暦を買う2015年12月29日 08時52分19秒

歳末の風物詩といえば、新しいカレンダーを買うこともその一つ。
俳句で「暦売り」は、冬の季語となっています。

  打ちつゞく 寒き好き日や 暦売    松根東洋城

   ★

皆さんはもう買われたでしょうか。
もしまだの方は、こんな一風変わった品を検討されてはいかがでしょうか。

(「Anaptár ― 芸術と科学が出会うところ」。http://anaptar.com/

ハンガリーのグラフィック・デザイナー、Anna Farkas氏が手掛けた天文カレンダー、「Anaptár(アナプタール)」。100×70cmサイズの、1枚物のポスター形式の暦です。
上記リンク先のページにある「SHOP」から購入可能です。

(同封のフライヤー)

私も1枚買いました。定価は35.43ユーロ、約4,600円と、決して安いものではありませんが、送料は無料でした。

このカレンダーは「Radial Calendar」(放射状カレンダー)の一種です。
すなわち、1年を円で表現し、円周を366分割して(来年はうるう年です)、各日ごとに様々な天文情報を表現し、それらが連続的に変化することで、グラフィカルで美しい曲線や模様が画面に浮かび上がっています。

表現されているのは、月の満ち欠け、日の出・日の入り、月の出・月の入り、太陽と月の南中時刻、常用薄明(太陽が地平線下マイナス6度までの位置にある時間帯)、地球-月の距離変化、月の高度(赤緯)変化、月の近地点・遠地点・交点(黄道と白道が交わる昇交点と降交点)の表示…etc.  

   ★

なかなか情報量豊富ですが、このカレンダーには1つ残念な点があります。
それは日本対応版がないことです。

上記データは観測地点によって異なるため、このカレンダーは世界の各都市に対応したものが作られているのですが、現在あるのはブダペスト、ニューヨーク、ロンドン、ベルリン、コペンハーゲン、ウィーンだけです。

(今回購入したのは、グリニッジへの敬意と言語表記の問題からロンドン版です)

したがって、買ってもそのまま使えるわけではありません。
しかし、ポスターフレームに入れて、アート作品として観賞するだけでも、この作品の存在意義は十分あります。

(来年の1月1日と、それに接する来年の12月31日)

(カレンダーの中心には美しい星図が置かれています)

…と言いつつも、今の部屋には、それだけのスペースがありませんし、たとえ一時的にせよ広げて眺めることもなかなか困難です。


なんだか全く無駄のようですが、積ン読本には積ン読本の効用があるように、丸めたままのカレンダーにも、それなりの意味はあるものです(それが何かは即答できませんが)。

コメント

_ S.U ― 2015年12月29日 09時49分23秒

これは珍しいカレンダーですね。私は昨年カレンダー工場の博物館を見学しましたが、こういうものは見なかったように思います。時間方向と時間が2次元で表示されているのが秀逸だと思います。天文年鑑の太陽・月・惑星の出没図と似たアイデアですね。
 
 真ん中は星図になっていて周りに日付が配備されている星座早見のようですね。私もこれに似たジグソーパズルを持っていますが、私のは周りに流星群が書かれているところが秀逸です。
 
 ところで、昨日、我らが同好会の会誌を発行しました。また、つれづれのお時間がありましたら、上のURLからご笑覧いただければ幸甚です。

_ 玉青 ― 2015年12月30日 16時01分23秒

元カレンダー少年たるS.Uさんのお褒めにあずかり、まことに光栄です。(^J^)
これはアイデアも素敵ですし、色使いが繊細でいいなと思いました。
さすがはプロのデザイナーさんの仕事です。

ときに「銀河鉄道」最新号のご紹介をありがとうございました。
さっそく拝読し、S.Uさんのあれこれの思い出の記に多々感じ入ったのですが、あのお椀型の早見盤はすごいですね。まさに「シャビー」な魅力を感じました。

