驚異の象牙人形(2)2018年02月28日 18時57分29秒

(昨日のつづき)

象牙の解剖模型に関連して特筆すべきこと。
それは他でもありません、わが家にもそれが一体眠っていることです。


頭のてっぺんからつま先まで、およそ16cm。この種のものとしては、標準的な大きさです。そして、これまたスタンダードな妊婦像。

ちょっと失礼して、おなかの中を見せてもらうと、


デフォルメされた腸やら何やらが造形されていて、順々に取り外すことができます。




右下のちっちゃいのが、子宮の中で眠る胎児。

昨日引用したラッセル氏の論文を参照すると、その特徴は「グループⅢ」と一致し、額の中央部でとがった髪の生え際や、微笑みを浮かべた面相は、論文中の図6に示された人形とよく似ています。

(左はラッセル氏の論文の図6(部分))

ラッセル氏は、先行研究を元に、このグループⅢはイタリア起源である可能性が高いと述べています。

   ★

どうです、スゴイでしょう?
ただし、スゴイと言えるのは、これが本物であるとすれば…の話です。
もちろん、わが家にウン十万も、ウン百万もする本物があるわけはなくて、これはプラスチック製のレプリカです。

(枕に残るプラスチックの成型痕)

下は同封されていた説明書。


“SEX EDUCATION”― 16th Century”…と、ことさらに大文字で強調しているところが、何だか隠微な感じです。
(この16世紀云々はちょっと誇大で、たぶんオリジナルは17世紀のものでしょう。)

下の説明文を読むと、「ヴェサリウスは、解剖の重要性を実証したことによって、一般に近代解剖学の父と見なされている」…云々と、もっともらしいことが書かれていますが、全体の雰囲気からして、この品がどこかの観光地で、ヌード写真の飛び出すボールペンとか、エロティックなトランプなんかと並んで、「いかがわしいお土産品」として売られていたのではないか?という疑念を、捨て去ることができません。


そう思ってみると、この食い倒れ太郎の服のような薄汚れた紙箱も、


寝台の裏の「MADE IN HONG KONG」の文字も、すべてが怪しげです。そして、かつてヴンダーカンマーに秘蔵された象牙人形と同様――この部分だけはオリジナルと同じです――この品も、メーカー名の記載がどこにもありません。

この品に少なからぬお金(ええ、決して少なくありませんでした)を投じた私としては、こうした事実をどう受け止めればよいのか?

もちろん、これはレプリカと明記されていたし、私はそれを納得ずくで買ったのですから、そこに何の問題もありません(届くまで香港製とは知りませんでしたが)。だが、しかし…。

まあ、その正体不明のいかがわしさには、ちょっと乱歩チックな味わいがあるし、これこそ私のささやかな「驚異の小部屋」にはお似合いだ…というふうに興がるのが、この場合一等スマートかもしれませんね。

コメント

_ S.U ― 2018年03月01日 07時39分34秒

うーん。世界に100点しかない物をどこかで掘り出してきてお持ちだったのかと一瞬驚きましたが、そうではなかったですね。
 
 でも、レプリカとしても、どれほどの数が出回ったかは疑問です。レプリカも数百個しか出回っていないとか・・・。仮にこれが「いかがわしいお土産品」だとしても、そういうのはそんなに大量に売れる物なのでしょうか。
 偽造品詐欺として売ろうにも、年代物の象牙とプラスチックでは一目で素人でも区別がつくのではないかと思います。それでも、旅行中に酒の勢いでけっこう買ってしまう人がいるのかもしれません。

