掛図師のこと2015年06月02日 20時13分32秒

(昨日のつづき)

フィリップス社の掛図で気になるのは、あれは本当に掛図なのか?ということです。いや、もちろん掛図なんですが、当初から掛図として販売されていたのかどうか?
…というのは、あの星図と同じものが、もう1つ手元にあるんですが、見た目がまったく違うんですね。


そちらは、紙表紙を付けた折り図式のものです。


1940年の版権表示も含め、ご覧の通り中身は全く同じ。サイズも同一です。
掛図の方は、星図部分の地色がいくぶん緑がかって見えますが、それは表面にニスが引いてあるせいでしょう。

で、結論から言うと、これは折り図が本来の出版形態で、掛図はそれを購入した人が二次的に加工したものではないか…と推測しています。

(下部をめくり上げたところ)

この掛図は、紙の図をキャンバス地で裏打ちし、木製の軸を打ち付けてあるのですが、イギリス(や他国)には、ちょうど日本の表具師のような、専門の裏打ち職人がいるんじゃないでしょうか。その辺の事情にうといのですが、古い大判の地図にも、布地で裏打ちを施したものが折々あって、あれもそういう職人に個別に頼んだものだと思います。(絵画修復師とか、装幀師とかが、裏打ち商売を兼ねているのかもしれません。)

コメント

_ S.U ― 2015年06月03日 19時42分11秒

>表具師
 「西洋流表具師」ですか、聞きませんねぇ(笑)。日本では、民間でもけっこう襖絵、屏風、掛軸の製作や修理の需要があるので、表具師が成り立ちますが、西洋ではそんな重要はないのではないでしょうか。

 「絵画修復師」ならそこそこ需要があるかもしれませんね。キャンバスに紙を貼るのは得意そうです。また、「額装師」という仕事もありますね。

_ 玉青 ― 2015年06月03日 20時53分11秒

いやいや、どうしてどうして、改めて「linen backing price」で検索したら、ゾロゾロそういう業者が出てきました。今だと、主に商業ポスターの保存・展示用にそういう需要があるようです。昨日今日の商売とも思えないので、たぶん昔はそういう技術が、地図や大判の刷り物に応用されていたんではないでしょうか。

_ S.U ― 2015年06月04日 07時07分06秒

おぉ、けっこうな需要があるようですね。西洋にはポスターが好きな人が多いのでしょうね。
 framer という単語がともに出てくる場合が多く、裏打ち師と額装師が分業、流れ作業で活動しているようにみました。会社で両方やっている所はあるでしょうが、「師」としては兼任していないように見えます。
 日本の「表具」は、芸術作品を仕上げるというよりも、建物内装の一部(インテリア)を作るという印象です。ちょっと感覚の違いがあるかもしれません。

 それから、日本では、手紙とか反古のようなそもそも大勢の人に見せるつもりのないものが掛軸になりますが、あちらでもそのようなことがあるのでしょうか。

_ 玉青 ― 2015年06月04日 22時41分53秒

確かに表具師は書画の表装のほか、襖などの建具も受け持っていますから、これは西洋の人にとって想像の埒外でしょう。(でも、フレスコ画なんかは、ちょっと「西洋襖絵」っぽいですね)。
なお、手紙や反古でも、歴史的著名人にかかわるものであれば価値が生じるのは先方も同じで、そういうのを大事に額装して飾る人は、少なからずいるようです。

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