豪奢なる科学2020年01月02日 05時52分09秒

現在、ニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)で、企画展『驚異を作る―ヨーロッパの宮廷における科学と栄光(Making Marvels: Science & Splendor at the Courts of Europe)』が開催中です。会期は今年の3月1日まで。

要は、ひところ大いに流行ったヴンダーカンマーチックな展覧会の新顔です。人によっては食傷気味かもしれません。でも、近代科学の揺籃期に生まれた、贅の限りを尽くした工芸品的な科学機器は、やっぱり魅力的ですし、私は今でも大いに心惹かれます。


上のページに飛んでいただければお分かりのように、METは実に太っ腹で、167点の全展示品の詳細を、高解像との写真と共にWEBで詳しく紹介してくれています。ですからニューヨークまで行かなくても、十分その内容を楽しむことができます。


こういう金・銀・珊瑚的なきらきらしいオブジェが並んでいるのは、何といっても景気がいいです。今の日本は、どうも湿っぽくて貧しい話題が多いですが、正月ぐらい心だけでも豊かにしなければなりません。

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まあ、あまり独りよがりな鑑賞態度も良くないので、おまけとして、主催者による展示概要を適当訳しておきます(主催者側の意図としては、科学史的な視座よりも、そうした品が有した社会的機能に強く注目しているようです)。

 「1550年から1750年にかけて、ヨーロッパのほぼすべての王家が、高価で愉しい品々から成る膨大なコレクションを築き上げました。そうした惜しみない国費支出と貴金属類の展観こそが、権力のあかしと考えられたからです。同時に多くの君侯は、芸術的・技術的な新機軸を所有することで、地位の向上がもたらされると信じたので、往時を特徴づける宮廷の宴席では、こうした品々が麗々しく披露されました。

近代初期のヨーロッパの君侯が蒐集した驚異に満ちた品々と、そうした品々が展観された文脈、それが当の統治者たちの支配能力をいかに表現したか――本『驚異を作る』展が探求するのは、その複雑な様相です。

展示されるのは、置時計、自動人形、家具、楽器、宝飾品、絵画、印刷物等々から成る約170点の品々で、METのオリジナルコレクションと世界中の50以上の個人・機関からの借用品が含まれます。

ちょうど21世紀のテクノロジーが現代の我々の注意を引き付けるように、緊張感と驚異の念、そして劇的変化によって、往時の耳目を集め、楽しませた、驚きに満ちた新機軸の数々を、来館者は目の当たりにされることでしょう。」