Q堂にて…金銅片喰蠍虫法具(こんどうかたばみかっちゅうほうぐ)2016年05月22日 11時34分12秒

今日は東京赤坂蚤の市で、「博物蒐集家の応接間」が開催される日です。
 奇にして怪、妖にして美夢にして幻
そんな博物蒐集家秘蔵の品々が、赤坂のアークヒルズに並び、今まさに人々の驚きを誘っていることでしょう(時間は午前11時から午後5時までです)。

   ★

あれ、Qさんは赤坂には行かないの?

やあ、いらっしゃい。どうも、このところ仕入れに忙しくてね、赤坂の話もずいぶん迷ったけど、今回は見送った。ところでTさんのブログ、ちょっと抹香臭い話が続いたね。

うん、やっぱり京都に行くと、どうしてもね。まあ、曼荼羅だ何だの話は、Qさんには縁遠いだろうけど。

いや、そうでもないよ。実は、こないだ妙な品を見つけてね。Tさん、抹香臭いの好きだから、こういうの詳しいんじゃない?


何、これ?これはこのままでいいの?ひょっとして、壁に掛けて使うとか?


いや、ちゃんと下に脚が付いてるから、こうやって置いて使うものだと思う。

全体の雰囲気は仏具っぽいね。

だろ? 僕も最初は密教法具の類とアタリを付けたんだけど、いくら本を調べても、出てこないんだ。

へえ、何となくありそうだけどね…。あ、そうだ!ヒーリングの店とか行くと、今出来のチベット密教の法具とか売ってるじゃない。存外、ああいうのに時代付けしたものとか?

はは、僕だって商売柄、抜かりはないさ。そっち方面もさりげなく調べたけど、やっぱり手がかりはゼロなんだ。正体不明のものを売るのも嫌だから、結局そのままにしてある。


何だか謎めいてるね。でも、この蓮弁ぽいのは、明らかに灯火具だよね。


で、この蕪型のは水瓶(すいびょう)っぽいし、


左右の筒に小穴が開いてるのは、ここに香具や供花具を取り付けたんじゃないの?
…となれば、やっぱり仏教関係か。

Tさんの見立ても同じか。で、ほら、こうして並べると、蓮弁の両腕と、左右の筒の小穴の幅がほぼ一致するんだ。ここにも何か意味がありそうで。


なるほどねえ。…ところで、これ、材質は何なの?

金銅…と言いたいとこだけど、真鍮かもしれない。ほら、裏返すと、まだ金味が新しいだろう?

(ハート形の最大幅は 10.5cm、前後長は約11.2cm)

あれ、これネジが切ってあるね。



うん。そこが時代判定のポイント。この品が日本製としての話だけど、日本でネジ切りが始まったのは、火縄銃なんかを除けば、江戸も後期からだから、これもそんなに古い品のはずがないんだ。明治以降かもしれない。


こうやって回してやれば、簡単に外れるよ。サソリの方も、ほら。

(長さは約5.5cm)

(裏面。半身に緑青が出ています)

サソリはネジ式じゃないんだ。

いや、それは僕の仕業。このサソリだけでも売り物にならないかと思って、取り外すとき、ネジの先を切っちゃったんだ。ちょっと早まったかな。

Qさんも、案外「文化の破壊者」だね(笑)。


それにしても、サソリかあ…。サソリの存在が、この品の最大のポイントだろうけど、サソリと仏教というとどうなんだろう、天蝎宮を祀る星宿信仰に関わる品とかかなあ…

だったら、よっぽど珍しいものだし、Tさんが「天文古玩」の棚に並べてもいいんじゃない?それにほら、『銀河鉄道の夜』で、自分の罪を悔いたサソリが、天に昇って真っ赤な炎で周囲を照らす存在になった…っていうくだりがあったよね。

Qさん、いつもながら商売が上手いね。そんなこと言われたら、買わないわけにいかないじゃない。うん、天から届いたサソリの形見としてもらっておくよ。でも、本当に正体が分かったら教えてよ。金を返せとは言わないから。

(笑)了解。毎度おおきに。

   ★

というわけで、上の二人は納得づくの取り引きをして、めでたしメデタシ。
でも、現実世界で私がこれを買ったのは、もう20年以上前ですが、正体はまったく不明のままです。ぜひ博物蒐集家の皆さんの知識と知恵で、その正体を明らかにしていただき、私の迷妄を晴らしていただけないでしょうか。

コメント

_ S.U ― 2016年05月23日 19時59分40秒

何でしょうね。
 東洋、サソリ、器 とくれば、実は、漢方系(あるいは強壮剤系)の可能性はどうでしょうか。
 サソリ酒というのは、かなり効能が期待できるとか。仏教系、実は、漢方の秘薬というのもあってよいでしょう。

_ 玉青 ― 2016年05月24日 06時39分01秒

コメントをたくさん頂戴しましたが、取り急ぎこちらに。

S.Uさんがあえて“奇説”に打って出たということは、やはり例のものは相当難物っぽいですね。まあ20年来の謎ですから、もうちょっと余韻を味わうことにしましょう。

でも、「漢方」の一語から連想して、ひょっとしたら仏教とは直接関係のない、何か東南アジア系の器物の可能性はないかな…と、ちらと思いました。

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