飛べ、スペース・パトロール2017年10月13日 06時52分33秒

くるくる回るのは星座早見のみにあらず。


1950年代のルーレット式スピン玩具。アメリカから里帰りした日本製です。


紙製の筒箱の脇から突き出た黒いボタンをプッシュすると、


スペースパトロールの乗った宇宙船が、クルクルクル…と高速回転し、やがてピタッと目的の星を指し示します。

   ★

初の人工衛星、ソ連のスプートニク1号が飛んだのが1957年。
それに対抗して、アメリカがエクスプローラー1号を打ち上げたのが1958年。

ここに米ソの熾烈な宇宙開発競争が始まり、わずか12年後(1969年)には、有人月面探査という格段の難仕事を成し遂げるまでになりました。

こうした現実の技術開発を背景として、更にその先に予見された「宇宙旅行」「宇宙探検」に胸を躍らせ、SFチックな「宇宙ヒーロー」に喝采を送ったのが、1950~60年代、いわゆるスペース・エイジの子どもたちでした。

   ★

上の玩具を作ったのは、もちろん子どもではなく大人ですが、そこはかとなく当時の子どもたちの気分を代弁しているかなあ…と思えるのが、「惑星の偉さの序列」です。

まずいちばん偉いのは何と言っても火星で、火星は100点満点。
今でも火星は人々の興味を引く天体でしょうが、この火星の突出した偉さというか、崇めたてまつる感じが、まさに時代の気分だと思います。

火星に次いで偉いのは、太陽系最大の惑星・木星80点、そして土星50点。
金星はややロマンに欠けるのか40点どまり。
さらに、ごく身近なは30点で、地球はなんと0点です。

スペース・エイジの子どもたちの憧れが、どこに向いていたかを窺うに足る数字です。と同時に、当時の「宇宙」イメージが、いかにコンパクトだったかも分かります。

コメント

_ S.U ― 2017年10月13日 18時42分39秒

 これは、いつ頃のものでしょうか。宇宙船のデザインのヒントが気になります。サンダーバード2号を真っ先に思い浮かべましたが、 米空軍のX-15などかもしれません。当時の日本のアニメ(遊星仮面など)もありえるでしょうか。

 地球は0点、すばらしいです。
地球はいずれ捨て去るべき故郷で、未練も何もない。当時の宇宙少年の気概ではないでしょうか。
 「緑の地球を大切に」などという感傷主義は当時はなかったです!

_ 玉青 ― 2017年10月13日 20時34分23秒

さっき調べたら、そもそも「Space Patrol」というのは、アメリカの人気SFドラマで、そのTVシリーズは1950年~と1962年~の2種類あるのだそうです。

この玩具は、そのどちらかを当て込んだものだと思うのですが、雰囲気としては1950年代ですね。というのは、素材が紙・ガラス・金属と、昔ながらのものばかりだからです。(1960年代に入ると、プラスチック素材がもっと使われていい気がするのですが、日本とアメリカでは、事情がちょっと違うかもしれないので、あまり自信がありません。)

_ S.U ― 2017年10月13日 23時13分20秒

>「Space Patrol」というのは、アメリカの人気SFドラマ
 ありがとうございます。この宇宙船は、1950年代のアメリカのTVドラマでのイメージですね。当時、X-15の形状がどれほど知られていたかはわかりませんが、これがモデルとして当たらずとも遠からずでしょう。
 「Space Patrol」は人形劇なので、サンダーバード(Thunderbirds, 英国、1964-)のほうがこれに影響を受けたものと思います。納得がいきました。

 玩具の素材としては、1960年代初頭はプラスチックもありましたが、金属製(ブリキ)や木のものもまだまだありました(とくに玩具屋や縁日の屋台では)。1960年代後半にはプラスチックが支配的になりました(日本の私の経験できた範囲の話です)。

_ 玉青 ― 2017年10月14日 11時21分00秒

ご教示ありがとうございます。プラスチックの話題も久しぶりですね。
今や60年代もすっかり遠くなり、プラスチックを昔ほど嫌悪せずに、「プラスチックがやって来た!」なんていう懐古記事も安心して書けそうです。

_ S.U ― 2017年10月14日 12時15分54秒

1960年代のプラスチックでちょっと思いついたことがあるので書き留めておきます。

 それは、今までちゃんと意識できていなかったことなのですが、今日はっきりしました。

 それは、プラスチックの普及に段階があって、それを流し込む金型(鋳型)の製作のしやすさによる、すなわち、高価な金型を要するような形状の部品についてはプラスチック化が遅れ、簡易な金型で済む部品はプラスチック化が先行したということです。複雑な金属部品を作ってからプラスチック部品を作るのなら、始めから金属で作ればよいということです(当然、製作個数に大きく依存します)。

 私の記憶によると、平面プレス型や一つの部品の小さいものは早くプラスチック化が進み、大型のもの、3D形状のもの、一部に入り組んだ部分や固まり部分があるものはプラスチック化が遅れたと思います。でも、単純に平面的な部品は(箱や器械の台座部分など)、木やボール紙が使えるのでかえってプラスチック化の必要がありません。
 
 私がもの心つくころからプラスチックの玩具や文具はあって見慣れていたのですが、それでも、複雑な形状のプラモデルやまわり全体がプラスチックでできた家電製品などを見た時は先進的なインパクト感じました。子どもなりに、プラスチックでこんな形ができるようになったんだーという驚きがあったと思います。

 ということで、部品の形状が3D的かプレス的か平面かを見て、材質を見ると、年代がわかる手がかりになるのではないでしょうか。

_ 玉青 ― 2017年10月15日 21時21分41秒

ありがとうございます。
知られざるプラスチック普及史の一断面ですね。
いずれプラスチックの話題について触れる際には是非に。

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