_ 玉青 ― 2018年03月05日 07時10分39秒

あはは。たしかにレプリカにしたって、そんなに数は捌けなかったかもしれませんね。まあ、希少で珍なるものとして、手元にとどめおきたいと思います。

◎業務連絡: 掲示板へのご投稿ありがとうございました。今後もタイムリーなご報告をいただければと存じます。<(_ _)>

_ K.T. ― 2018年03月26日 19時35分11秒

1983年、ある日の夕暮れ。
学校帰りの電車の中では、開かれているタブロイド紙の一面が、どれも皆「原因ウイルス特定」の極太ゴチックで埋め尽くされていました。エイズの病原体が、ついに分離されたのです。そのとき私が思ったのは、移り気な主人公がすったもんだの恋愛遍歴を重ねる、といった種類の筋立ては、新作される映画、小説、漫画、歌謡曲などなどから、今日を限りに一掃されるだろう、ということでした。それから35年。世の中には、相変わらずその手のものが溢れています。トランプさんは、交際相手には必ず「エイズ検査」を課すそうです。でも、大統領は事態を本当に理解しているのでしょうか。古い小噺に、見合いの席で、「嫁に取るのは生娘のみというのが当家の仕来りです」「だから処女証明書を持参しました」「無効です」「なんで?」「それ、昨日のでしょ」というのがありましたが、抗体検査は昨日どころではありません、三月も前です。知りたいのは今のことなのに、分かるのは90日以前の素行だけ。要するに、現行の「エイズ検査」なるものは、全く無意味なのです。この単純な事実を、どうして誰も指摘しないのか。デート関連の市場が冷え込むから? 労働力の供給を滞らせぬよう「産む機械」をリスク含みで稼働させ続けるため? いずれにしたって亡国だ。では、どうすれば良いのか。解決策はあります。24時間、互いの姿が双方の視野を外れぬ同棲生活を禁欲厳守、自慰可、麻薬の回し射ちなしで三ヵ月間続けたのち、結果を紙で出してくれる医療機関を探して二人で受検し、引換券をあらかじめ交換しておいて、各々が相手のデータを受け取って確認し合う。以上を完全に履行するなら、その「陰性」は、本物の陰性です。この、どこか一ヵ所でも疎かにすれば最初から全部やり直しとなる、楽しくも苛酷な試練の過程を詳細に描けば、含蓄に富んだスクリューボール・コメディが出来上がることでしょう。人は、目の届かない所では何をしているか分からない。紙切れ一枚、されど一枚。そして、証を立て合えることの貴重さ、信頼を築き合えることの稀有さ、尊さ。晴れてカップルが手に手をとり、保健所の扉を開けて歩み出てゆく眩しい光景を、私は見たい。該病患が、遍在する無数の危難の一つに過ぎない、この世界へと。銀残しの、地味で静かな映画に仕上げて欲しいと思います。

現在ならば、相互観察は24時間分の自撮り動画を毎日送りあってそれぞれが早回しで確認することになるでしょうか。未編集であることをどう保証するかが問題ですが。とにかく、好奇心、探究心に目を輝かせ、その実験面白い、やろうやろうと身を乗り出してくるような相手とでなければ、遺伝子のやり取りを伴う関係に入ってはいけません。上記の手続きを示されて、嫌がったり、面倒臭がったりする人物、とりわけ怒り出す者とは。この提案に対する反応の仕方で、その人間の程度が測定できます。もし私に子や孫があれば、私は彼らにきつく言い含めることでしょう。この点にだけは、絶対に妥協してはならないと。私は極めて反動的な思想の持ち主ですから。

天文古玩には珍しく、ヒトの生殖に関する話題が出ましたので、思うところを投稿させて頂きました。

_ 玉青 ― 2018年03月26日 23時12分18秒

どうも酔眼には理解の及ばぬ点が多々ありますが、そうなるとなかなか大変なことになってきますね。まあ個人的には、あながちに強制されるべき性格のものでもないかな…と思います。

_ K.T. ― 2018年03月27日 20時30分24秒

こんなこと、強制でやったら大変です。
犯罪ですから、アサガオの種なんか飲ませたりする。
話を持ちかけて、相手が関心を示さなければ、そこで終わり。
自分の子孫には強制しますよ、カポジ肉腫の写真をどっさり見せて。
お酒をお召しの方は、これだから困る。
私の文章も随分まずいですが。

_ 玉青 ― 2018年03月28日 07時16分18秒

それを伺ってひと安心です。(^J^)

_ K.T. ― 2018年04月05日 07時04分02秒

御心配をおかけいたしまして。とにかく、毎日向かい合ってオナニーを見せっこして過ごす三ヶ月、こんな楽しいことを嫌がる「進歩的」な人になど、私は誰にもなって欲しくはありません。

_ K.T. ― 2018年04月09日 10時12分23秒

お庭先を拝借いたしますこと、いま一度お許しください。

エイズ予防というと、決まって一部方面から純潔教育の必要性が叫ばれます。純潔、大変結構です。でも、人は自分の純潔は知れても、相手の純潔をどうやって知るのでしょうか。自己確認しか提供できない純潔教育は、相互確認の方法論を欠いているという点で、やはりエイズ対策としては無力なのです。対するに我々のプロセスなら、三ヶ月の間は粘膜接触こそ制限されますが、性行為の他の領域におけるヴァリエーションの豊富化がこれを補いますので、悦びの総量は増しこそすれ減ることはありません。結果、性的抑圧を伴うことなく、万全なエイズ予防が実現されることとなる訳です。益と益とが互いをよりいっそう昂め合う、高次の一致ぶりに御注目ください。

貴コメント欄、万歳!

_ 玉青 ― 2018年04月10日 07時16分01秒

いやあ、そういえば貞操帯というのがありましたね。
あれは男性用のが無い憾みがあるので、ここはひとつ男性用の貞操帯の開発に乗り出してはどうかとも思いますが、まあ、あまり話を落としてもいけませんので、この辺で話題を収束させましょう。

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