_ S.U ― 2015年12月31日 09時28分58秒

ご覧下さりありがとうございます。
 円形のカレンダーは、暦趣味と天文趣味の明瞭な接点と言えますね。カレンダー少年を天文に誘う物となるでしょう。
 
 ところで、「卓上型日めくり」は、アマゾンで検索してみると今でも「卓上日記」という名前で何種か売り出されています。記録を残すという実用用途は多少怪しいですが、今でも秘かに世に存在するであろうカレンダー少年の貴重な玩具になる可能性がありますので、その識別も兼ねて、小さなお子様のおられる家庭ではそっと一つ卓上に置いておかれてはどうでしょうか(「日めくりカレンダー」と違って毎日破って捨てなくてもよいので好都合です)。

_ arugan ― 2016年09月30日 06時49分55秒

去年、この記事読んで素敵だなと思って、Anaptarさんのフェイスブックにコメントしたんです。「Japan Please」って。
そしたら、日本版もできたよってお知らせいただきました!
http://anaptar.com/shop/tokyo-japan-calendar-2017/

_ 玉青 ― 2016年10月03日 20時39分27秒

「え!」と思い、「あ!」と嬉しい驚き。
aruganさんのおかげで、日本の暦好きや天文好きに、年末の大きなプレゼントができましたね。ともあれ、ハンガリーに我らの思いが届き、形になったのは本当に素晴らしいことです。私もさっそく仲間に加えていただき、注文することにします。

_ S.U ― 2016年10月15日 06時37分29秒

arugan様、玉青様、
 ありがとうございます! さっそく注文したら届きました。
これを見ながら、来年は月の距離や赤緯まで気にして雅に暮らすことにします。

_ 玉青 ― 2016年10月15日 09時21分46秒

おお、買われましたか。
私の手元にもしっかり届いていますよ。でも、まだ紙筒に丸めたままで、広げることができません。いつでも参照するために、卓上カレンダーとは言いませんが、せめて普通の壁掛けカレンダーぐらいに縮める工夫はないものでしょうかね。

_ S.U ― 2016年10月15日 15時21分48秒

>せめて普通の壁掛けカレンダーぐらい
 それでは、たぶん数字も目盛りも読めませんよね。
 この売っているサイズでも虫ねがねがほしいです。

 卓上カレンダーの代用として、地人書館の天文手帳はいかがでしょうか。

_ 玉青 ― 2016年10月16日 12時26分06秒

そこです、そこです。さればこその工夫です。按ずるに、1年を春分・秋分・夏至・冬至で4分割して、四分円を1枚に収めるようにすれば、たぶん壁掛けカレンダーぐらいの大きさになるんじゃないでしょうか。さらに綴じ方を工夫して、広げると1年全体を見渡せるようになっていればベスト。その分、製作コストがかさむかもしれませんが、特大版の印刷をしなくて済む分、印刷コストは圧縮できるはず…と睨んでいます。(まあ、自分で切ってぶら下げても同じことですが、アート作品に対して、それはいかにも不粋ですからね。)

_ S.U ― 2016年10月16日 15時37分02秒

>1年を春分・秋分・夏至・冬至で4分割して、四分円を1枚に収めるようにすれば

 これはよい思いつきですね。
 まあ私の場合は原寸大がほとんど読めないので、分割版を作り直すならば拡大コピーをお願いすることになって、けっきょくまた壁掛けカレンダーよりも大きくなってしまいます。

>1年を春分・秋分・夏至・冬至で4分割して
 これをやってみるとけっこう面白い暦学の教育普及になるかもしれません。
 国立天文台発表の2017年の暦要項によると、
春分:3月20日; 夏至:6月21日; 秋分:9月22日; 冬至:12月22日で、
春分~夏至の前日:93日; 夏至~秋分の前日:93日; 秋分~冬至の前日:91日; 冬至~(2017年の)春分の前日:88日 で、
「4分割」は「4等分」からかなりはずれた不揃いになってしまいます。2018年の春分の日は3月22日なので、そちらを使うと最後の期間は89日になりますが、合計が366日になってしまいます。地球の公転軌道が楕円形で北半球の冬が短いのですね。

