『鳥類写生図譜』の世界(1)2016年04月02日 09時48分39秒

ちょっと話がとん挫しましたが、気を取り直して続けます。

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「花鳥画」の名の通り、花と鳥は好一対。

花と鳥の取り合わせは、中国伝来の美意識で、さらに遡るとササン朝とか西域の影響もあるかもしれませんが、いずれにしても、すぐれて東洋的な感覚と思います。日本画の世界でも、花鳥画は歴史の中で独自の発展を遂げ、今に至っているようです。

他方、西洋では美しい鳥譜、花譜はたくさん編まれたものの、花鳥画が独立したジャンルとして存在しなかったので、両者の配合を狙った博物図譜も生まれようがありませんでした(「花の蜜を吸うハチドリ」のような、「花鳥画作品」はあったにしても)。

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そういう意味で、下の画集は、花鳥画の太い水脈を受け継ぐ「日本的博物図譜」として、特筆する価値があります。


■結城素明(監修)、小泉勝爾・土岡泉(共著)
  『鳥類写生図譜』、鳥類写生図譜刊行会(蔵版)

上の写真に写っているのは、「大鳥篇」と銘打たれた、縦37cm×横47cmの大判横長の画集です。さらにこれと対になる「小鳥篇」があって、そちらは縦42.5cm×横34cmの縦長の、これまた大きな画集です。


奥付がないので正確な刊年は不明ですが、本図譜の元は、昭和2年から13年(1927~38)まで、全4期・各12集にわたって、プレート(単独図版)形式で、予約購読者に頒布されたもので、おそらく昭和14年頃(1939年頃)に、今見るような形に製本されたものでしょう。

(桐に青鳩。「大鳥篇」所収)

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この図譜については、すでにespritlibreさんによる優れた論考があるので、関心を持たれた方は、まず以下をお読みいただくことをお勧めします。

■『鳥類写生図譜』の精緻・巧妙・優雅(1):玉乗りする猫の秘かな愉しみ
 http://furukawa.exblog.jp/6820935/

espritlibreさんは、上記の記事につづき、都合4回にわたって『鳥類写生図譜』と、その主著者である土岡泉(号・春郊)の伝についてまとめておられます(全4編は以下のページで一括表示されます)。

■カテゴリ:鳥類写生図譜  http://furukawa.exblog.jp/i24

以下、espritlibreさんに依拠しつつ、さらに若干の情報を付加しながら、この美しい図譜を紐解くことにします。

(この項つづく)

コメント

_ S.U ― 2016年04月03日 08時50分31秒

>「花鳥画」
 私は大好きです。花鳥画のおかげで、日本の江戸時代の絵画界も博物学的になっていますね。
 松に鶴、梅に鶯、藤に不如帰、芒に雁、柳に燕、他に猪鹿蝶・・・、あれれ、これも花札の影響でしたか(笑 ←くどい)。子どもの時によくやりましたから。他には、竹に雀ですね。

_ 玉青 ― 2016年04月03日 10時13分13秒

>花札の影響

あはは。まあ、花札にも花鳥画の影響は及んでいると思うので、やっぱりそれも花鳥画の間接的影響には違いないかも、ですね。花札のデザインは実に秀逸で、見飽きません。

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