空のオーラリー2021年11月13日 10時47分48秒

ここしばらく、澄んだ空に金星、木星、土星、それに月が居並び、互いの位置が刻々と変わるのを見て、まるで巨大なオーラリーを眺めているようだと思いました。
来週19日の月食の折には、夜空を見上げる際つい忘れがちな、太陽と地球の存在までもがしっかり可視化されて、いよいよ壮大なオーラリーを楽しめそうです。

(『スミスの図解天文学』(1849)より。今ではおなじみの図ですが、最初見たときのインパクトは大きかったです)

まあ冷静に考えれば、これは倒錯した言い方で、惑星の動きは別にオーラリーを模倣しているわけではなくて、事実はまったく逆です。でも、惑星の動きをじーっと何千年も観察し続けて、太陽系の真実を明らかにし、その姿を創意工夫によって一個の器械装置で表現した先人のことを思うと、やっぱり空に誇らしげに浮かぶ巨大なオーラリーを想像してしまいます。

   ★

日々いろいろなことが起って心が波立ちますが、善悪も美醜もまるごと載せた小さな地球が、今もくるくる太陽の周りを回っている姿を思うと、物事が相対化されて、多少心が落ち着きます。そうは言っても、小人の常として、一瞬「達観」しても、またすぐに心が乱れるわけですが、私の心が落ち着こうが落ち着くまいが、それでも地球は回り続けていることを思えば、心が乱れること自体、そう大したことじゃないとも思います。

(小さな星座早見盤の話はまだ書きかけです)

コメント

_ S.U ― 2021年11月13日 16時23分43秒

我々のように天文を長年性懲りもなくやっている者(?)は、幸いにして(??)天に惑星の巡る軌道を描くことができますし、それが出来ない人でも、オーラリーがあればその地球のところに小型カメラを持ってくれば、地球からみた惑星の配置を卓上に再現することができるでしょう。(本当は、距離の比が現実と合わないでしょうが)
 
 天文を始めた子どもの頃は、惑星の見える方向を太陽系天体としての実感を持って捕らえることはなかなか難しかったのですが、少しの努力で非日常を日常として体感することができるようになったことはありがたいです。世の中が世知辛くなり自分も年齢が進み、文句を言うことも増えましたが、依然ありがたいことも多いです。

_ 玉青 ― 2021年11月14日 10時12分33秒

いやあ、実は私はまだまだ未熟者で、素朴に見上げた空はやっぱり天動説的相貌を呈しています。作図すればああそうかと思うんですが、パッと見、内惑星と外惑星が並んでいる状況が分かりにくいです。天のオーラリーの比喩が必要な所以です。

_ S.U ― 2021年11月15日 15時50分05秒

>作図すればああそうかと思うんですが、パッと見、内惑星と外惑星が並んでいる

 作図という意味では、オーラリーにも、天然のオーラリーにもない、惑星の公転軌道の曲線を、天に想像する必要がありそうです。

 内惑星の軌道は、金星が約46°、水星はその半分の約23°太陽の両側にほぼ黄道に沿って伸びています。外惑星の軌道は全天を1周しています。ここまではよく知られていて、想像も比較的簡単です。

 内惑星と外惑星が並んでいるときは、その間の隙間(あくまでも3次元的な隙間)に地球の軌道を思い浮かべる必要がありますがこれが難しいです。考えてみますと、地球の公転軌道は、太陽から+90°離れた黄道上の点から地球の中心を貫通して太陽から-90°離れた黄道上まで伸び、その後黄道に沿って太陽の背後を西から東に走っているはずです。

 今だったら、太陽はてんびん座にあるので、地球の軌道は、太陽の背後から、金星と土星の隙間を通って、やぎ座のちょうど木星のあたりから地球まで届いているはずです。もう、これで大丈夫ですね。

_ 玉青 ― 2021年11月15日 21時51分33秒

ええ、これでもう大丈夫です!
…と言えればいいのですが、なかなかどうも難しいですね。

思うに、これは大地が空を半分覆い隠しているから分かりにくいんですよね。
仮に自分の大きさは変わらずに、地球だけがグングン縮んでバレーボールぐらいの大きさになって、その上に自分が立っている場面を想像すれば、各天体の位置関係はもっと直感的に理解できるような気がするんですが、それでも人間は天動説に固執するんでしょうかね。

_ S.U ― 2021年11月16日 08時08分17秒

>地球だけがグングン縮んでバレーボールぐらいの大きさ
 うーん。それでも、勢い余って、地球が縮みすぎて無くなってしまうと、地動説もへったくれも無くなってしまうのが問題ですね。

>それでも人間は天動説
 なかなか天動説の弊は頑迷です(笑)。

 それでは、地動説体得の最後の奥義をお伝えいたしましょう。
 それは、地球の公転を想像で体感することです。あほらしいほど当然の答えですみませんですけど。

 太陽の方向に向かって(夜間なら下向きになりますが)、そこでの黄道の傾きと平行に、自分が太陽に対して反時計回りに方向に動いている様を想像しつつ地球の軌道を描けばよろしいのです。これで大丈夫ですね。

_ 玉青 ― 2021年11月17日 22時38分21秒

ついに出ましたね、地動拳最終奥義。
我ながら暇人ですが、この2日間、地球の公転軌道を空に思い描く特訓をしていました。おかげさまで奥義を体得できた気がします。

S.Uさんの奥義に加え、自分なりに工夫したのは、眼前の太陽そのものを手がかりにして地球軌道の大きさを思い描くことで、地球から太陽までの距離は、太陽の直径の100倍ちょっとぐらいですから、それだけの長さの棒が黄道の傾きに沿って太陽に突き刺さり、それがブンブン回っている様を想像したら、ようやく地球の公転がリアルに感じられました。もちろん棒がいちばん手前に来たところが、自分の鼻先です。(太陽を直視するのは辛いので、月を太陽に見立てて練習するのが良いようです。)

いったん地球を手なずければ、あとの惑星はそれぞれの軌道半径を天文単位で表示して、金星なら地球の棒のおよそ0.7倍、火星なら1.5倍、木星なら5倍、土星なら10倍の長さでブンブンすればいいわけです。

最初ちょっと戸惑ったのが、ブンブンするにはいったん天球の考えを捨てて、どこまでも無限に広がる虚空の中にいると考える必要があることで、そうしないと棒が天につっかえます。

_ S.U ― 2021年11月18日 15時21分03秒

>棒が~ブンブン
 これは新アイデアをありがとうございます(笑)
 今日は雲が多いので良くないみたいですが、快晴の日にやってみます。

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