 日本の東京の暦ですから、立春、立夏、立秋、立冬で切って、春夏秋冬に分けるのがベターかもしれません。そうすると、再び暦要項で、
立春:2月4日; 立夏:5月5日; 立秋:8月7日; 立冬:11月7日で、
2017年の伝統的四季の区分は、春:90日; 夏:94日; 秋:92日; 冬:89日(年末と年始に分かれているのの合計) となります。(ちなみに、立春は2018年も2月4日です)。
 夏が冬より5日も長いことは、世の風流人の皆様に認識していただく値打ちがあることと存じます。

_ S.U ― 2016年10月16日 15時47分47秒

すみません。2018年の春分の日が「3月22日」とあるのはタイプミスで、「3月21日」が正しいです。日数の計算結果は上のままで合っています。

_ 玉青 ― 2016年10月19日 07時17分50秒

冬は短日なり…と言うばかりでなく、冬そのものが夏より短いというのは、意外な盲点ですね。

…むむ、そうすると、ユリウス暦以降7月8月に大の月を並べて、2月に28日を割り振ったのは、本来不等な四季に各3か月をうまく配分するための便法なのでしょうか?はっきりそう述べている説を、これまで見た記憶がないのですが、でもそう理解するのが、最も合理的で説得力があるように思います。どんなもんでしょう?

_ S.U ― 2016年10月19日 19時11分43秒

>本来不等な四季に各3か月をうまく配分するための便法なのでしょうか?

 なにかもっともらしいお説ですね。少なくとも、この季節の日数の違いが「意外な盲点」になっているのは、各月の日数の不等によるところが大きいと思います。

>はっきりそう述べている説を、これまで見た記憶がない
 これには理由があって、一般に、通説として、

 ローマ初代皇帝アウグストゥスが、カエサルの名付けた「ユリウス」(7月)に対抗して、8月を自分の名前にちなんで改名したときに、ついでに日数も7月と同じ31日になるよう2月から1日取ってきて8月を増やした。(さらについでに、9~12月の大小を入れ替えた。)

 という説が知られていて、各月の長さは高尚な理屈ではなく、アウグストゥスの「エゴ」で決まったとされているからだと思います。

 私も先ほどまではこの通説で問題ないと思っていたのですが、調べて見るとこれは正しくないという証拠もあるようで、実は、アウグストゥス以前から8月は31日あって、2月は28日だった(閏年は29日)と考えられるそうです。詳しくは下の資料をご覧下さい。
 
 なお、ローマ時代の二至二分の日付を考えるには、歳差と近日点移動の影響を考える必要があり、現代とは変わっています。これらは周期が違うので、各季節の長さはそれぞれ別個に変化することになります。さらに、カエサル以前のローマの暦やエジプトでの天文観測の知識もあって、各月の長さがいろいろな方面の影響を受けている可能性は十分にあります。この件だけで、暦学と天文学の本が2冊くらいは書けるものと思います。

 国立天文台の方が研究されているようなので、『暦Wiki』の、「近日点の移動」と「古代ローマの季節 」をご参照ください。

http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B6E1C6FCC5C0A4CEB0DCC6B0.html
http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B8C5C2E5A5EDA1BCA5DECEF12FB5A8C0E1.html

_ 玉青 ― 2016年10月21日 07時02分53秒

ありがとうございます。
私の画像処理能力では、楕円軌道の回転(近日点移動)と味噌擂り(歳差)を同時に脳内で再現することは難しいのですが、でもリンク先の説明を読むと、四季の長短って結構ちょこまか(と言っても2万年余りの周期ですが)変わるんですね。
ここしばらくは、春・夏が短縮し、秋・冬が伸びるフェーズが続くということで、夏好きにとってはちょっと寂しいです。まあ、その変化を実感することは、ちと難しいでしょうが…。(^J^)

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