昔の鉱物趣味の七つ道具(中編)2021年04月12日 09時46分21秒

吹管、すいかん。

「すいかん」と言いますが、「吸う」のではなく、「吹く」のです。英語で言うと「blowpipe」。この名称は、吹き矢の意味もあるし、ガラス職人が溶けたガラスに息を吹き込むときに使う長い筒の意味でも使われます。

それが鉱物の同定とどう関係するかと言えば、その実際を見ていただくのが早いです。


■Centennial Blowpipe Demonstration
 (Smithsonian's National Museum of Natural History)

リンク先では、オイルランプの炎に吹管で息を吹き込んで、さらに高温の炎を作り、それによって木炭に載せた粉末試料を加熱し、その反応や生成物を確認しています。

ウィキペディアの「吹管分析」の項(LINK)は三省堂の『化学小事典』を引いて、以下のように述べていますが、動画と説明を見比べると、そこで行われていることが、何となくわかってきます。

 「鉱物や合金などの金属成分を検出する古典的な分析法の一つ。固体の試料粉末を四角柱に削った木炭の中心に開けた穴に詰め酸化炎や還元炎などの吹管炎を吹き付け、その変色や溶融状態、化学変化を観察し成分を判定する。なお、現在は他の分析法の発達に伴い使われる頻度は少なくなっている。」

もう少しやわらかく解説したものとして、以下のページを拝見しました。(「天文古玩」もいい加減<老舗化>していますが、こちらの個人サイトは1999年から続く老舗で、しかも今も更新が続いており、本当にすごいなと思います。理科趣味界の鉄人ですね。)

■鉱物たちの庭:ひま話(2002.1.24)

   ★

今は流行らなくなった吹管分析ですが、かつてはプロ・アマを問わず、盛んにおこなわれました。


手元に、岩崎重三(著)『実用 鉱物岩石鑑定吹管分析及地質表』(内田老鶴圃刊)という本があるんですが、初版は明治30年(1997)に出ており、手元にあるのは大正6年(1917)発行の第7版ですから、少なくとも20年にわたって息長く版を重ねていたことが分かります。


言ってみれば試料に炎を当てるだけの分析法ですが、実際にやってみるとなかなか奥が深くて、炎色反応を見たり、ガラス管や木炭上に生じる生成物をさらに分析したり、溶球試験(ホウ砂球試験やリン塩球試験)によって金属の呈色反応を見たりして、徐々に鉱物の正体に迫っていきます。



   ★

そうした吹管分析を自宅でも手軽にできるよう、19世紀には吹管分析セットが盛んに販売されました。それが今や「鉱物古玩」として、欧米の理系アンティークの店先を飾っています。

(かつてオークションに出ていたドイツ製の吹管分析セット。

これは素敵だ…というわけで、私も苦労してひとつ手に入れました。


話が長くなったので、肝心の中身については次回に回します。

(この項つづく)

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