小さなアストロラーベ ― 2021年01月08日 13時23分49秒
冷え込みのきつい日。今日は一日巣ごもりです。
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世界は広いですから、アストロラーベを個人でコレクションしている人も、きっといるでしょう。まあ、それができるのは、間違いなく大富豪ですね。
私も含め、多くの人は大富豪でも小富豪でもありませんから、アストロラーベに惹かれても、レプリカで満足するしかありません。そして同じレプリカなら、できるだけ気の利いたものを手に入れたいと思うのが人情です。その点、前回のアストロラーベはなかなか気が利いていました。
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下のレプリカも、なかなか良くできています。
良くできているというのは、取りも直さず、細工が細かく正確であるということです。
直径53ミリという、ごく小さな懐中アストロラーベですが、その目盛りは極めて正確で、各パーツもしっくり滑らかに回転する点に、作り手の本気具合が現れています。
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この品も、きっと歴史的なモデルがあると思いますが、残念ながらその点は未詳。
ただ、その出所・由来は分かっています。これを譲ってくれたのは日本の方で、その方は、パリの老舗百貨店で購入されたそうです。改めてその方の話に耳を傾けてみます(商品説明文の一節です)。
「12年前にパリのギャラリー・ラファイエット・デパートで購入した物だと思います。購入当時、説明書と証明書のような物をもらった記憶がありますが、残念ながら紛失してしまいありません。購入当時、10年ぐらい前に製作された骨董のレプリカだと説明を受けた記憶があります。製作されたのは今から22年前ぐらいだと思います。」
私がこれを購入したのは8年前です。8年前の22年前ですから、今からちょうど30年ぐらい前に、フランスで作られたレプリカのようです。
「真鍮と説明を受けた記憶もありますが曖昧です。購入金額は当時の日本円で87,000円ぐらいでした。騙されていたのかもわかりませんが、綺麗だと思っただけで買ったので、商品について良くわかっておりません。」
正直な書きぶりからも、おそらくこれは事実そのままなのでしょう。
それにしても「綺麗だな…」の印象だけで、ポンと87,000円はずまれたのというのは、それだけ時代に余裕があった証拠です。(私はそれよりもはるかに低価格で譲っていただいたので、ちょっと申し訳ない気もしますが、庶民にとって安さは美徳です。)
この品が前回のものに優っている点があるとすれば、その「綺麗」な色合いがそれで、このまばゆい金色は、古いアストロラーベを彷彿とさせます。これはおそらく銅の比率が高い「ゴールドブラス(丹銅)」を使っているためで、銅の比率が高いと金属加工が難しくなるそうですから、その意味でも、これは手間が掛かっています。
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巣ごもりの巣から、外の世界に目を向けると、日本もアメリカも、無惨な政治があらわです。ただ、それを無惨なものとして、現に多くの人が指弾しているのは心強いことです。考えてみれば、まともなものが「地」になっているからこそ、異常なものが「図」として目立つわけで、このところ異常なものが目立つのは、世の中がまともさを取り戻しつつある証拠かもしれません。
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