお、モクソンその人は、以前書いたような、純粋な天文学者とは言い難い経歴の人のようです。)

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ともあれ、天文モチーフのトランプやゲームというのは、ずいぶん古くからあったことが分かります。遊具と教具の中間にある、こうした愛すべき品々が、天文古玩的にはとても気になるところで、なかなか天文趣味史を極めるのは遠い道のりと感じますが、それだけ愉しみも多いわけです。

デ・ラ・ルーとその時代(3)2016年10月23日 09時29分17秒

デ・ラ・ルー社のトランプに関連して、こんなモノを見かけました。

(写真を撮るときに表裏を間違えたので、左右を反転して掲載)

同社のトランプを写した1910年頃の幻灯スライド。


1860年代のカードと比べると、スペードの切れ込みが深く、またスートの他に数字が印刷されるようになったことが分かります。さらにカードの角が丸くなって、この半世紀の間に、トランプがさらに“現代化”したことが窺えます。

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それにしても、このスライド画面に漂う、不可解な感じは何でしょう?

当時の幻灯スライドは、娯楽目的で異国の風景を映したり、教育用に何かの説明図を映したりするのが通例だったと思いますが、果たしてこのスライドの制作意図は?
スペードの1、2、3、4、5…そこに何か意味があるのでしょうか?

モノクロの「虚の空間」に浮かぶトランプの表情は、モノがトランプだけにいかにも謎めいています。そして、どこかにトリックが潜んでいるような、不穏なものを感じます。

デ・ラ・ルーとその時代(2)2016年10月22日 07時47分29秒

トランプが気になる…というのは、以前も書いたとおりで(http://mononoke.asablo.jp/blog/2016/05/10/)、私は昔からトランプに対して、いくぶん強迫的な嗜好があります。

(北原白秋の『思ひ出』も、トランプ憧憬に一寸影響しています)

そのせいで、天文モチーフのトランプやカードゲームを手にすることも多いのですが、それは気合を入れて別項目で紹介することにして、ここではデ・ラ・ルー社のトランプの話題です。

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このトランプを買ったのは、10年近く前のことです。
古いトランプが欲しいと思って、最初に見つけたのがこのトランプでした。


このバラのデザインは、少々乙女チック過ぎる気もしますが、英国人にとってのバラは、日本人にとっての桜にも等しい、深い精神性を帯びた存在らしいので、これはいかにもイギリス的なデザインです。

(スペードのエースには、薔薇戦争で名高い「チューダー・ローズ」の意匠)

(各スート(マーク)の形が丸っこいのが昔風)

絵札のデザインや、角がスクエアな形状から、1860年代のものと推定されるデ・ラ・ルー社のトランプ。売り手はさらに「1865年」という特定の年次を挙げていて、その根拠は聞き洩らしましたが、1865年といえば、ちょうど『不思議の国のアリス』が刊行された年です。このトランプは、あの世界に登場してもおかしくない存在だ…というのも、買う気をそそられた点でした。

(ハートの女王と4人の王様)

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1830年代に始まるデ・ラ・ルー社のトランプの歴史については、以下のページにやや詳しい解説があります。

THOMAS DE LA RUE: a brief history of De la Rue’s playing-cards
 http://www.wopc.co.uk/delarue/index

それまでの素朴な木版・ステンシル彩色のトランプ製造の世界に、機械印刷方式を持ち込み、スッキリと洗練されたカードデザインを考案したのがデ・ラ・ルー社で、前代の妙にいびつなトランプも、それはそれで魅力的ですが、トランプにいかにも謎めいた人工性が宿ったのは、何といっても同社の手柄です。

そして、この印刷術の技術革新の波の中で、トーマスの息子である二代目のウォレンは、写真術と天文学への嗜好を育み、アマチュア天文家として一家を成したのでした。

(この項つづく)


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■閑語(ブログ内ブログ)

アメリカの基地を守り、同じ日本人を見下す者が「レイシスト」と呼ばれる奇妙な現実を見るにつけて、右翼は死んだなあ…と、つくづく思います(そもそも、「彼ら」は右翼ではないどころか、本来レイシストと呼ばれる価値もないはずです)。

私がイメージするのは、戦前の右翼の巨魁である、頭山満(とうやまみつる)や、杉山茂丸(夢野久作の父といったほうが通りがいいかもしれません)なんかで、別にその思想に共鳴するわけではないのですが、いずれもスケールの大きい人物だったことは認めます。そして、そのスケール感は、沖縄で露呈した「彼ら」の狭量さと鮮明なコントラストを見せています。

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アジアの革命家たちとネットワークを築き、アジア解放(欧米列強からの)を夢見た「大アジア主義者」たち。少なくとも、彼らの視線の先には、今回の「土人」や「シナ」といった愚昧な差別意識(それは根拠のない優越意識と表裏しています)はなかったでしょう。

戦前の右翼は、たしかに「反共」ではあったと思います。でも、頭山満はいわゆる「主義者」とも普通に付き合っていましたし、今のネトウヨと呼ばれる人々の「嫌中」は、「嫌韓」と抱き合わせになっていることから明らかなように、別に反共といった思想的背景はなく、単なる感情的反発にすぎません。(それに現在の中国は、「全体主義国家」ではあっても、社会の成り立ちは、日本よりいっそう資本主義的です。そもそも共産主義国家に株式市場があるのは変です。)

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日本の政権中枢にとって、沖縄という弧状列島は捨て駒でしかありません。
それは、アメリカの政権中枢にとって、日本という弧状列島が捨て駒でしかないのと全く同じことです。沖縄はいわば日本の縮図であり、残酷な戯画です。

そんなことは、今さら私が言うまでもないことですが、そのことが「彼ら」の脳裏にどんな像を結んでいるのか。「彼ら」の発言は不愉快にしても、その点はちょっと興味があります。

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そして、宮内庁長官の首をこれ見よがしにすげ替えて、露骨に天皇に圧力をかける現政権に対して、「一大不敬事件なり!!!」と、右翼が騒ぎ立てないのも不思議な話で、やっぱりこれは右翼そのものが死んだ証拠なのでしょう。