雪降り積もる ― 2021年01月09日 14時20分25秒
子供の頃、日本海側の雪はとにかくスゴいんだ…と聞かされていました。
日本海側は「裏日本」と呼ばれ、冬ともなれば人々は絶えず雪と格闘し、山あいに行けば、雪ん子みたいな藁帽子や藁沓、かんじきを身に着けた人が暮らしている…というのは実体験ではなしに、そういう映像を目にしただけですが、何となくそんなイメージでした。
そういうことが刷り込まれているので、近年の「冬でも雪のない新潟市内の映像」なんかを見ると、いまだに違和感を覚えます。それでも、今年は「年越し寒波」の影響で、雪国の人はやっぱり難儀していると聞きます。
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私の子ども時代を跳び越えて、さらにそれ以前に遡るとどうか?
手元に「北陸地方最深積雪図」というのがあります。
(全寸は約54×78cm。紙の向きと印刷の向きがずれていますが、地図の面積を最大化するための工夫でしょうか。)
昭和7年(1932)に、富山県伏木測候所が発行したものです。
(旧・伏木測候所。現在の高岡市伏木気象資料館。ウィキペディアより)
カタカナをひらがなにし、句読点を補ってみます。
「本図は北陸信越の四県下並に岐阜長野二県の一部に亘る区域の最深積雪を図示したるものなり。本図の調製に当り、資料蒐集に援助を賜りたる長野保線事務所、金沢保線事務所、敦賀運輸事務所、日本電力黒部出張所及松本、長野、福井、高山、高田、新潟の各測候所の好意を深謝す。」
詳しい発行経緯は不明ですが、地元の測候所として、一度きちんとデータをまとめておきたいと考えたのでしょう。アメダスのない時代ですから、鉄道や発電所など、普段から克雪に取り組んでいる機関の協力も得て、とにもかくにも1枚の図にまとめた労作です。
凡例を見ると、単位は「粍(ミリ)」ではなくて、「糎(センチ)」。つまり、いちばん雪が少ない地域が、いきなり「1~2m」から始まっていて、以下「2~3m」「3~5m」「5~8m」「8~10m」と続き、最後は「10m以上」です。
もちろん、「最深積雪」ですから、常時こんなに積もったわけではないでしょうが、それにしても容易ならぬ雪です。そして地元の富山は全域が、また石川・新潟の2県も、大半が色塗りされた豪雪地帯です。
要部を大きな画像で載せておきます。
高い山々を結ぶように10m以上の積雪エリアが広がり、鉄道が走る人里でも、3mや5mというところはザラで、まさに江戸時代の『北越雪譜』の世界もかくやと思わせます。
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ひるがえって、アメダスで見る今日の積雪状況。
積雪が100cm、150cm、中には2mを超えるところもあって、やはり今年は雪が多いなと思いますが、昭和戦前のことを考えると、当時の人がどんな気持ちで毎年冬を迎えたのか、それほど昔のことではないのに、その心情がもはや見えにくくなっていることに気づきます。
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純白の雪が見せる、ときに非情な一面。
雪で苦しんだ人々には周知のことでしょうが、この1枚の図はそれを教えてくれます。
コメント
_ S.U ― 2021年01月09日 22時21分22秒
_ 玉青 ― 2021年01月10日 10時43分49秒
南は暖かく北は寒い。
雪は寒いところに降るものだ。
したがって北に行くほど雪が降るはずだ。
こういう三段論法的思考は、誰しも素朴に持っている気がします。
問題は2つ目の前提で、寒くないと雪は雨になってしまいますから、寒いことは降雪の必要条件ですけれど、結局のところ雪は「結晶化した雨」ですから、多雨(多降水)の条件が同時に整わないと雪は降らない…というのがミソですよね(最初の前提も、立ち止まって考えると、いろいろ例外はあります)。
雪よりも気温がストレートに反映するのは氷で、池の氷の厚さとかは、たしかに「しばれる」ところに行くと分厚いです。そして、人は得てして雪も氷もごっちゃに考えてしまうので、それが昔の雪国感覚に影響したかもしれません。
雪は寒いところに降るものだ。
したがって北に行くほど雪が降るはずだ。
こういう三段論法的思考は、誰しも素朴に持っている気がします。
問題は2つ目の前提で、寒くないと雪は雨になってしまいますから、寒いことは降雪の必要条件ですけれど、結局のところ雪は「結晶化した雨」ですから、多雨(多降水)の条件が同時に整わないと雪は降らない…というのがミソですよね(最初の前提も、立ち止まって考えると、いろいろ例外はあります)。
雪よりも気温がストレートに反映するのは氷で、池の氷の厚さとかは、たしかに「しばれる」ところに行くと分厚いです。そして、人は得てして雪も氷もごっちゃに考えてしまうので、それが昔の雪国感覚に影響したかもしれません。
コメントをどうぞ
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これは、私だけの偏見だとは思わないのですが、私の出身地の丹波は、いわば「裏日本の最南端」で、私の子どもの頃のそのあたりの人々は、単純に緯度が高くなると雪が増える(標高は同じとして)と考えていたのではないかと思います。もちろん、これは昭和の話です。
確かに、丹波より、丹後、福井県、富山、新潟・・・と、どんどん積雪は増えていきます。ただ、東海道は、東京、千葉を含めて例外的に雪が少ないと理解していました。少なくとも私はそうでしたし、大人もそのように言っていたと思います。ところが、水戸から仙台まではこれが通用せず、福島の内陸の一部を除いて、丹波ほども雪が積もらないことは、関東に住むようになってから知りました。また、丹波からみて案外近場の飛騨地方が北海道に劣らないほどの豪雪地帯であることも意外です。
今となってはもはや確かなことは調べようがないのですが、昔の地方地方の人の「雪国地方感覚」というのも面白いものがあるのではないかと思います。同じ日本海側でも、島根県とか山形県の(昔の)人だったらまた全然違うのではないかと思います。