指先の宇宙 ― 2022年02月13日 18時10分41秒
スライドの歴史を駆け足で振り返ったので、ここで登場させたい品があります。
8年前にドイツの人から購入したもので、この木製のスライドケースの中に、全部で74枚のフィルムスライドが収まっています。
内容はすべて天体写真。
標準的な5cm角のマウントに貼られたシールには、それぞれ細かいデータが書かれています。
反対方向から見ると、オレンジに白抜きのアグファ(Agfa)のロゴがずらり。
アグファはドイツのフィルムメーカーで、フィルムだけでなく、こうしたスライド用品も販売していました。
もっとも、ここに並ぶのは、全部がアグファ製マウントに収まったスライド――これらは以前の持ち主の自作のようです――ばかりではなく、理科機器メーカーのPHYWE社(本社ゲッティンゲン)が制作販売した、「星の世界(Welt der Sterne)」というシリーズ物や、何の表示もないものが混在しています。
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5cm角の中に程よく収まった月面。
指先に輝く天の川、あるいは白い乳の道、「ミルヒシュトラッセ」。
おおぐま座のNGC2685。銀河面に直交してリング状構造が存在する特異な銀河です。
ガラススライドは「掌の宇宙」でしたが、こちらはさらにコンパクトな「指頭(しとう)の宇宙」です。小さな小さな画面に、広大無辺な空間が封じ込められているという、そのコントラストが強く想像力を掻き立てます。
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これらのスライドで特徴的なのは、フィルムを封じたマウントがすべてガラス板であることで、何となくガラススライドをドールハウスサイズに縮めたような感じを受けます。
特にアグファのマウントは、薄い鉛色の金属片でフィルムをはさんだ上から、さらにガラス板でサンドしており、いかにも重厚な印象です。
(アグファのスライドを横から見たところ)
私が身近で接したスライドは、どれもペラペラのフィルムを、厚紙やプラスチック板ではさんだだけのものなので、その感触はだいぶ違います。
気になるのはこれらのスライドの制作年代で、その点を改めて考えてみます。
(この項つづく)
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