オーロラの美観 ― 2017年09月11日 06時27分27秒
母なる太陽から吹き付けるプラズマの強風は、さらに地球の磁力線に乗って旋回し、地球大気と衝突しては、美しい光のダンスを演じて見せる…。
太陽フレアの発生で、オーロラの出現がいつも以上に活発化している様子を、ニュース映像で見ました。
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オーロラには様々な種類があり、その発光源となる大気中の元素も多様です。
でも、ある日、ある場所で観測された個々のオーロラに関していえば、その光は特定の元素に由来するものであり、スペクトルを調べることで、その元素を特定できるはずだ…というのは、19世紀初頭に分光学が登場して以来、考え続けられてきたことでしょう。
ただ、実際の取り組みは、安楽椅子で考えるほど容易なことではなく、ウィキペディアで「オーロラ」の項を見たら、「オーロラ分光学が始まったのは1850年代、そして最も代表的な緑白色の光の波長が正確に測定されたのは約70年後の1923年である」と書かれていました。測定行為だけでも、人間の一生に十分匹敵するぐらいの時間を要したわけです。
上は、その研究の道程を示す品。
ハーバード大学天文台が作成した「Spectrum of Aurora」のスライドです
バックライトで見たところ。
上は1897年4月1日、下は1898年3月15日に撮影された分光写真です。
(1897年4月1日のスペクトル像拡大)
(同1898年3月15日。2本の白い帯に挟まれた部分がスペクトル)
これらが何の元素に由来するかは不明ですが、いずれもきれいに輝線スペクトルを捉えています。
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光のカーテンのように揺れるオーロラは、さぞ美しいでしょう(私はまだ見たことがありません)。でも、この地味なモノクロ・スライドに凝縮されている「科学の雅致」も、見ようによっては、同様に美しい――あるいは感動を誘う――ものだと思います。
ただ、その美なり感動なりを味わうには、若干の想像力が要ります。
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