月夜の舞台裏2021年12月30日 07時23分11秒

昨日の記事を書いて、さあ店頭で実際にモノを見てこようか…と思ったら、こちらの本気具合が機械に伝わったのか、また復活しました。でも低空飛行であることは変わらないので、気を緩めることはできません。

   ★

昨日は機械の復活以外にも嬉しいことがありました。
予定より1か月遅れて、イギリスから品物が届いたことです。クリスマスシーズンだし、イギリスはコロナで郵便局も人手不足だし、到着が遅れるとは聞かされてましたが、トラッキングなしの普通便だったので、だいぶ気が揉めました。


届いたのは、1枚の幻灯スライドです。


月夜の幻灯を探していて見つけた夢幻的な品。ドーバー海峡に沿って続く断崖絶壁のうち、「シェークスピア・クリフ」と名付けられた場所の夜景を写したものです。

 打ち寄せる波
 白亜の崖を照らす月光
 聞こえるのは、ただ波と風の音だけ…

中生代に栄えたプランクトンの遺骸が化石化して分厚い石灰岩層を作り、そこから「白亜紀」の名称も生まれましたが、そんな太古から続く物語を、こうして19世紀の幻灯スライドを通して眺める…というのが、何だか不思議な気分です。

   ★

…と、いささか思い入れを込めて書きましたが、このスライドをめぐっては、もう一つの「発見」がありました。このスライドと一緒に、もう1枚のよく似たスライドを見つけたのです。

(eBayの商品写真の流用。さすがに購入はしませんでした)

これを見て、「きっとそうなんだろうなあ…」と思っていたことが、「やっぱりそうだったんだ!」という確信に変わりました。月夜の幻灯は、月夜を写したものでなしに、昼間の写真を手彩色して夜景に見せかけただけ…というのは、前々から予想していましたが、まさにその「現場」を目撃した思いです。

   ★

偽りの月夜でも人は容易に感動します。
他愛ないものだ…と思う一方、そうしようと思えば、眼前の景色をたちどころに月景色にも夕景色にも変えられる人間のイマジネーションの力こそ、月光以上に夢幻的だとも思います。


【おまけ】
「シェークスピア・クリフ」という名称は、戯曲「リア王」の第4幕第6場に描かれた登場人物のやりとりに由来するそうです。その劇中のセリフに、ドーバーの断崖で命綱を頼りに浜セリ(rock samphire、アブラナ科の野菜)を摘む農夫への言及があり、事実シェークスピア・クリフは浜セリの自生地なので、それにちなんで文豪の名が付いたという話。

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