こんなオーラリーが欲しかった。2021年11月27日 10時29分04秒

博物館を飾る優美なオーラリーの数々。
例えば、ケンブリッジ大学のホイップル科学史博物館が所蔵する、18世紀半ばに作られたグランドオーラリー。


盤面とともにゆっくり回転する、真鍮製の惑星たちの表情がなんとも良いですし、


その全体を覆う透明なドームも素敵です。さながら宇宙をよそながらに眺める神様になった気分です。「こんなものが我が家にもあったら…」とは、誰しも思うところでしょう。

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イギリス貴族や大富豪ならずとも、その夢が実現する時がついに来ました。

(机の上にちょこんと乗る、ほど良いサイズ)


olenoides(オレノイデス)社の「Stellar Movements(ステラムーブメンツ)」がそれです。私はつい先日まで知らずにいましたが、さまざまな試作を経て、昨年から本格的に販売が始まったと伺いました。

olenoides 社公式サイト https://olenoides.com/

(オレノイデスとは三葉虫の仲間(属名)です)


この製品については、私が余計なことを言わなくても、同社の解説をご覧いただければ十分なのですが、取り急ぎあらましだけ書いておくと、オーラリーの表面(天板)では、水星から天王星までの7つの惑星と、地球のまわりを回る月が、それぞれの公転周期の比を忠実に再現して回転します。電源はUSBで、回転速度は無段階可変。


これだけでもすごいのですが、オーラリーの下部にはさらにギミックがあって、上部の月と連動して月相を表示する月球や、海王星やテンペル・タットル彗星の公転を示す盤が独立して備わり、後者は楕円軌道を描くコメタリウムを兼ねています。もはや何をかいわんやという感じです。


コメタリウム部拡大。青い円盤の最外周は木星軌道で、その内側に火星以内の各惑星の軌道が書かれています。そしてその上方の銀色のバーが彗星の動きを制御しており、肝心の彗星はというと…


バーの左端に2本の尾を曳いた彗星が見えます(矢印)。今、彗星は遠日点を回り込むところです。


その後、時間の経過とともに彗星は地球に接近し(バー自体が動くと同時に、彗星がバーの上をスライドします)、やがて近日点を過ぎ、地球の脇を越えて再び遠ざかっていきます。

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これだけの機能を備えて税込み48,400円、組立キットだと同じく36,300円というのは、はっきりいって超の付くお値打ち価格。こうなると「過度にリーズナブル」であり、もはやリーズナブルとは言えないのでは…とすら思います。
多くの制約の中で、それを実現されたエンジニアの嶋村亮宏氏には、賛嘆の念しかありません。